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学校管理運営事務経費の充実
【2022年3月定例会 一般質問①】
本市は、公立学校園の管理・運営に必要な経費として、学校管理運営事務経費を予算に計上しています。2021年度の予算額は小学校が計4億4,708万円、中学校が計3億0,337万円で、各校に振り分けられる学校配分予算と、教育委員会事務局で執行する予算に分けられます。教育活動に必要な備品・消耗品の購入、文書の印刷、施設の修繕などに充当されるもので、教育環境の向上には欠かせない予算です。
≪資料1≫をご覧ください。をご覧ください。表1は、当該予算のうち、一部の加算額を除いた配分経費について、児童・生徒一人当たり単価の推移を示しています。2021年度予算では20,579円で、最も低かった2008年度前後からは少しずつ増加傾向にありますが、ピーク時の1995年度・32,342円には遠く及ばない水準です。表2は、中核市における2020年度の小・中学校費について、人件費・普通建設事業費を除いた金額を示しています。学校管理運営事務経費そのものは、市立高校・幼稚園の有無や費目の考え方の違いなどにより、他市との単純比較が困難なため、決算統計資料に基づく数値を引用しました。本資料からは、本市の児童・生徒一人当たり単価が、60市中43位にとどまることが確認できます。加えて、近年では学校施設の老朽化や教育ニーズの多様化などにより、学校現場が必要とする金額は増大しています。まずは、学校管理運営事務経費の予算額を、総額として増やすべきと考えます。
その上で、各校への配分額や算出方法について指摘します。設備・用具などの修繕・更新費用は原則として学校配分予算で対応するため、多くの修繕・更新が発生する学校では、予算を圧迫する要因となります。表3は、各校の配分予算のうち修繕料・工事請負費が占める割合を示したもので、学校ごとに大きな差が存在しています。例えば、修繕料が3.2%の小学校では、配分予算の96.8%を修繕料以外へ充当しているのに対し、修繕料が15.8%にのぼる学校では、他の費用を全体の84.2%でやり繰りしていることになります。他に必要な費用を確保するために、施設の修繕が後回しとなっている、という学校も存在するかもしれません。また、創立からの周年記念事業や、大規模な設備・用具などの購入により、特定の年度に支出が集中することもあります。現在の算定・配分方法の中では、過年度の予算を繰り越すことができないため、こうした事情がある際には当該年度の他の支出を抑制する必要に迫られます。これらの現状について、私は配分・算定方法の見直しにより改善が可能と考えています。
≪資料1≫に配分額の算定に関するスキームをまとめました。予算編成における財政当局との折衝などを通じて、学校管理運営事務経費の総額が固まると、教育委員会事務局が「各校に配分する予算」と「事務局で執行する予算」の金額を決定します。そのうち「各校に配分する予算」を「どの学校にいくら配分するのか」の算定は、運営費標準の考え方に基づいて行われます。これは、学校ごとの必要金額を算定するための統一基準で、備品の数量・標準単価・耐用年数などを基礎に所要額を算定し、学級数などの測定単位を乗じて積算していく手法です。資料に示したように、配分額を決定する要素は、大きく分けて、学校ごとに一律で設定される基礎額、学級数などの学校規模におおむね比例する部分、築年数などに応じた損耗面積に比例する部分、特別支援学級の状況に応じた部分の4つで構成されています。こうして各校の配分額が決まると、各校の校長が、その金額を消耗品費・印刷費・修繕料といった費目別に振り分け、事務局と協議したうえで予算が確定します。
この過程の中で、まずは「各校に配分する予算」と「事務局で執行する予算」の線引きを見直す必要があります。私は、学校配分予算を圧迫しかねない多額の支出については、事務局による執行が望ましいと考えています。現在でも、高額な工事費などの一部は事務局が負担していますが、その範囲を拡大するべきです。例えば、遊具の更新に際して、現在、事務局が負担するのは危険な遊具の撤去費のみであるため、新たな遊具の購入・設置費用を捻出することが各校にとって悩みの種となっています。こうした費用を事務局が執行すれば、学校配分予算は日頃の教育活動に特化して支出することができ、学習環境・生活環境の向上に寄与します。
また、配分額の算定については、損耗面積に連動する割合を増加させるべきです。2021年度の場合、小中学校の単位費用総額・約6億0,300万円のうち、損耗面積によって変動する部分は約830万円に過ぎません。建物の構造や築年数による損耗度合いが、実際の配分額に及ぼす影響はごくわずかです。結果として、≪資料1≫に示した通り、児童・生徒一人あたり単価と損耗面積との間に相関関係は見られません。築年数の経った学校だからといって、配分額が大きく増えるわけではなく、修繕や工事に必要な金額との乖離が生じています。この点について、工事請負費・原材料費のうち損耗面積に係る単位費用を引き上げるとともに、現在は学校数・学級数のみで算定されている修繕料についても、損耗面積を算定根拠に加えるべきと考えます。
さらに、特定年度に支出が集中する場合の負担を軽減するため、年度ごとにメリハリをつけた配分を行うべきです。例えば、5年後に40万円の支出を見込んでいる学校が、毎年少しずつ節約をして配分予算から1年に10万円ずつ積み立てよう、と考えたとします。しかし、公会計の考え方で予算・決算は1年ごとに区切られるため、配分予算の残額は返還しなければならず「積み立てる」という取り扱いはできません。では「今後4年間、配分額は10万円ずつ少なくてよいので、5年後に40万円多く配分してほしい」と声を上げたとしても、事務局は「数年先の予算の動向は分からないから、そうした事情は考慮できない」との立場に立っています。将来の予算額を確約できないという見解は理解しますが、5年程度のスパンで、どの学校が、どの年度に、どのくらいの金額を必要としているのか、を調査することは可能です。その内容を事務局が整理し、毎年の配分に反映させる仕組みを構築するべきではないでしょうか。特定の年度に大きな支出が発生することは本件に限った事象ではなく、年度ごとの支出額をあらかじめ想定するという手法は、総合計画の財政見通しをはじめ、庁内で当然に用いられています。年度ごとの算定にこだわるのではなく、学校管理運営事務経費についても、こうした発想を取り入れるべきと考えます。
以上をふまえ、4点質問します。
①公立学校園の教育環境を向上するため、学校管理運営事務経費を増額すべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
本市の学校管理運営事務経費(以下、「学校運営経費」といいます)は、児童・生徒一人あたりの単価を一つの目安として、予算の確保に努めているところです。学校運営経費の増額については、市の投資的事業予算の多くを学校施設の老朽化対策に充てている現状や、教育ニーズの多様化に伴う学校への様々な人的支援、GIGAスクール構想をはじめとする新たな環境整備など、教育活動に必要な経費が年々増大している現状を踏まえ、教育費全体の中での優先順位を考慮しつつ、学校運営経費の在り方を検討しなければならないと考えております。
②学校配分予算を圧迫しないために、教育委員会事務局にて執行する工事費などの範囲を拡大すべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
学校配分予算だけでは対応が難しい工事や修繕、高額な備品購入については、事務局が学校配分予算とは別枠で予算化し、執行しています。しかしながら、学校からの要望が多く、全てに応えることは出来ておりません。今後、学校と協議しながら現場の状況を把握し、単年度の学校配分予算では対応が難しく、教育活動に支障を来たすような事案があれば、事務局予算で執行する範囲の見直しについても検討してまいります。
③学校配分予算の算定において、損耗面積に連動する割合を高めるべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
学校配分予算の算定方法については議員からもご説明いただきましたが、本市では、教育活動の質に学校間格差が生じないよう、予算を公平に配分する仕組みとして、「学校運営費標準」を定めています。ご提案のように、損耗面積に連動する費目の拡大や増額を行う場合、学校運営費標準の構造が複雑なため、単位費用を部分的に触ることによって配分予算全体のバランスが崩れるなど、予期せぬ影響も懸念されます。したがいまして、ご提案いただいた内容も含めて慎重に配分予算を分析し、学校の実態と乖離している部分があれば改善できるよう、今後検討してまいります。
④学校配分予算の算定において、複数年度にわたる中期見通しを策定し、支出が集中する年度には十分な金額を配分するべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
本市では、創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開できるよう、各学校には配分予算の総額のみを示し、各費目への充当額は学校長の裁量に委ねる「総額裁量予算制度」を採用しています。よって、支出が集中する場合には、その費目を増額して対応することが可能です。しかしながら、臨時的な支出が高額になり、その年度の予算執行に負荷がかかる場合は、通常の教育活動に支障を来たすおそれがあるため、このようなケースをサポートできる予算配分の仕組みについても、今後検討したいと考えております。
■意見・要望
配分・算定方法の見直しについては、私の指摘した「事務局予算との線引き」「損耗面積との連動」「支出が集中する年度への対応」のいずれも、ご検討いただけるとのご答弁でした。前向きな姿勢を評価しますので、ぜひ具体的な見直しを実現してください。今後の進捗について、強い関心を持って注目してまいります。
