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政策ライブラリー
フレンテ西宮の商業床について
【2020年3月定例会 一般質問①】
フレンテ西宮は、JR西宮駅南地区の再開発事業によって1994年に誕生した商業施設です。≪資料1-①≫地上6階・地下1階建で地下1階から3階が商業部分、4階以上が公共施設・駐車場となっています。商業部分の合計床面積は約17,500㎡で、開業当初はコープこうべが約13,400㎡を所有、専門店の約4,100㎡を地権者もしくは第3セクター「西宮都市管理株式会社」が所有していました。
開業から15年目の2008年、状況は大きく変わります。コープがフレンテからの撤退を表明したのです。この出来事は市政に大きな衝撃を与え、市議会でも特別委員会による徹底的な議論が行われました。最終的には、コープが4フロアのうち地下1階・1階の2フロアで営業を継続、2階・3階の2フロアを市が買い取ることで決着。市は、購入した2フロアを株式会社ニトリに賃貸しました。当時、購入に至った判断は緊急措置的な色合いが濃く、その是非をここでは問いませんが、当時の混乱から10年以上が経った今、改めて市とフレンテの関わりを問い直すべく今回の一般質問を行います。なお、市とフレンテは、「公共施設の所有者として」「商業部分の所有者として」「都市管理へお金を貸している債権者として」「都市管理に出資している株主として」様々な関わりを持っていますが、今回は「商業部分の所有者として」の関わりに限定して質疑を行います。
まずは、本件の収支構造を確認します。≪資料1-②≫市は2フロア・約6,000㎡の取得にあたり、消費税や不動産鑑定等の諸費用を含めて約8億1,800万円の投資を行いました。これをニトリに税抜き坪単価・4,500円で賃貸しており、現在の賃料は月額約880万円、年額約1億560万円です。一方、当該商業床の所有に伴う、管理費・修繕積立金や駐車場協力金、保守点検費用等の支出が月額約620万円、年額約7,440万円であり、これを差し引いた営業収益は月額約260万円、年額約3,120万円となります。商業床の取得以来、増税の影響や契約条件の一部変更はあったものの、概ね一定の収支で推移してきました。市議会は、2009年7月9日付の決議において「適正な賃料」として「実質利回り4%」の確保を求めました。年間営業収益の実績は投資額に対して3%台後半~4%程度であり、一見、この水準を満たしているようです。しかし、この考え方には「逸失利益」の考え方が欠落しています。≪資料1-③④≫市が取得したために固定資産税・都市計画税は減収となっており、その影響額は年間1,500万円以上と推定されます。また、約8億円の現金を手元に残しておけば、過去10年間の利率から試算して、年間平均・約50万円の運用益を得ることもできました。現在の指標では、民間事業者であれば当然に考慮する「公租公課の負担」「投資に係るコスト」等が度外視されているため、今回の質問及び付属資料では、これらの「逸失利益」を差し引いた「実質収益」の考え方を採用しました。
続いて、本件に係るリスクについて検証します。「商業施設の床を取得し、民間事業者に賃貸する」という行為は、経緯はどうあれ、紛れもなく「不動産ビジネス」です。ビジネスである以上はあらゆるリスクが伴うことを、忘れてはいけません。
不動産オーナーが最も恐れるのは、空室リスクです。ニトリとの契約期間は6年であり、次の更新は2021年11月です。仮にニトリが撤退し、次のテナントが決まらない場合であっても、先ほど示した営業費用および逸失利益は発生するため、毎月約750万円の損失が続きます。店舗数は拡大傾向にあるニトリですが、最近では同じ国道2号線沿いに尼崎浜田店もオープンしています。出店・閉店という経営判断の中で、「フレンテから撤退する」という選択肢は十分に有り得ると考えます。また、一般論として契約更新時には賃料交渉の申入れを受ける可能性もあり、現在の収支条件が継続する保証も有りません。
