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行政手続オンライン化の進展
【2023年3月定例会 一般質問①】
≪資料1≫をご覧ください。私は2020年9月定例会の一般質問において「行政手続のオンライン化ならびに業務の整理」を取り上げました。行政経営の効率化、市民の利便性向上、感染症対策等の観点から、行政手続オンライン化の推進を主張したものです。私はオンライン化を阻む要素として「本人確認」「捺印」「付属書類」「手数料」の4つを提示し、課題の解消に向けた具体的な取り組みを求めました。
その後、社会全体でDX、デジタル・トランスフォーメーションへの機運が大きく高まりました。本市においてもデジタル推進部をはじめとする当局のご尽力により、各種手続のオンライン化が意欲的に進められています。2021年10月には「にしのみやスマート申請」が導入され、これまでに165件の市民向け手続がオンライン化されました。2020年4月時点で、市のホームページで紹介されていたオンライン手続は、県の共同申請システムを利用するものを中心に20件程度でしたので、この3年間で大きな実績を残したと言えるでしょう。なお、これらの件数については国が主導して進めるマイナポータルを用いた手続を除外しており、西宮市としての取り組みに限定して質問を進めます。また、本件は2022年12月議会で維新の会西宮市議団の脇田議員も取り上げていらっしゃり、趣旨が重なる部分もございますが、今回は私なりの視点で問題提起させていただきます。
オンライン化が進展していることは高く評価しますが、依然として「他市ではオンライン化しているが、本市では未対応の手続」も多く存在しています。近隣で同じシステムを導入している神戸市・姫路市・尼崎市と比較すると、資料に示した通り、印鑑登録証明書の交付申請、原動機付自転車の登録、昨年から実施された「電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金」の申請等が、本市では未対応となっておりました。他にも、公立幼稚園の入園申込や就学奨励金の申請、不在者投票用紙の請求といった手続は、オンライン化が可能と考えられます。現在、実現性や効果性を基準にピックアップした手続など158件について、具体的な検討が進められているとのことですが、まずはこれらのオンライン化を早期に完了させ、さらには他の手続へ対象を広げていくべきです。前回、私の指摘した「本人確認」「付属書類」「手数料」についてはスマート申請の機能で既に対応が可能となっています。「捺印」についてもタスクフォースの活動により現時点で2,136件のうち1,546件が廃止の見込みであり、残っているのは法的根拠や国・県の書式との整合性を問われるものが大半となっています。オンライン化にむけた実務上の課題はクリアしており、仕組みは既に整備されているわけですから、あとはそれぞれの業務のあり方を、オンラインの流れに対応させていくだけという段階に来ています。
以上をふまえ、2点質問します。
①今後の行政手続オンライン化に対する取り組み方針をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
本市では「西宮市DX推進指針」に則り、「いつでも・どこからでも来庁せずに手続きできる」という「暮らし手続き分野」におけるビジョンを目標に、行政手続きのデジタル化に取り組んでいます。令和3年度には、様々な行政手続きがインターネット上で行えることを目的として「にしのみやスマート申請」を導入するとともに、市長直轄のタスクフォースにおいてオンライン化に向けた基本的な考え方の取りまとめを行いました。その結果を受けて令和4年度は、実現性と効果性のいずれもが高い手続きを、オンライン化を優先すべきものと位置付け、そこに「子育て世代」を対象としたものを加えた158の手続きを特定し、オンライン化に向けた庁内協議を進めております。デジタル推進部門による手続き所管課へのヒアリングを一通り終えた段階で、オンライン化の見通しが立った手続きは158のうち3分の1程度にとどまっており、現在、残りの手続きについて、オンライン化できない要因の分析や、それを踏まえた対応策の検討を進めているところです。まずは、この158手続きについてオンライン化を進めることとしておりますが、ここから得られる分析結果や対応策は、これらの手続きに限ったものではないため、方針などの形で取りまとめ、それを庁内に周知することで、他の手続きを含めた、市の行政手続きのオンライン化を進めてまいります。
②オンライン化が完了していない業務について、どのような点が課題やハードルとなっているのか、お聞かせください。
〇答弁要旨〇
手続所管課へのヒアリングを行ったところ、オンライン化ができない要因として、「人命に関わる緊急かつ重要な申請に対する対応が遅れる可能性がある」「申請先が学校や幼稚園であり、持参や郵送に限られる」「面談等で来庁が必要」「添付書類が多岐にわたる、原本の提出が必要」「運用する職員の数が足りない」などが挙げられました。今後、このような要因を取り除くためには、職員の意識改革により、来庁や添付書類を伴う手続きであっても、オンライン化することで窓口での対応時間を短縮できるといったオンライン化によるメリットの理解を進めるとともに、紙を中心とした現在の事務処理にデジタルを追加するのではなく、デジタルを前提とした業務フローに見直すことなどの業務改革への取り組みを実践していくことが必要であると考えております。引き続き、行政手続オンライン化を推進し、一層の市民の利便性向上と業務改善に取り組んでまいります。
■意見・要望
行政手続オンライン化を推進し、一層の市民の利便性向上と業務改善に取り組むとのご答弁、これまでの前向きな取り組みとあわせて、高く評価します。一方で、オンライン化を優先すべきと位置付けた手続にもかかわらず、158件のうち見通しが立ったのは3分の1程度ということで、率直に、簡単には進まないんだなぁという感想を抱きました。この、残り約100件が一つのポイントになると思っていまして、ここで課題となっている要因をクリアできれば、一気に他の手続へもオンライン化の動きが波及するのではないでしょうか。
手続所管課が掲げる、オンライン化に向けた課題を例示いただきましたが、いずれもオンライン化を進めない理由にはなっていません。「申請に対する対応が遅れる可能性がある」という声は、むしろオンラインの方がリアルタイムに申請を確認できますし、紙ベースの申請でも見落としなどのリスクは同じように存在するはずです。持参や郵送に限られる手続や、職員の受付体制に関する課題は、ご答弁にもありました通り、業務フロー自体をオンライン前提の流れに組み直すことで対応するべきです。また、来庁が必要であっても、手続に要する時間を削減したり、来庁回数を減らしたりできれば、市民の利便性向上には大きく寄与します。
だからこそ大切なのは、これもご答弁にあったお言葉ですが、職員の意識改革なのだと思います。オンライン化の流れは、もはや好むと好まざるとにかかわらず、受け入れなければならない現実です。基本的には全ての手続がオンラインで実施できる。どうしても対面が必要な手続だけ、例外的に来庁していただく。そんな市役所の姿も、そう遠い将来の話ではないように思います。せっかくオンライン化と向き合うなら、やらない理由を探すことではなく、やるための工夫を考えることに、力を入れていただきたいと思います。この件は、今後も進捗に注目していくことといたしまして、次の質問に移ります。