一方で、どれだけ配分を見直しても、全校での総額が変わらないのであれば、限られた金額を各校で奪い合う構図となってしまいます。修繕が増えて大変な学校に予算を手厚く配分してほしい、と申し上げましたが、そのせいで新しい学校の予算が減ってしまうのは、私の本意ではありません。これは予算編成権者である市長、あるいは政策局・財務局に申し上げるべきことですが、学校運営事務経費を含む教育費全体を、大幅に増加してください。昨年9月、市内の小学校で給食に金属片が混入するという事故が発生しました。金属片は野菜裁断機の一部とみられ、幸いにも配膳時に発見されましたが、一歩間違えば大きな怪我につながる重大事案でした。この野菜裁断機って、学校配分予算で購入する機器なんですよ。予算不足で設備の更新が滞れば、子どもたちの生命・安全を脅かすことすらあるわけです。学校配分予算は「あれば良いよね」というものではなくて、絶対に充実させなければならない予算です。その点を、強く申し上げておきます。
だからこそ、私は徹底的な行政改革により、財源を捻出することが欠かせないと考えています。その一環として、今回は「公用車の保有台数削減」を訴えます。2番目の質問に入ります。
公用車保有台数の削減
【2022年3月定例会 一般質問②】
≪資料2≫をご覧ください2020年度時点で、本市は小型貨物車・軽自動車等の公用車を330台保有しています。内訳は、特定の課が利用する専用車249台、各課が予約して利用する貸出車76台、運転手付きの共用車5台です。この台数は、人口や地理的条件が類似する高槻市の2倍近くであり、自治体によって業務の範囲が異なると言えど、看過できる水準ではありません。運行及び維持管理に要する経費は年間7,000万円以上にのぼり、保有台数の削減が求められます。
そこで私は、2021年10月~12月の運行実績データを入手し、運転日誌の内容を含めて利用実態の調査を行いました。調査にご協力いただきました各課の皆様、また、他市への照会を含めてご尽力いただいた議会事務局に、御礼申し上げます。当該調査の結果、資料6・7ページに示した通り、問題のある事案が多く見られました。
まずは、走行距離の短い事例が目につきます。荷物の運搬等を伴わないにもかかわらず、市役所本庁から近距離の久保町・浜脇町・鞍掛町・津田町等との往復に利用している例がありました。いずれも片道2km程度の圏内であり、特段の事由がない限り、徒歩や自転車で移動すべき地域です。出先機関との移動については、近距離での利用に加えて、駅前に立地する施設でも多く利用されている実態が明らかとなりました。公共交通機関の利用も含めて、職員の移動手段を見直すべきです。共用車では、秘書課が日本語指導者養成講座の開催にあたって、フレンテ西宮から塩瀬支所への移動に利用した実績が9回もありました。午前中に職員とコーディネーターを支所へ送り届け、帰りは公共交通機関を利用しているものですが、電車で帰ってこれるのなら、行きも電車で行けばいいはずです。仮に車を利用するとしても、運転手付の車である必要性は感じられません。現状の「公用自動車等の使用に関する規程」には詳細な定めが存在せず、利用可否等の判断が各担当者に委ねられています。公用車を利用できる条件等について、規定を明文化するべきです。
次に、車両の配置についても問題があります。各課の専用車には、調査対象の3か月のうち、稼働日数が10日以下、走行距離が100km以下といった車両が複数存在しており、非効率な状態です。例えば、保有台数が1台で、稼働日数がわずか3日の地域学校協働課やわずか5日の地域コミュニティ推進課などでは、専用車を廃止し、必要な時にのみ貸出車を利用する運用に変更すべきです。また、複数台を保有している課でも、消防局総務課や上下水道局業務課では、稼働日数の少ない車両が存在しています。北山緑化植物園や満池谷墓地のように、それぞれの車両の稼働時間がほぼ重なっていない現場もあります。こうした専用車の台数を削減しても、業務への支障はほぼありません。他の課でも、利用する日時を調整すれば、台数を減らす余地は十分にあります。こうした削減に加え、都市局や教育委員会が行っている「課単位ではなく、部・局単位での一括管理」や、複合施設等における「課単位ではなく、拠点単位での一括管理」などを進めることで、さらなる効率化が可能と考えます。
そして、これらの施策を推進するために、全庁的な取組方針を策定する必要があります。庁内への調査では、各局に対して保有台数削減の取り組みを訊きましたが、その回答にはかなりの温度差がありました。各課が「業務の執行に必要」と主張する中で、一定の強制力を持って削減していくには、統一的な基準が欠かせません。他の中核市では、配車計画表をもとに6年間で約120台の削減を実現した大分市や、公用車庁内シェアリング実施要領で3分の1の削減目標を掲げた那覇市など、公用車保有台数の削減に向けた体系的な方針を作成している事例があります。総量での目標設定も含めて、具体的な取組方策とスケジュールを提示するべきです。
以上をふまえ、3点質問します。
①公用車の利用に関する規定を明文化し、利用の適正化を図るべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
貸出車の利用に関しましては、特段の理由がなければ適当とは言えない様な、3㎞以下の利用や、5時間以上かつ5㎞以下の利用についての調査を毎年度行いながら、適正利用に努めるよう庁内に通知し、徒歩や自転車、公共交通機関の利用などを促しております。今後もこのような取り組みを強化し、専用車の利用も含めた適正な使用を周知徹底してまいります。また、共用車の利用につきましては、職員のみが乗車する場合、外部の方も乗車する場合、各課の業務での必要性など、どういった利用が適正であるかについては、意見や考え方が分かれるところですので、利用申し込みにあたって必要な具体的理由を求めることにより、利用の適正化を促すとともに、必要性についての意見集約に繋げたいと考えております。
②専用車の車両配置や運用を見直すべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
交通の便の良くない出先機関などに1台だけ配置しているものなど、止むを得ない場合もありますが、複数の台数を配置しながら稼働日数や走行距離が少ないもの、また本庁の貸出車が使用できるにも関わらず、稼働率が低いものなどは、費用対効果の観点から、一定整理すべきものであると考えます。具体的には、公用車の更新時には当該車両だけではなく、他の専用車も含めた使用状況や、貸出車による対応が可能であるかも確認しながら、真に必要がないものは廃車する対応を促します。また、部局単位、現場単位での一括管理によって、より効率的な利用が可能なものについては、その運用について各部局に働きかけをいたします。
③保有台数削減に向けた全庁的な取組方針を策定すべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
公用車の保有台数についは、人口だけではなく、地理的な要素、公共交通の状況、公共施設の状況、業務のあり方など、多くの要素が絡みあっており、一概に保有台数が多いかどうかの判断は困難と考えています。しかし、専用車を中心に稼働率の低いものが見受けられることも事実でありますので、一定の基準や方針の基に車両の台数管理を図る必要性があると認識しております。今後は、保有する必要性が低い車両の削減に向けて考え方を整理し、保有台数の適正化に努めてまいります。
■意見・要望
利用の適正化について、貸出車では、既に発出している通知の内容を徹底していく。専用車・共用車も適正な使用を促していく。車両配置についても、一定整理すべき。との考えをお示しいただきました。質問の中で、利用実績や車両の配置について、事例をいくつも取り上げました。私に指摘された各部署には、それぞれ言い分もあることでしょうけど、これ、やっぱり市民の理解は得られないと思うんですよ。往復2~3キロなら、徒歩か自転車でいいじゃないですか。3か月で3回しか使わない部署に、専用の車はなくていいでしょう。そんな多くの市民にとって当然であろう感覚を、ぜひ共有したいなと思っています。
調査の過程では、他にも改善すべき点が見受けられました。運行日誌の記載に抜け・漏れや誤りが見られること。専用車の日誌や運行状況管理の多くが紙ベースで、アナログであること。これらはいわゆるノーコードツール、プログラミングなしで簡易にデジタル化する手法の活用が考えられます。また、市の公用車であるにもかかわらず、外郭団体の名義で利用している事例もあり、市と外郭団体の関係性として不適切です。さらに、各課が専用車を保有したいと考える背景には、貸出車がなかなか予約できないという実情があるため、予約方法の見直しを検討するべきです。そもそも、業務のあり方を見直し、車を利用する機会自体を減らすことも重要です。そのためには、民間委託の拡大が有効な手法の一つと考えられます。これらの課題についても取り組んでいただくよう要望します。
そして、最も大きな問題は、公用車をどのように利用していくのか、保有していくのか、という、全庁的な方針が、ほぼ示されていないことです。現状では、利用の判断や配置のあり方が、所管任せになっています。それぞれの課や担当者にとってみれば、車を使えた方が便利ですし、専用車を配置してほしいと思うことでしょう。そうした所管ごとの考え方に委ねた結果が、高槻市の約2倍という過大な保有台数であり、7,000万円以上という維持管理経費です。緊急対応への備えや、例外的に車を必要とする事態が発生しうることは理解しますが、だからといって、それらが無制限に認められるわけではありません。根拠とすべき原理原則を示し、庁内で統一された考え方に基づいて運用していく。公共施設マネジメント等にも言えることですが、本市に決定的に欠けているのはそうした姿勢です。組織の縦割りを排し、市全体での適正化を図っていただきますよう要望します。
新型コロナウイルス感染症対応の検証
【2022年3月定例会 一般質問③】
私は、新型コロナ対応について、本件が非常事態であることをふまえて、基本的に当局へ協力的な姿勢で臨んできました。当局と議会が連携することが重要であるし、議会への対応に当局が必要以上に手間を取られたら、肝心のコロナ対策、市民へのサービス提供にかえって悪影響を及ぼしかねません。そんな思いからこの2年間、様々な課題が存在しましたが、できるかぎり当局の業務執行に配慮した形で問題提起を行ってきたつもりです。一方で、市政の問題点を指摘し、市民生活の向上を図るという市議会議員の職責をふまえれば、この事態だからこそ、議事録に残る形で、一連の施策に検討を加える必要性も感じてきました。いまだ第6波への対応が続く中ではありますが、事態の発生から2年が経過し、多くの課題が顕在化していることをふまえ、今回の一般質問で取り上げることといたしました。質問に先立ち、医療関係者や保健所をはじめ、最前線で新型コロナ対応にご尽力いただいている全ての方々に心より感謝と敬意を表します。