次に、建物の修繕に係るリスクがあります。近年、東日本大震災の復興や東京五輪の影響を受け、建築コストが高騰しています。必要な工事費が当初の想定を上回り、計画通りの修繕が難しいという事例も耳にします。特に、フレンテの場合には、コープ撤退が取り沙汰された2009年9月から2011年3月までの間、各所有者の支払う修繕積立金が1㎡あたり月額150円から月額50円に減額されていました。この期間だけで、修繕積立金は管理組合全体で約6,000万円の減収となっており、今後、必要な修繕を行えるのか、懸念を抱きます。
さらに、不動産価値の下落リスクとも隣り合わせです。現在、商業施設を含む不動産市況は概ね好況であり、前向きな投資マインドが形成されています。しかし、不動産市況は景気の動向に大きく左右されるものであり、過去にはバブル崩壊やリーマンショック後に長い低迷期を迎えました。フレンテの商業床も、今なら一定の金額で売却できる可能性が有りますが、将来、不動産市況が低迷し、買い手も借り手もいない、という状況に陥ることは十分に考えられます。事実、全国で数多くの駅前再開発ビルが、そうした運命を辿っているのです。
商業開発やリーシングを専業とする民間の不動産事業者と異なり、市はこれらのリスクに対応できるノウハウを有していません。市は過去の議会答弁において、購入の目的をにぎわいや魅力ある市街地の形成としていますが、これらは行政でなければ果たせない役割ではありません。事実、市内の他の駅前では、市が商業施設の一部を所有しているわけではありませんし、そうした駅前でも賑わいや魅力ある市街地は十分に形成されています。本来的に、商業床は市が所有する不動産ではなく、購入はあくまで一時的な対応であるべきです。「駅前商業施設の空洞化を防ぐ」という当初の目的を達した今、当該商業床は民間へ売却し、本市財政における将来的なリスクの芽をつむべきと考えます。
①ニトリとの契約について、今後も更新が見込めるのでしょうか。また、ニトリが撤退した場合には、どういった対応を取るのでしょうか。撤退のリスクに対する市の認識をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
現在、ニトリは増収増益を続けておられ、フレンテ西宮への出店以降も、尼崎市内で2店舗目となるニトリ浜田店を出店するなど、積極的に拡大路線を継続されている状況から、今後もフレンテ西宮での営業を継続していただけるものと考えております。しかしながら、ニトリの経営方針や経営状況等にもよりますが、必ずしも契約更新が確約されたものではありません。同社との賃貸借契約では、契約更新の意向がない場合、6か月前までに市に書面で申し入れることとなっており、仮に、更新しないという意向が確認できた場合は、平成21年当時と同様に、速やかに公募により核テナントを募集します。なお、公募で決定できなかった場合は、リーシングを専門に行う事業者と契約し、空店舗とならないよう核テナントを早期に誘致する必要があると考えています。撤退のリスクに対する市の認識ですが、核テナントが早期に決まらなかった場合は、空き店舗となった期間の管理費等の維持費を市が負担しなければならないリスクがあります。さらに、集客の核となる店舗が早期に決まらなかった場合、専門店の売り上げや、JR西宮駅前の賑わいづくりなど、地域経済にも影響があると考えています。
②今後の大規模修繕は、これまでに積み立てた修繕積立金のみで対応できるのでしょうか。市が追加で財政出動する可能性について、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
修繕積立金については、施設も老朽化し、様々な箇所で修繕が必要になってくることから、今後、中長期的に修繕を順次行っていくためには、現在の修繕積立金では十分ではなく、将来的に追加の負担が発生する可能性があると認識しております。その場合、大規模修繕費用については、市も区分所有者の一人として、管理組合において定められた基準に従って、持ち分に応じた負担を行うことを原則としており、市だけが他の権利者よりも多くを負担することは考えておりません。
③商業床の保有・賃貸は行政が担うべき役割ではなく、リスクへの適切な対応も難しいことから、フレンテの商業床は早期に売却すべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