≪資料3≫をご覧ください。私が一連の対応の中で特に問題視しているのは次の7点です。先日の代表質問でも当会派が指摘した情報発信のあり方、臨時交付金対象事業をはじめとする事務事業の取扱いや人員体制の課題、2020年夏に小学校で希望者に限定してパン・チーズ・牛乳など給食室での調理を伴わないメニューだけを提供した簡易給食、実施環境が整えられたにもかかわらずいまだ十分に活用されていないオンライン教育、積極的疫学調査の限界と検査対象者の考え方、ワクチンの初回接種予約における大混乱、コーヒー利用券を配布したワクチン接種促進事業への疑問。本来であれば、この1件ずつについて見解を問うところではございますが、今回は質問時間が短縮されていることもあり、全ての課題に共通する問題点についてのみ質問いたします。
それは、政策の決定過程です。多くの市民が疑問を抱き、失策との誹りを免れない施策の数々は、誰が、どのように決めたのでしょうか。責任の所在を明らかにするために、また、的確な検証を行うために、意思形成過程を明らかにすることは重要です。新型コロナウイルス感染症対策本部や政策調整会議の議事録を確認しましたが、問題となったそれぞれの事案について、具体的な議論が行われた形跡はありません。市民生活に直結する施策だからこそ、組織のトップである特別職や局長級職員が、公式の場で意見を交わし、総合的に、批判的に、施策の是非を検討することが必要です。市議会に報告される段階では、ほぼ内容が確定しており、補正予算を伴う案件を除いては、私たちが議会で審議することもかないませんでした。一部の幹部だけで物事を決めるのではなく、幅広く叡智を結集し、密室ではなく、開かれた場で政策を決定することこそ、市長の目指す「オープン」な市政なのではないでしょうか。
質問します。
象徴的な事案であった、簡易給食、ワクチン接種の初回予約、ワクチン接種促進事業について、誰が、どこで、どんな議論を行い、施策の内容を決定し、実施を判断したのか。政策決定過程を明らかにしてください。市長・教育長の答弁を求めます。
〇答弁要旨(市長)〇
まず初回予約については、新型コロナワクチン接種事業を所管する健康福祉局が、国から示される大きな方針に基づいて、その時点でのワクチンの供給の状況・見込み、それから接種の進捗状況等そうした方法等について検討し、逐次その内容を私、市長と副市長が確認をして実施してまいりました。
具体的な事業の実施方法としては、所管課が中心となって、会場の管理や広報等の関係部局、西宮市医師会等の関係団体との調整を行い、検討したうえで、最終的に私が了としたものでございます。1回目のことは正直、今思えば、1回目の時だけではないですけども、一つ一つの判断に常に絶対的な自信があったというのは正直ございません。毎回我々も不安に思いながら、どうだろうかというようなことを議論しながらでありますが、その時点で了とした。そして結果として、その時に判断した折に想定外であったこと、我々が思いを至らなかったことがあったというのも事実であります。そして2回目の予約受付以降は、初回の時の教訓を踏まえ、年齢別の予約受付やコールセンターの拡充等を行い、その時々の状況に応じて、所管課を中心に、国からの供給等を踏まえて、接種の推進に努めてきたということでございます。
ワクチン接種促進事業のコーヒー利用券の配布について、この時、昨年8月、ピークの第5波を迎えておったわけでございますが、若年層のワクチン接種率が低いという課題がございました。そうした中で市としては、ワクチン接種課を中心に、若年層へのワクチン接種促進策を何か考えられないかということで、大きな「ワクチン接種の現状と今後の進め方」を9月に改訂し、集中的な広報の展開、若年層のワクチン接種環境の整備、インセンティブ付与による接種促進事業の実施という三つの柱の対応を決めました。そうした中で、この時点で、正直、具体策が私の中で承知をしていたわけではありません。何かやりたいな、と正直思っておりました。何かをやりたいな、という。何かやれないかという指示を私は致しました。そうした中で産業文化局より、「コーヒー利用券の配布によるワクチン接種促進」の提案があったので、これを採用しようと。そうした中で、事業の詳細については、都市ブランド発信課とワクチン接種課と折衝したうえで、協議をしたうえで、10月から実施に至りました。この事業についても、最終的に私がそうした判断、上がってきたものを了としたということでございます。
〇答弁要旨(教育長)〇
例年、夏季休業中には給食室の工事や、備品類の交換作業を行っており、給食室を使用できない学校があります。さらに、空調の無い給食室が多いため、調理員の熱中症や、食中毒の危険が伴うこと、併せて授業が午前中で終わること等から、私が出席する事務局内部の会議で給食を実施しないという方針を打ち出し、教育委員への報告を経て決定しました。しかしながら、長引く休業要請の影響で保護者の就業形態などにも大きな変化が生じていることが予想され、子供たちの「食」に対する不安の声もあったことから、希望者への調理を伴わない簡易給食の提供を再度、学校給食課をはじめとする事務局内で検討し、数回にわたる校長会役員との意見交換や、教育委員の意見を踏まえた上で、私が実施を決定しました。
■再質問
本来であれば、先ほど挙げました7点すべてについて、お聞きをしたかったんですけれども、特に問題を感じた3点に絞って、政策の決定過程をお聞かせいただきました。本件については再質問を行います。市長・教育長のご答弁はいずれも、最終的には私が判断した、とのことでした。それはもちろんのことだと思うんです。市長や教育長が判断への責任を負うことは当然ですし、組織のトップとしてのあるべき姿勢だと思います。ただ、私がいま問題視しているのはその部分ではなくて、最終的な判断に至るまでの過程、どのようにして、この政策が形成されていったのか、という点です。そこに着目すると、今のご答弁からは、いずれも所管部署での議論が中心で、議事録に残る場や、各局長が一堂に会する場での議論は行われていないことが窺えます。ここでお聞きします。一連の政策決定過程、政策自体の是非ではなく政策を検討した経緯・決め方について、適切だったと思われますか。市長のご答弁をお願いします。
〇答弁要旨(市長)〇
適切であったかどうかという言い方ではなく、その時に我々として取りうる最善、場合によっては唯一の道であったと思います。例えば、給食に関して教育長がお答えになりました。給食に関して付言いたしますと、今までは、こういう場合であれば、給食は出しませんというような、そして午前中までであれば帰らせるというのがあったんです。ですが、教育長が答える前に何があったかと言うと、私が「何か出せないか」と、こういう言い方をしました。「何か出せないか」と。そういう意味では、発端としては「何か出せないか」というのを受けて、市長がああ言うとると、困ったと思われたかどうかは分かりませんが、そうした中で形として出てきたと。ただ一方で、私として「何か出せないか」というのは、一番フルスペックで出てきたらハッピーだなと思っていましたけど、そこは現場のことを十分、さっき教育長が言ったことをわかっていない中で、しかしやはり何か出してほしいと私も思いました、市民からもそういう声がありました。そういう意味では意思決定プロセスの中で言いますと、西宮市役所というのは、私も4年間ここでやらせていただくとですね、想定されたもの、予定されたものに対しては極めてしっかりとやっていただいています。一方で想定外のこと、私もそういった想定外の事態の中で、私も市民の声を受けて今まで想定しなかったような、指示に近いようなものを教育長にお願いした、そうした中にこういうことで今、質疑をしていただいたことに至っているのかなと思います。そうしたことも、今後の教訓にしてまいりたいと思います。
「今回の教訓を活かして」とございましたけれども、でしたら、こうした緊急時、想定外のことがたくさん起きる時に、どのように一つずつの政策決定をしていくべきと考えていらっしゃるのか。これらの経緯を踏まえて、どう改善すべきと思われているのか。その部分をもう少し具体的にお聞かせいただけますでしょうか。
〇答弁要旨(市長)〇
1つは、想定外と言わないようにいろんなことを想定しておくことであろうと思います。そういう意味では今回学校給食課、あることを想定して、その想定でしっかりと備えができたという素晴らしい対応を今回してもらったと思います。もう一つは、想定外のことが起きた際に、そこで現場におろす際に、市長・教育長から言われたとなると、絶対的な指示だというふうに感じてもらわなきゃいけないときもありますけれど、場合によって結果として、アウトプットが好ましくないことになる可能性があるならば、そのご指示、ご示唆に関しては受けかねますというような、そういうような柔らかい組織になっていくというようなことも大切なのかなと思ったところであります。
■意見・要望
できるだけ想定外という言葉自体を使わなくてすむように、想定の範囲を広げようと。それももちろん重要な観点だと思います。ただ、私は先ほど質問の中で述べたんですけれども、やはりオープンな場で、幹部の皆さんによる忌憚のない意見交換を行うことこそがポイントだと考えています。こちらに座っている方々、今は一部の方ですけれども、皆さんって、仕事でも人生でも、私より遥かにキャリアが長くて、様々な経験を重ねてきた方々です。市民の方に対応したことも数えきれないほどあるでしょうし、お住まいの街で行政サービスの提供を受ける側の気持ちもお分かりのはずです。そんな優秀な方々が、主体的に検討を重ねた結果であれば、市民の感覚と大きなずれが生じることはないと私は信じています。所管での議論だけでは、どうしても内部の理論、役所の理論に傾いてしまいがちです。局長の皆さんは、会社で言えば役員であり、共同経営者です。最初に頂いたご答弁の通り、最終責任は市長にあるにしても、局長には、自らの担当するセクションだけでなく、市の経営全般に対して責任を果たしていただきたいですし、市長には局長の皆さんに対して、そうした関わり方を促していただきたいと思います。また、そうした庁内横断的な意見の集約と、それをふまえた一元的な政策推進においては、政策局の役割が極めて重要であることも申し添えておきます。新型コロナ対策を統括、あるいは主導する部署が、今なおはっきりとしないことは、本市の大きな問題点だと感じています。
■再質問
教育長にも再質問させていただきます。先程のご答弁で、教育委員会ならではの意思形成過程として、教育委員や校長会役員との意見交換について触れられていました。こうした場で、簡易給食について問題視する声、要は他の市と同じように通常通りの給食を提供すべきではないのか、そうしたご意見はなかったのでしょうか。
〇答弁要旨(教育長)〇
先ほども言いましたように、午前中の事業でしたので、それについては特に意見はございませんでした。阪神間は確かに午後の授業をやっておりましたので、給食を出しましたけれども、姫路市も同じように午前中の授業で給食を出さなかったので、私たちも同じような対応を考えて、校長会でも話はしましたけれども、先ほど言いましたように、教育委員さんもそれで納得していただきましたので、そういう対応をしたということです
先ほど「何か出せないか」という部分については、市長から教育委員会さんあるいは教育長に相談があったという経緯をお聞きしましたけれども、それ以外に、実際その内容を決めていく過程で、市長事務部局との意見交換や協議というのは、何かしら行われたのでしょうか。行われたのであれば内容も含めてお願いします。
〇答弁要旨(教育長)〇
市長部局とは特に話はしておりません。給食担当のところとどういうことが出せるのかと、いけるのかということで話はしましたけれども、給食室が使えないので、外部からのものを出すということだったんですけれど、急に言われてもすごい数なので、いっぺんにそれだけ出せるかという問題もありましたし、ですから希望者に出そうかということで計画したということです。確かに言ったように、いろんなものが揃えられなかったというのは現実にありましたので、できる限りのことは検討の中でやりましたけれども、そこまでが限界だったかなというふうに思っております。
■意見・要望
教育委員会さんや校長会役員の方々との中では、特に大きな異議は出なかったと。そして市長事務部局との具体的な協議、意見交換なども特に行われていなかったというご答弁というふうに受け止めました。あえてこの点をお聞きしたのは、先ほどらい申し上げております、内部だけでの議論による弊害が、教育委員会ではより顕著に見られるように感じているからです。教育行政の独立性が求められることはもちろん理解しておりますが、こうした危機対応においては、平時以上に様々な観点から検討を加えること、市民の受け止め方に思いを馳せることが重要であると指摘しておきます。
今回の質問は、これまでの2年間にわたる新型コロナ対応を振り返るものでした。私は日頃、議会での質問について、課題を具体的に指摘し、その後の改善につなげることを、強く意識しています。その意味で、今回のように「あのとき、こうすべきだったのではないか」という後出し的な訴えは、本来、あまり好むものではありません。にもかかわらず、あえて今回、こうした問題提起を行ったのは、同じような事態を2度と招いてほしくないと、心の底から強く思っているからです。どうすれば、一連の失敗を回避できたのか。一つずつの事案について深く考え抜いた結果、全てに共通する要因として、政策決定過程の問題が浮かび上がってきました。まだまだ新型コロナへの対応が続く中、反省を活かしてすぐにでも改められる点は、改善していただきたいですし、今後どこかのタイミングで示されるであろう、新型コロナ対応についての包括的な検証では、本日取り上げた観点を盛り込んでいただくように強く要望します。その際に必要なのは、失敗は失敗だったと正直に認め、何が問題だったのかを徹底的に掘り下げることです。通り一遍の振り返りではなく、本質的な課題を洗い出すことで、感染症対応のみならず、本市の危機管理全般に対して意義のある提言が行われることを期待します。
自習環境の向上
【2021年9月定例会 一般質問①】
児童・生徒にとって、日頃の予習・復習や宿題、定期試験対策、受験勉強など、学校の授業以外で学習に取り組む場は非常に重要です。落ち着いて勉強できる環境は学習意欲や理解度の向上につながりますし、自宅には十分なスペースが無い・年齢の小さな弟や妹がいて集中できない、というご家庭もあることでしょう。塾・予備校や有料の自習室も存在しますが、子育て世帯にとっての経済的な負担は大きく、行政による提供が望ましいと考えます。なお、本市の学習室・自習室等は施設により名称が異なりますが、今回の質問では呼称を「学習室」に統一します。
≪資料1≫及び≪地図≫をご覧ください。現在、本市には13ヶ所の学習室が存在しますが、アクセスの良い施設や試験期間には利用者が集中し、希望通りに利用できないことが多くあります。一方で、本市の財政状況に新たな施設を整備する余裕はなく、総量の縮減を謳った公共施設マネジメントの考え方とも逆行します。学校を放課後や休日に開放することも、学校現場の負担等を考慮すると限界があります。そこで私が注目したのは、稼働率の低い、あまり利用されていない公共施設です。
そこで、貸館機能を有する公共施設のうち、既に学習室が存在する施設と、調理室・実習室のような用途の限定される部屋を除いた74施設・318部屋について、稼働率の調査を行いました。その結果、実に43施設・108部屋において、年間の稼働率が10%以下にとどまる利用区分が存在していました。私は、こうした部屋を学習室に転用するべきと考えます。
稼働率だけで転用の可否を判断することはできませんが、例えば、資料に示したA市民館では、一日を通して極めて稼働率の低い部屋が存在しています。この部屋を学習室に転用しても、他の利用団体への影響は限定的なはずです。また、B公民館では、午後の稼働率が午前に比べて低くなっています。特に平日について、児童・生徒が学習室を利用するのは夕方以降ですから、空き状況との親和性は高いと考えられます。すでに越木岩公民館では2017年度から第3集会室を学習室として開放しており、中高生を含む多くの方に利用されています。2017年11月6日の西宮市青少年育成推進本部会議では「中高生の居場所となる自習室を提供するために、既存の公共施設を活用する」との方針が示されていますが、具体的な成果にはつながっていません。こうした現状をふまえ、全ての公共施設について、改めて学習室への転用を検討するべきです。
あわせて、既存の学習室等についても使い勝手の改善が望まれます。西宮北口駅直結の北口図書館は、アクセスの良さから非常に人気が高く、自習での利用を希望する方が多くいます。しかし、自習できるのは図書の閲覧が優先される閲覧スペースのみで、自習専用のスペースはありません。他の用途との兼ね合いはありますが、一部のスペースについては、中央図書館・鳴尾図書館と同様、独立した学習室への転換を検討するべきです。また、北口図書館のみならず、各施設の混雑状況をWEB上でリアルタイムに表示することや、2~3時間ごとの予約制とすることも、多くの方がスムーズに施設を利用するためには有効な方策です。また、共同利用施設については馴染みが無いという方も多く、初めての方でも入りやすい雰囲気づくりが求められます。
次に、広報についても指摘をしておきます。多くの市民が、市内の学習室と聞いて思い浮かべるのは、図書館ではないでしょうか。本市には図書館以外にも共同利用施設等の学習室が複数存在していますが、これらの認知度が低いように感じます。実際、中高生の定期試験期間に私は全ての学習室を現地調査いたしましたが、中央図書館や北口図書館が満席の日でも、共同利用施設の学習室には多くの空席がありました。市が行っている広報は「自習室・学習室のご案内」をホームページに掲載しているのみであり、その一覧も現在は新型コロナの影響で公開を控えています。ホームページでの案内を強化するとともに、市政ニュースへの掲載、各学校を通じた周知、子育て世帯が多く利用しているLINEでの告知など、幅広い広報が必要です。
以上をふまえ、3点質問します。
①稼働率の低い既存の貸館施設について、学習室への転用を進めるべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
本市においては、図書館や共同利用施設に学習室を設置しており、既存の公共施設を活用した学習室の整備は、自習環境の向上を図る有効な施策であると考えております。転用を進めていくことにつきましては、施設の稼働率や費用負担の問題、警備体制や地域性の考慮、利用団体の理解等整理が必要でございます。こうした各施設の個別事情を勘案したうえで、引続き関係部署と調整しながら検討してまいります。
②既存の学習室・自習可能スペースについて、運用の見直し等を通じて利用しやすい環境を実現すべきと考えますが、市の見解をお聞かせ下さい。
〇答弁要旨〇
図書館の閲覧席は、図書館資料を閲覧するための基本的な設備である一方、学習資料を持ち込んで利用する青少年にとっての居場所としての機能も果たしていると考えております。このため、閲覧席が不足することが多い北口図書館では、研修室や集会行事用のスペースを使用しない時は、閲覧席として開放し、できるだけ多くの来館者に閲覧席を利用していただけるよう対応しているところです。このような状況から、書架や座席等を撤去して学習室を設置したり、閲覧席を大幅に増設したりすることは困難ですが、これまでと同様、館内の限られたスペースをできる限り自習可能な閲覧席として活用するよう努めてまいります。また、混雑状況のWEB公開や予約ができるシステムの導入は、利用者の利便性の向上を図り、効率的に座席を管理するための方策の一つとして有効であると考えております。しかしながら、現在、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、全体的に利用者数が減っており、導入費用等の財源の確保や費用対効果のほか、図書館資料を閲覧する方々の席をどのように確保するかなどの課題があることから、今後も研究を続けてまいります。共同利用施設には、本市の住民や市内の学校に通学している人などが利用できる学習室があり、各施設で申し込みを行えば随時利用することが可能で、児童・生徒の方にも利用いただいております。しかしながら、議員ご指摘のとおり共同利用施設などの市民集会施設は、年配の方の利用が多く、中高生にとっては比較的馴染みがない施設と言えるかもしれません。このような共同利用施設を利用したことが無い方にも、学習室を備えた施設であることが分かるように、入口付近に目印となるステッカーを掲示するとともに、館内にも学習室の案内を行うなど、引き続き利用しやすい環境づくりに努めてまいります。