平成21年当時は、核テナントであるコープこうべが全面撤退することによる地元経済への多大な影響が懸念されたことから、市が一部の床を所有することとなりました。これによりコープこうべが、規模を縮小しながらも継続して営業を行うことになり、また、第二核テナントであるニトリを誘致することでJR西宮駅前の商業空洞化を防ぎ、混乱が回避できた経緯があります。一方で、いわゆるフレンテ問題の発生から10年が経過し、JR西宮駅南西地区再開発事業など、民間による再開発事業が進んでいる状況でもあり、フレンテ西宮の商業床についても、民間手法による運営について、調査研究すべき時期にきているものと考えています。商業床の活用という点では、専門的な知識や経験を有する民間企業等による運営に一定の効果が期待できるものと思われますが、その際においても、過去の経緯から、自社の企業活動のみを優先させるのではなく、JR西宮駅前の賑わいづくりや商業活性化の視点を、市や地権者・店舗関係者と共有できる企業の参画が望ましいと考えます。
■意見・要望
「契約を更新していただけないことがあるかもしれない」「将来的に追加の負担が発生する可能性がある」と、リスクをお認めになったうえで「民間手法による運営について、調査研究すべき時期にきている」との見解をお示しいただきました。ご答弁の趣旨に基づき、民間への売却を積極的にご検討ください。今回は商業床についてのみ取り上げましたが、フレンテに関しては、公共施設再編・統合の視点や都市管理の経営状況など、他にも重要な論点が存在します。また、建物管理上の問題として、各店舗の資材が共用部に置かれ、避難経路をふさいでいるという状況も耳にします。フレンテのあるべき姿については、今後も強い関心をもって調査・提言を続けてまいります。
市有地を活用した保育施設整備について
【2020年3月定例会 一般質問②】
保育所待機児童の解消は、本市における喫緊の課題です。現在の子育て世代にとって、結婚・出産後も仕事を続けることは、ごく一般的な選択肢となっています。保育所に入れないから、仕事に復帰できない。保育所に入れないから、西宮で暮らすことを諦める。私のもとには、同世代からの悲痛な叫びが日々届いています。
市は第2期子ども・子育て支援事業計画の素案において、2024年度までに1,000人分の受入枠拡大を目指すとしていますが、このうち現時点で整備の目途が立っているのは490人分にとどまります。≪資料2-①≫また、受入枠算出の根拠となる保育需要率は、過去5年間、当初の推計を上回るペースで増加しており、今後についても試算以上の伸びとなる可能性があります。そもそも、2024年度に待機児童を解消しても、いま問題に直面している皆さんに手を差し伸べることはできません。保育施設の整備は、計画の目標年限にとらわれることなく、一刻も早く進めるべきです。こうした状況をふまえれば、現在の対策の延長線上ではなく、より抜本的な施策が必要であるはずです。
保育施設の整備にあたっては、建設用地の確保・保育士の確保・運営事業者との調整・財源捻出など、様々な課題がありますが、まずは土地がなければ、整備を検討することすらできません。そんな問題意識から、今回は建設用地の確保、中でも市有地における施設整備の可能性について、精査することとしました。
最初に、送迎保育事業について検討します。≪資料2-②≫昨年4月、「高須の森保育園」の開園に伴い、本市初の送迎保育事業がスタートしました。送迎保育は「保育需要の高い地域は住宅需要や土地価格が高く、建設用地の確保が困難である」というネックを解消できるため、待機児童対策の切り札として期待されます。「高須の森保育園」初年度の送迎実績は、各学年定員10名に対し、3歳児9名・4歳児2名・5歳児1名。一般的に4歳・5歳から入所する例は少ないため、合計は12名にとどまりますが、現在の3歳児が5歳児となる2年後には、定員を満たすことが想定されます。送迎保育に一定の需要は有る、少なくとも選択肢としては有効であることを、本年度の実績は示しています。
送迎保育を前提とした場合に、高須東小学校の跡地に整備された「高須の森保育園」の例からも、大規模な市有地は有効な建設用地です。送迎保育であれば、市街地や鉄道駅から離れた土地でも問題はありません。自然豊かな環境がメリットにもなり得ますし、近隣に住居が少ない場所であれば、住民からの反対も発生しにくいと考えられます。