③学習室についての広報を強化するべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
現在開放している学習室について、市民に対して広く積極的な周知広報を図ることが重要であると認識しております。市のホームページや市政ニュースによる案内の強化を図るとともに、若者の利用が多いライン等ソーシャルメディアの活用や学校園を通じた中高生への情報提供を検討してまいりたいと考えております。
■意見・要望
貸館施設の転用、広報の強化について、前向きなご答弁を頂きました。是非、検討で終わらせることなく、実現していただくよう要望します。すでに方針自体は2017年に示されているわけですから、もう結果が求められる時期です。ご答弁が複数の局に及んだことからも分かる通り、本件は、庁内横断的な取り組みが求められます。子どもたちのために、という共通の目的に向かって、連携を深めてください。今後も随時、進捗を確認してまいります。混雑状況のWEB公開や予約システムについては、有効性をお認め頂きつつも、導入費用等の課題があるとのことでした。支出の抑制はもちろん重要ですが、近年では、簡易なシステムや既存のシステムを活用することにより、費用を抑えることも可能になっていると聞きます。現場のオペレーションとの整合性を図りながら、利用者目線で改善に努めていただきますよう要望します。
民間住宅に対する政策の推進
【2021年9月定例会 一般質問②】
国や自治体は、環境・防災・景観など様々な観点からまちづくりを進めています。その中で、政策目標を達成するために、建物の性能や状態を向上させることは重要な取り組みです。行政が所有する公共施設であれば直接対策を行うことが可能ですが、民間所有の建物については、補助金・税制等の制度設計により誘導していくことが一般的です。しかし、個人の財産に対する公金の投入は議論の分かれるところであり、財政上の課題もあるため、実際には啓発にとどまる例や、制度を十分に活用できていない例が多く見られます。一方で、社会に存在する建物の中で大きな割合を占めるのは民間の住宅であり、実効性のある取り組みが求められます。そのため、民間住宅に対する一定のインセンティブを設けることには、意義があると考えています。こうした観点から、本日は本市の住宅政策について「省エネ促進」「空家対策」「耐震化」の3つのテーマを取り上げます。なお、本件については議会事務局ご協力のもと人口規模の類似する中核市・15市への一斉照会を行っており、これから取り上げる他市の事例については、大半が当該調査に基づくものでございます。
まずは「省エネ促進」について見ていきます。≪資料2≫をご覧ください。本市は「環境学習都市宣言」を行い、本年には「2050年ゼロカーボンシティ」を表明しましたが、現時点で具体的な施策は示されていません。民間住宅への施策としては「エコ・エネルギーシステム導入促進補助事業」として、燃料電池・蓄電池・太陽光発電への補助を行っており、本年度の当初予算では1,200万円が計上されています。これらは他市でも実施されている一般的なメニューで、制度設計が異なるため一概には比較できないものの、本市の利用件数は決して多くありません。当初予算額でも松山市の約1億6,800万円・宇都宮市の約8,400万円など、本市を大きく上回る事例が複数存在しており、各自治体の本気度を感じるところです。本市の既存の制度について、予算額の増加も含めた見直し及び利用促進に取り組むべきと考えます。
また、他市では前述した3つのメニューのみならず、様々な省エネ促進施策が推進されています。代表的なものは、ゼロ・エネルギー・ハウス(通称、ZEH)やホーム・エネルギー・マネジメント・システム(通称、HEMS)への補助制度であり、鳥取県のようにZEH基準を上回る基準を設けて、上乗せ補助を行っている事例も存在します。また、柏市の「エコ窓改修」、長崎市の「屋根塗装」等、部分的な工事に補助を行う制度や、リフォーム補助事業の一環として「住環境向上工事」を定める松山市や、独自の「エコハウス認定」を実施する倉敷市など、今回の調査では多くの先進的な事例が確認できました。こうした他市事例を積極的に検証し、本市での導入を検討するべきと考えます。
次に「空家対策」について見ていきます。同じく≪資料2≫をご覧ください。世帯数の減少等に伴い、全国的に空家が増加する中、本市でも2013年の調査時点で約24,000戸の空家が確認されています。適切に維持管理されていない空家は、治安や景観の悪化につながるほか、災害時のリスクも懸念されます。2015年には空家対策特別措置法が施行され、行政代執行による解体等も可能となりましたが、費用回収の困難さや強権的な手法への懸念もあり、自治体ごとに運用は大きく異なっています。現時点で本市の空家率は全国平均より低い水準ですが、危険な空家は既に存在しており、今後の増加も確実視されることから、具体的な対策を始める必要があります。
現在、市が行っている空家対策は、普及啓発が中心になっていると感じます。既存の施策は2016年に開始された空家バンクで成約がわずか2件、改修・跡地整備等への補助に至っては、利用実績がありません。その要因は、北部地域の空家バンクを除く全ての制度が、空家および跡地の公的利用を前提としていることです。用途が極めて限定されるため、同様の制度については、他市でもほぼ利用実績がありません。そもそも、今後、数百、数千にのぼるであろう、管理の行き届かない空家を、全て公益的活動で活用していくことは不可能です。除却費用等を補助する仕組みについて、空家の危険度・周囲への影響等を指標に、用途を限定しない制度へ変更すべきです。
また、除却や適正管理を促す制度は、補助金の支給だけではありません。代表的なものに、税制による誘導が挙げられます。例えば固定資産税の「小規模住宅用地の特例」では、住宅用地の200㎡以下の部分について、課税標準の上限が評価額の6分の1とされ、税額が大きく軽減されています。特措法では、管理が行き届いていない空家を特定空家に指定することで、特例の適用対象から除外することが可能となります。簡単に申し上げれば「空家を放置すれば固定資産税が高くなる」という制度ですが、神戸市では今年度から当該措置を特定空家以外の空家に対しても行うこととしています。また、本特例は「解体して更地にすれば、固定資産税が高くなる」ものであるため、空家が放置される要因の一つである、との指摘もありますが、豊前(ぶぜん)市・行方(なめがた)市・深谷(ふかや)市等では、条件を満たす場合に「空家を撤去した後も、一定期間、軽減措置を適用する」という制度設計で負担感の軽減を図っています。こうした税制による誘導を、本市でも検討するべきと考えます。
最後に「耐震化」について見ていきます。同じく≪資料2≫をご覧ください。大規模地震の発生に備え、住宅の耐震化が重要であることは論を待ちません。「西宮市耐震改修促進計画」によれば、本市で耐震化が必要な住宅は、2013年度時点で約18,000戸とされています。国においても「2030年度までに耐震性の不足する住宅をおおむね解消する」との方針が示されており、積極的な取り組みが求められます。民間住宅の耐震化を促す施策について、国はこれまで自治体に1/2程度の補助を行ってきました。国庫補助事業ということもあり、各自治体が実施するメニューは似通っている一方、その利用実績については、自治体ごとに大きな差があります。
例えば、戸建ての耐震改修工事は、本市の場合、補助額が工事によって30~130万円、2019年度の利用実績は9件です。松山市の場合、補助額が限度額100万円、2019年度の利用実績は86件です。戸建ての数や耐震化率といった条件の違いがあるにしても、人口規模が類似する両自治体で、補助額に大きな差がないにもかかわらず、利用実績に10倍近くの乖離が発生していることは見逃せません。同様に、戸建ての建替工事においても、本市は補助額が定額100万円、2019年度の利用実績が6件。宇都宮市は補助額が上限100万円、2019年度の利用実績が68件と、大きな差が発生しています。本市の利用実績は、当初予算額の半分程度にとどまっており、予算よりも利用促進策に課題があると考えます。周知・広報のあり方を含め、他市事例を詳しく検証するべきです。
また、メニューが似通っていると申し上げたものの、本市が行っていない事業を実施している自治体も存在します。豊中市、東大阪市等が実施している「除却」への補助が、その代表例です。所得要件を設けることで「耐震性が十分でない木造住宅を所有しているが、解体費用の捻出が難しい方」をターゲットにしており、上限40万円の補助を受けることができます。今後はこうした事業へのニーズが高まることも予想され、本市でも検討を進めるべきと考えます。
以上をふまえてお聞きします。
「省エネ促進」「空家対策」「耐震化」を推進するため、民間住宅へのインセンティブが必要と考えます。既存事業の利用促進、制度の見直し、新規事業の実施等について、他市の先行事例を検証し、積極的な取り組みを進めるべきと考えますが、市の見解と今後の取り組み内容をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
本市では、住宅用省エネ設備等の導入を促進するため、平成22年度に太陽光発電設備の設置に対する補助を開始して以来、家庭用燃料電池や定置用蓄電システム、ホームエネルギーマネジメントシステム、通称、「HEMS」と言われるエネルギー管理システムや電気自動車など、対象機器を見直しながら補助を継続してまいりました。現在は家庭用燃料電池や定置用蓄電システムの設置に対する補助とともに定置用蓄電システムと同時設置された太陽光発電設備を対象として、事業を実施しています。また、今年度は、「省エネチャレンジ事業」において、エアコン・テレビ・冷蔵庫といったCO2削減効果の大きい省エネ型の家電製品へ買い替えた方に対してQUOカードを進呈するキャンペーンを実施しています。このほか、サッシの二重化、床や天井、壁の断熱化など一定の要件を満たす省エネ改修工事を行った場合や再生可能エネルギー発電設備を導入した場合には、固定資産税の減額又は軽減措置があります。国においては、住宅の高断熱化と設備の高効率化によって、快適な室内環境と大幅な省エネルギーを同時に実現した上で、太陽光発電などの創エネにより、年間に消費する正味のエネルギー量を概ねゼロとするネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)等の普及を目指しており、新築時や改築時における補助制度を設けています。また、他市の事例では、議員からご説明のありましたとおり、住宅の部分的な改修に対する補助のほか、新築、リフォーム時のゼッチ化に対する国が行っている補助への上乗せ補助や市独自の基準により省エネ住宅等として認定を行った住宅への補助など、様々な取組がなされています。市域のCO2排出量のうち家庭部門の占める割合が高い本市としましては、脱炭素社会を目指すうえで住宅での省エネは重要課題のひとつであると考えております。今後も、住宅用省エネ設備等の導入支援を継続するとともに、住宅の省エネ化を図るため有効な支援策について検討してまいります。
現在、本市では空家対策として、パンフレットによる啓発活動や市民生活相談等における空家相談を実施しつつ、「空き家等利用情報提供事業」、「空き家跡地活用まちづくり推進事業」などの利活用を促す取り組みを行っているところです。これらの事業の利用実績は少ない状況ですが、適切に管理され、利用可能な空家等は賃貸物件や中古住宅として住宅市場に流通していることから、本市の空家対策においては利用促進や適正管理を促す啓発活動や空家相談などの取組みを継続し、管理が不適切な空家の発生や増加を抑制していくことが重要であると考えております。議員ご指摘の除却費用等を補助する仕組みに関しては、特定空家等を補助対象にすることで危険な状態である空家の除却につながると思われますが、補助制度を受けるために空家所有者が空家の管理を放棄するなど、管理責任意識の低下から管理が不適切な空家等の発生や増加を招き、住環境や住宅流通に悪影響を与える可能性もあります。また近年、空家対策の推進を税制的に誘導する自治体があることも承知しておりますが、特定空家等の認定実績がない本市の現状を考えると、新たな市民負担あるいは新たな市の財政負担が求められる制度を構築し、積極的に空家を解体する状況にはないと考えております。今後、人口減少や少子高齢化など、様々な社会現象により空き家の増加が想定されるため、将来の空家対策において選択肢を増やすという観点から、新たな制度の構築については他市の事例を参考にしながら慎重に研究を進めてまいります。
住宅の耐震化に向けて、本市では平成21年度に西宮市住宅耐震改修促進事業実施要綱を策定し、10年以上に亘り補助制度を継続するとともに、所有者に対しては、耐震化の重要性や地震防災への理解などについて、市のホームページ、市政ニュース及び全戸配布のパンフレットを活用し、周知を図ってきたところです。また、補助制度の利用促進に向けた新たな取り組みとして、令和3年度より耐震改修工事費等の補助金を施工業者が代理受領できる「代理受領制度」を創設し、申請者の費用負担の低減及び利便性の向上に繋げております。補助制度の実績は松山市等の中核市と比較すれば低調ですが、耐震化率は平成25年度の91.9%から平成30 年度には93.7%に向上し、耐震化の目標は概ね順調に進捗しているものと考えており、今後もこのような住宅の耐震化推進に向けた取り組みを継続してまいります。議員ご指摘の除却工事に対する補助制度は、建替え工事と比較して工期が短いことや、除却後の土地利用に制限がないことなどから、より多くの方が補助を受けることができる可能性があると考えております。しかし一方で、住宅耐震化の補助制度は、兵庫県の「ひょうご住まいの耐震化促進事業」に基づいてメニューが決められており、除却工事のみでは県の補助メニューに該当しないことから、市の負担分が大きくなることが予想されます。このようなことから、除却工事に対する補助制度の創設については、本市の財政状況や市民ニーズなどを勘案しながら、他市事例を参考に実施の可否も含め研究してまいりたいと考えております。
■意見・要望
まず、省エネ促進について「有効な支援策について検討していく」というご答弁を頂きました。脱炭素社会の実現は、未来に向けて、私達が絶対に果たさなければならない責務だと考えています。だからこそ、「環境学習都市」も「ゼロカーボンシティ」も、表明して終わりではなくて、具体的な、実効性のある施策が必要です。今回は民間住宅への補助という観点から質問しましたが、例えば、街路樹の整備を通じて街なかの緑を増やすこと等、注目すべき取り組みは他にも多く存在しています。そうした様々な施策を積極的に検討し、取り入れていくことを要望しておきます。
空家対策については、「新たな制度を構築し、積極的に空家を解体する状況にはない」というご答弁でした。仰ってることはよく分かるんですよ。当初の質問でも申し上げた通り、あくまで個人の財産ですし、そこに対して公金を投入するという判断は、慎重にならざるを得ないと思っています。一方で、特定空家が無くても、危険な空家が既に存在していることは事実なんですよね。さらに、そうした空家が、今後どんどん増えていくことは確実です。そのことを踏まえれば、新たな制度設計、少なくともその検討には、早い段階で取り掛かるべきではないかと考えています。今回の質問を一つの契機として、検討が進むことを願っております。
耐震化については、推進に向けた取り組みを継続するとのことでしたので、是非ご答弁の通り進めて下さい。
介護予防事業の多角化
【2021年9月定例会 一般質問③】
高齢化が進む中、全ての方が、年齢を重ねても自分らしく過ごせることは、非常に大切です。また、資料3ページに示した通り、介護保険特別会計の歳出額は、介護給付費の伸び等により増加し続けています。高齢者の健康を維持・向上していくために、介護予防の取り組みは重要度を増しています。介護予防に最も効果的なのは、社会参加の機会を確保することです。日常的に出かけていく場があること、そこで体を動かしたり、コミュニケーションをとったりすることは、心身の健康に繋がります。そのため、本市でも西宮いきいき体操の実施や共生型地域交流拠点の設置等が進められています。私は、これらの効果を否定したいわけではありません。私にも今年90歳になる祖母がおりますが、いきいき体操に欠かさず参加させていただいておりまして、おかげさまで今も元気に暮らしています。しかしながら、2020年の「介護予防・日常生活圏域ニーズ調査」によれば、西宮いきいき体操などへの参加頻度は一般高齢者で8.3%、要支援認定者で17.1%に過ぎません。既存の施策では8割~9割程の方々にアプローチできていないのが現状であり、この方々に社会参加や外出を促すための仕組み作りが欠かせません。
他市に目を向けると、多種多様なメニューを用意することで、「出かけたくなる」工夫を行っている事例が多く存在しています。同じく≪資料3≫をご覧ください。奈良県生駒市では、一般介護予防事業として各種教室を実施しているほか、介護予防・生活支援サービス事業の枠組みでも複数の教室を展開しています。実際に生駒市は第1号被保険者の認定率が2013年度から5年連続で減少する等、具体的な成果を上げることに成功しています。また、愛知県瀬戸市では、大学・民間企業・NPO法人等と連携して、バラエティ豊かな介護予防プログラムを展開しています。従来の介護予防教室ではプログラムと対象者のニーズがマッチしていなかったという反省から「選べること」「楽しめること」を重視した取り組みであり、こちらも全国・愛知県内の平均値に比べて、認定率は低い水準で推移しています。
また、最近ではPFS、成果連動型民間委託契約方式の活用も進められています。行政課題の解決に対応した成果指標を設定し、成果指標値の改善状況に連動して委託費等を支払うもので、介護予防の分野では大阪府堺市の「あ・し・たプロジェクト」がよく知られています。受託事業者は様々な講座やサロンを開催し、継続参加人数や要介護状態進行遅延人数が成果指標に設定されています。これらが委託料と連動するため、受託事業者にとっては状況を改善するインセンティブが強力に働きますし、民間ならではの創意工夫を存分に発揮することが可能です。国も推奨する手法であり、他には奈良県天理市・福岡県大牟田市等で活用事例があります。本市においても、こうした介護予防メニューの多角化に取り組み、多様な興味・関心やニーズに応じた事業を推進するべきです。
介護予防事業の推進体制についても指摘をしておきます。本市の予防事業は、明確なビジョンや戦略を欠いていると感じます。どういった層に、どのような課題があるのか。それを解決するために、どのような手法を用いるのか。何年後に、どのような水準を目指すのか。高齢者福祉計画・介護保険事業計画を確認しても、各部署が行う施策の列記にとどまり、そうした体系的な記載はありません。その大きな要因は、介護予防事業を主管する部署が存在しないことだと考えます。介護予防を担う部署は、介護予防・生活支援サービス事業なら介護保険課、西宮いきいき体操や共生型地域交流拠点なら地域共生推進課、フレイル予防なら保健所と、多岐にわたります。高齢者の外出を促すという観点からは、高齢福祉課が所管する健康ポイント事業、地域学習推進課が所管する宮水学園等とも趣旨が重なります。こうした組織構成では、どうしても、それぞれの課がそれぞれの事業を実施することに集中しがちです。実際、これらの事業について事務事業評価書の指標を確認すると「介護を必要としない方の割合」といったアウトカムではなく、「拠点の設置数」「講座の開催回数」といったアウトプットにとどまる例が散見されます。予防事業について責任をもって所管する担当部署を定め、体系的に施策を実行することが重要と考えます。
以上をふまえ、3点質問します。
①高齢者の社会参加の機会を確保するため、介護予防事業のメニューを大幅に拡充・多角化すべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
本年3月に策定致しました、第8期西宮市高齢者福祉計画・西宮市介護保険事業計画において、「介護予防の推進と生きがいづくり・社会参加の促進」は、団塊ジュニア世代が65歳以上となる2040年に向けた課題として、取り組むべき重要な施策と位置づけております。また、計画策定に際し、市民を対象としたアンケート調査では、介護予防への関心、ニーズは比較的高く、個人の活動や趣味などを含め、介護予防に取り組む方は増加しつつあります。一方で、介護予防の基盤となる社会参加については、地域活動などへの参加頻度と参加意向が減少傾向にあり、性別及び年齢、身体状況などによって、高齢者の社会参加への意識やニーズは多様化しているという結果がございます。このことから、議員のご質問にもありますように、異なる高齢者の状態やニーズに対応できるよう、生きがいづくり、社会参加などを促進する取り組みの強化が必要であると考えております。現在、本市では、西宮いきいき体操を中心に、つどい場や共生型地域交流拠点の整備、各地区社会福祉協議会のふれあい昼食会の実施など、住民主体で取り組む介護予防をすすめるとともに、10月より70歳以上の高齢者を対象にした、外出のきっかけづくり、健康増進の観点から、個人でも参加ができる「西宮市健康ポイント事業」を実施することとしています。市としましては、高齢者の介護予防に関する意識の向上を含め、地域ごとの社会資源の情報集約と、その紹介や利用に繋げる仕組みづくりを進めるとともに、本計画において推進する、介護予防事業の効果検証を実施してまいります。また、これらの効果検証を踏まえ、介護予防事業メニューの拡充・多角化について検討してまいります。
②介護予防事業の拡充にあたり、PFS、成果連動型民間委託契約方式を活用すべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
本市においては、先の答弁でも申し上げましたように、異なる高齢者の状態などに対応できるよう生きがいづくりや社会参加を促進する取り組みの強化が必要であると考えており、令和3年度から4年度にかけて、介護予防、健康寿命の延伸に向けた既存事業の現状、課題の把握、効果検証を行い、必要な施策の検討や調査を実施してまいります。これらに合わせ、新たな事業を実施する場合の手法としまして、成果連動型民間委託契約方式の活用が可能かにつきましても検討してまいりたいと考えております。
③介護予防事業を体系的に推進するため、主管部署を定めて推進体制を構築し、課題や戦略を明確化すべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
本市では介護予防はじめ、高齢者の生活全般の支援に関することなどについて、健康福祉局内の関係課によって構成する「地域包括ケアシステム推進会議」において、横断的な課題の検討に取り組んでおります。また、2024年までに全ての市町村において実施することと示されております、「高齢者の保健事業と介護予防事業の一体的実施」について、医療や介護、検診などのデータ活用により、高齢者の重症化予防の個別支援や健康課題に対する支援策の検討を進めています。また、今後、このような取り組みを円滑に推進するため介護予防事業の主管部署を含めた組織のあり方について検討してまいります。
■意見・要望
まず、メニューの拡充・多角化について、「生きがいづくり、社会参加などを促進する取り組みの強化が必要」とのご認識をお示しいただきました。具体的な施策の実施や検討にまで踏み込んでご答弁を頂きましたこと、前向きに受け止めております。
その中で、今年度より開始した健康ポイント事業についての言及がございました。お示しの通り、個人でも参加ができる点は、従来の施策との違いとして評価できるポイントだと思っています。一方で、本事業への参加には登録が必要であり、現時点でその人数は1万人にすぎません。本市の高齢者人口は11万人以上にのぼり、本事業の対象者はごく一部にとどまります。また、登録する方はもともと健康増進への意識が高く、地域活動や西宮いきいき体操等に、既に参加している場合も多いのではないでしょうか。既存の施策でアプローチできていない方々に参加していただくことこそが重要であり、そのために必要なのは、やはり、色々な場を、色々な主体が設けていくことだと考えています。健康ポイント事業では、イベントの実施も計画されており、詳細は現在調整中と聞いておりますが、是非、登録済の方以外も参加できる場としていただくよう、要望します。また、「効果検証を踏まえ、拡充・多角化を検討する」とのご答弁でしたが、健康ポイント事業以外の施策についても、積極的に検討いただくことを要望しておきます。
PFSについては、手法の一つとして、検討の対象としていただけるとのことでした。成果指標の設定や効果測定の手法を検討する必要があるため、導入に一定のハードルがあることは理解しています。しかし、実施そのものに委託料を支払う従来の民間委託と異なり、成果に対して委託料を支払う仕組みは効率的・効果的な事業実施につながるため、私はこの手法に高い期待を寄せています。全国的に少しずつ導入の動きが見られ、特に医療・介護の分野で注目されているところですので、積極的な検討を要望しておきます。
■再質問
介護予防の推進体制については「主管部署を含めた組織のあり方について検討する」とのご答弁でした。今後の展開を見守っていきたいと思いますので、宜しくお願いいたします。ここで1点、再質問を行います。主管部署を定めても、それぞれの施策を個別に実施し続けるだけなら、現状からの変化はあまり期待できません。「課題は何で、それをどのように解決するのか」という戦略が重要だと考えます。当初の質問で、現在の成果指標がアウトプットにとどまることを指摘しましたが、今後はアウトカム指標を設定し、取り組みの全体像や考え方を示すべきと考えます。その必要性について市のご見解をお伺いいたします。
〇答弁要旨〇
介護予防事業の拡充・多角化を検討するにあたり既存事業の効果検証や課題の把握においては、議員ご指摘のように、各事業のアウトプットにとどまらず、アウトカムを意識した検討が必要であると考えております。市としましては、現在取り組んでおります、第8期の高齢者福祉・介護保険事業計画を推進する中で、介護予防事業の課題などの整理を行い、次期介護保険事業計画において、取り組みの全体像や考え方を整理してお示しできるよう取り組んでまいります。
今後の展開について、非常に期待できる内容のご答弁でした。是非、そうした観点で取り組みを進めていただきますよう要望します。
西宮市文化振興財団のあり方
【2019年9月定例会 一般質問④】
初めに申し上げておきますが、私は「文化」を非常に大切な存在だと思っています。この街で中学時代からずっと吹奏楽に携わってきた私にとって、多くの大切な仲間と出会い、人生の基礎を形づくってくれたのは、間違いなく音楽の、文化の世界でした。しかし、現在の文化振興財団、そして本市の文化振興施策のあり方には多くの課題が存在しており、是正が必要と考えています。本日は、そうした問題意識から、3つの観点で質問を行います。
≪資料4≫をご覧ください。文化振興財団は「地域の芸術、文化の向上に寄与すること」を目的に設立された外郭団体で、市出捐率100%の公益財団法人です。昨年7月時点の職員数は25名で、うち市からの専任派遣が5名、兼務派遣が4名、市OBが2名となっています。市の財政的関与は2020年度決算ベースで補助金7,388万円・受託料7,108万円・指定管理料1億1,620万円の計2億6,117万円。市との関与は極めて深く、実質的には税金で運営されている団体といえます。
1つ目の観点は実施事業の見直しです。私は、民間が実施できないサービスを提供することこそが、行政の役割だと考えています。例えば青少年の育成に関する事業、西宮少年合唱団の運営や未就学児を対象とした企画等には、大きな実施意義があります。また、日ごろ芸術と触れ合うことが少ない児童養護施設や高齢者施設へのアウトリーチ事業は、行政ならではの取り組みといえます。一方で財団の実施事業の中にはプロによるコンサートや寄席、映画の観賞会等がありますが、これらは行政でなくても開催が可能です。また、講座やセミナーの中には、公民館・宮水学園・大学交流センター等で実施されている事業と趣旨が重複しているものも存在します。財団は動画共有サービスyoutubeで「西宮市文化振興財団チャンネル」を開設していますが、視聴回数が2ケタにとどまる動画が複数存在する等、十分な効果を上げているとは言い難い状況です。ここではいくつかを例に挙げましたが、財団が行う全ての事業について、改めて必要性や意義を検証し、整理・見直しを行うべきと考えます。
2つ目の観点は市民会館・アミティホールの指定管理です。現在、財団は市民会館の指定管理者として施設の管理運営を担っています。この指定管理者の選定が非公募で行われていることを、私は強く問題視しています。「西宮市公の施設に係る指定管理者の指定手続等に関する条例」では、第2条で「公募しなければならない」という原則を定め、第5条で非公募とすることができる4つの類型を指定しています。このうち、本件は第4号の「指定施設の設置の目的、性格及び規模等により公募に適さない場合その他公募を行わないことについて合理的な理由がある場合」に該当すると解されているのでしょうが、施設の管理運営業務を公募しないことに、合理的な理由があるとは思えません。本市の他の市立ホールは全て公募で指定管理者を選定していますし、資料に示した通り、他市では拠点的な施設を含む全てのホールについて、指定管理者を公募で選定している事例が多く存在します。財団が行う事業は、施設の指定管理者でなければ実施できないものではありません。指定管理者制度が目指すものは、民間ノウハウの活用と競争原理による効率性の向上であり、これらは非公募で市の外郭団体が選定されている現状においては実現困難です。市は早急に、市民会館の指定管理者選定を公募に変更すべきです。
3つめの観点は職員派遣の取りやめです。冒頭で触れた通り、市は財団に専任で5名、兼務で4名の職員を派遣しています。本市には12の外郭団体が存在しますが、現在、専任派遣を行っているのは都市整備公社・社会福祉協議会・文化振興財団の3つのみです。近年、行政ニーズの多様化等を背景に、庁内の多くの部署から人員不足を懸念する声が聞かれます。また、新型コロナへの対応に多くの職員が動員されており、不要不急の業務を停止している状況です。そうした中、あくまで市役所外部の組織である外郭団体に、職員を派遣している余裕は無いと考えます。先に述べた事業の見直しと指定管理者の公募により財団が行う業務を縮減すれば、必要な職員数は減少し、市からの職員派遣を取りやめることが可能となります。職員派遣が法律・条例で認められているとはいえ、本来的には各団体の自立した運営が望ましいこともふまえ、市は派遣を取りやめるべきと考えます。
以上をふまえ、3点質問します。
①文化振興財団が実施する事業について、民間での実施が可能なものや、十分な効果が得られないもの等を取りやめ、抜本的な整理・見直しを行うべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
文化振興財団では、「地域の芸術、文化の向上に寄与する」という公益財団法人としての設立目的実現のため、市の文化振興ビジョンに沿いながら、平成30年度に、事業運営のためのポリシー、ビジョン、ミッションを定め、3 年ごとの事業重点方針に基づいて、専門性を高め、個性的で質の高い文化事業を効果的に推し進めていくよう、積極的な見直しを行いながら事業を展開しております。その見直しの中で、児童養護施設やあすなろ学級、高齢者施設等へのアウトリーチ事業などは、新たに取り組みを開始した事業であり、平成28 年度から、順次採用を行った専門職員の知識、経験、人脈を活かした事業でございます。また動画配信事業につきましては、主に西宮のアーティストによる動画を「おうちでアミティ」として財団のHP上で配信しております。双方向でのコンサートや発声練習の動画などコロナ禍において、多くの視聴回数があったものもあり、一定の効果をあげているものと考えております。このほか、芸術文化協会や音楽協会などの、地域のアーティスト団体と連携を図りながら、その活動や発表の場をつくり、市民の方々に、西宮で活動するアーティストを知っていただく機会の提供も行っております。また、事業見直しの中で、興行的側面が強く、民間事業者が行うべきと判断した事業は縮小いたしました。その他の事業につきましても、公益財団法人として、普段、市民の方々が接する機会が少ない芸術分野や低廉な価格で、質の高い芸術に触れていただく機会を提供するなど、単なる集客重視の事業とならないよう企画しているところです。なお、ご指摘のありました講座など他の部署と趣旨が重複している事業につきましては、ニーズを踏まえ、必要性を検証するとともに、生涯学習推進計画の趣旨に沿った見直しを図っていく必要があると考えております。今後も、文化振興財団の持つ専門性を活かし、市民により豊かな文化事業が提供できるよう常に見直しを図り、効果的、効率的な事業運営に努めるよう求めてまいります。
②市民会館の指定管理者について、公募での選定に変更すべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
市民会館は、本市の文化芸術施策の拠点施設と位置づけており、昭和63 年4月の文化振興財団の設立以来、同財団が市民会館の円滑な運営を行ってまいりました。これまで、市民会館において、同財団が市民や芸術文化団体などとともにコンサートやオペラなどの事業を企画から実施に至るまで協働で作り上げております。市民会館が市民の文化活動の拠点施設として役割を果たすためには、このような事業展開を図ることが重要であり、文化振興財団が市民会館の指定管理者として相応しいと考えていることから、非公募による募集が適切であるとして、選定委員会での審議、令和2年12月議会での議決を経て、指定管理者として選定したところです。指定期間は令和3年度より令和7年度の5年間です。今後も、同財団が市内の文化芸術関係諸団体や市民と十分に連携を図りながら、文化事業の企画、実施の中核的役割を担うためにも、市民の文化活動の拠点施設である市民会館を引き続き管理運営し、文化振興施策を推進することが望ましいと考えております。
③文化振興財団の業務・組織をスリム化し、市職員の派遣を早期に取りやめるべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
文化振興財団は、本市文化施策の基本計画である文化振興ビジョンに則った、市の文化施策を体現する中心的存在として、子育て世代が親子で楽しめる事業や、市内各地域の公共施設で気軽に楽しめる事業などを展開しています。市としてはこれからも同財団に、市の文化振興ビジョンに示された文化施策の方向性に合わせて、市民が文化芸術活動を通して様々な形でつながりあえる場と機会を提供し、文化芸術の裾野をさらに広げる事業を展開することを期待しています。こうした活動を担っていくためには、同財団の専門性を高めていく必要があり、平成27年3月議会において、市からの派遣職員を削減し、計画的に、順次、文化振興財団で専門職員を採用する方針をご説明申し上げ、令和3年4月1日をもって、この方針による計画を一旦完了したところです。今後とも、事業の見直しを進め効率的な事業運営に努めるとともに、専門性をより発揮していくためには、文化芸術に関する経験や人的ネットワークを豊富に備えた人材の充実が不可欠であり、市からの派遣職員の比率をさらに下げるなど、財団の独立性なども総合的に勘案しながら、体制の見直しを進めてまいります。
■意見・要望
実施事業については、これまでも見直しを行ってきたし、これからも見直しを続けていく、ということでした。興行的側面の強い事業を縮小した、とのご答弁でしたが、まだまだ見直せる事業はあると考えています。繰り返しになりますが「文化」は大切です。でも「文化を大切にすること」と「文化に税金を投入すること」は、必ずしもイコールではありません。どういった事業が、税金を投入する対象としてふさわしいのか。私は、青少年の育成など、先ほど述べたようなものに限定すべきと考えていますが、この点については、まだまだ当局・財団と温度差があるように感じています。昨年には新型コロナの影響を受け、補正予算を組んで新しい事業を実施していましたが、その効果についても疑問が残ります。税金を投入するということの重さを、改めて認識していただきたい。そのことを、強く願っています。効果的・効率的な事業運営に努めるとのご答弁でしたので、今後の展開を注視してまいりますが、新規事業の立ち上げについても、慎重な判断をお願いします。あらゆる事業は、始めるときよりも終える時の方が、エネルギーを必要とするものです。本当に必要な事業に特化することを、重ねて要望しておきます。
■再質問
指定管理については、全く納得のいかないご答弁でした。ご答弁は「市内の文化芸術関係諸団体と十分に連携を図りながら、文化事業の企画、実施の中核的役割を担うためにも、市民の文化活動の拠点施設である市民会館を引き続き管理運営し、文化振興施策を推進することが望ましい」というものでした。極めて抽象的な表現で、なぜ財団がアミティを管理しなければならないのか、の説明としては、合理性を欠きます。資料にも示した通り、指定管理である以上、あくまで原則は公募なんです。非公募とするには、よっぽどの理由が必要なわけですよ。じゃあ、アミティの管理者が財団でなくなったら、どんな不都合が有るんですか。具体的に、誰が、何に困るのか。お答えをお願いします。
〇答弁要旨〇
文化振興財団の設立目的とこれまでの事業展開、市内の芸術家、文化芸術団体との関係性に鑑みて、市民の文化芸術活動の拠点である市民会館の管理者として必要とされる市内の文化芸術関係諸団体と十分に連携を図りながら運営を行うことができる唯一の市内団体が文化振興財団でございます。これらの事業の円滑な実施において、文化振興財団以外が担うと支障が生じるというふうに考えております。
それって、財団だったらやりやすいな、というだけで、他の事業者じゃ駄目という理由にはなってないんですよ。そこまで、財団が拠点施設を管理することが文化振興施策につながる、と仰るのであれば、拠点施設の指定管理も公募している自治体、例えば資料に示した18の中核市は、十分な文化振興施策ができてないという認識なんでしょうか。お答えください。
〇答弁要旨〇
例えば川西市では、キセラホールは指定管理者で公募しておりますけれども、みつなかホールは、市の文化振興事業に沿った事業を文化・スポーツ振興財団が実施しております。施設管理のノウハウやニーズの把握、自主事業のスキルなどを継続して維持していくために、同財団が非公募で指定管理を行うのがいいだろうということで非公募で指定管理者を選定しております。また、このような財団がない市において、例えば豊中市のような自治体では、当然ながら、公募により選定を行っております。このように、各自治体の事情や拠点施設に求める役割・機能は様々でありますので、指定管理の方法も異なるというふうに認識しております。
■意見・要望
この点はやはり見解の相違があるなと思います。私は先ほど述べた通り、市が税金で行う文化振興施策は極めて限定的なものであるべきと考えています。その前提に立てば、アミティの指定管理業務は、一般的な貸館業務が中心となるはずで、非公募とし続ける理由はありません。この点は、今後も指摘を続けてまいります。
職員派遣の取りやめについては、体制の見直しを進めるとのご答弁でした。本来は市の職員派遣に替えて固有職員を採用するのではなく、事業規模を縮小して組織自体をスリム化していただきたいと願っておりますが、この場で派遣職員の比率の引き下げに言及していただけたことは、一歩前進かなと受け止めております。昨年度まで総務常任委員会の副委員長を務めたこともあり、全庁的な人員体制について当局の方々と意見交換する機会が何度かございました。皆さん一様におっしゃるのが、人が足りなくて大変だ、ということなんですよね。新型コロナの影響で、そうした声はより高まっていることでしょうし、人員だけでなく、財源についても同じことが言えます。そうした感覚が、外郭団体になると、すごく薄れているような気がしてならないんです。補助金を支出している団体という意味では、観光協会等についてもこれまで指摘をしてきましたけど、市との関わりの深さを鑑みて、適正な運営に努めていただくことを要望しておきます。
最後に、やはりこれは市全体の、事業の取捨選択、政策的な判断に関わる問題なのだと思います。日頃、私は産業文化局、中でも文化振興課や都市ブランド発信課に、事業の必要性や効果について厳しいことを申し上げています。でも、所管部署の役割は、あくまでも市全体の方針に従って担当の業務を進めることです。担当事業に意義を見出して取り組もうとしている所管部署に対して、その必要性に関する議論を持ち掛けるのは、少し酷かなと思う時もあります。だからこそ市全体の方針、撤退や縮小を含めた判断は、トップである市長や特別職の皆様方にお願いしたい。時代が、社会が、大きく移り変わろうとする今、ただ漫然と、これまでの事業を続けていくことは許されません。厳しい決断を含めて、この街の将来に対する責任を果たしていただくようお願いして、私、たかのしんの一般質問を終わります。