一つ目の候補地は「北山公園」「北山貯水池」の一帯です。≪資料2-③≫山間部ながら平地のゾーンが存在するほか、路線バスのルート上にあるため道路条件も良好です。近くの鷲林寺2丁目には既に民間の保育施設が存在しており、自家用車による送迎でも一定の需要があることが推測されます。二つ目は、西宮浜の「海辺の道公園」です。土地面積は20,000㎡以上に及び、阪神西宮駅周辺をはじめとする市中心部からのアクセスの良さも魅力です。都市公園内での整備については2018年度に久保町での実績があり、実現可能性は十分です。三つ目の「すみれ台・公益的施設予定地」、四つ目の「山口町中野・元分譲用地」は北部地域の広大な土地で、長年にわたり活用の目途が立っていませんでした。これらは市有地の有効利用という観点からも、意義のある選択肢と考えます。資料、次のページに示した通り、2000年から送迎保育事業を開始した大阪府池田市では、駅前のステーションから山手地域の保育所への送迎が実施されており、保育需要の地域偏在を解消する一助となっています。こうした先行事例もふまえ、送迎保育事業の拡充に取り組むべきです。
続いて、上大市5丁目の市有地について検討します≪資料2-④≫をご覧ください。1枚目に土地の概要と待機児童数の推移、2枚目に写真を載せております。当該地域は段上小学校の校区であり、隣接する樋ノ口小学校・段上西小学校等を含めて、待機児童の多い地域です。全市平均に比べて年少人口の割合が高く、田近野町の公務員宿舎跡に建設された大型マンションや、2022年以降に宅地化が可能となる生産緑地の存在も考慮すると、今後も当地域の保育需要は高く推移すると考えられます。
上大市5丁目には、鯨池浄水場に関する土地と市営住宅跡などの市有地が複数存在します。鯨池浄水場は現在浄水処理を中止しており2030年度頃に再開予定、市営住宅の跡地は「売却処分等の活用を目指す」とされています。一帯の土地の中で、私が最も注目しているのは、資料で「A」と示した浄水場の資材置場です。面積は1,400㎡以上、甲子園段上線に面した整形地で、浄水場の運転再開後は災害時の応急給水スペースとなる予定です。一方、この土地はエリア・面積・接道条件ともに、保育施設の整備地としても理想的な条件です。災害対応はもちろん重要ですが、土地の一部だけでも保育施設を整備することはできないでしょうか。給水車両の活動に必要な広さを改めて検証したうえで、「A」における保育施設整備を検討すべきです。「A」での整備が不可能な場合でも、「B」の市営住宅跡地に保育所を整備し、「A」は送迎時の待機スペース・駐車場として活用するという手法が有り得ます。「B」は周辺道路の狭さから保育所用地に適さないと聞いておりますが、面積は4,000㎡以上と十分です。3歳児以上の受入を前提とし、A⇔B間は保育士同行のもと徒歩で移動する形とすれば、「B」への整備も可能と考えます。また、「C」「D」「E」を複合的に活用するプランも有り得るかもしれません。本年4月、松籟荘に民間保育所が新設されるため、当局としては、その後の保育需要を見極めたい意向もあるようですが、「A」を活用すれば駐車スペースも十分であるため、送迎保育での活用も可能です。甲東地域のみならず全市的な待機児童解消の可能性も含め、整備を検討すべき市有地です。
続いて、その他の市有地について検討します。≪資料2-⑤≫保育施設を整備するには、一般的に概ね500㎡以上の広さが必要です。そこで、活用方針の定まっていない500㎡以上の市有地をリストアップし、周辺における待機児童の状況や、各土地固有の課題を精査しました。結果として、私がこのたび整備候補地として提案するのが、次の5箇所です。
「1」甲陽園本庄町の市営住宅跡地及び現・甲陽園市民館は、先日の総務常任委員会で報告された案件です。市営住宅跡地へ市民館を移転・再整備するとともに、民間事業者による開発が想定されていますが、その一部もしくは移転後の市民館跡地を、保育施設整備に活用するべきと考えます。
「2」元・広田教職員住宅および「3」元・雅楽荘は、継続して待機児童の発生している広田小学校区内の土地です。いずれも整形地で面積も十分であるため、駐車スペース等も確保した整備が可能ではないでしょうか。一方、保育施設のみで全ての土地を利用するには広すぎるため、地域で必要とされる施設や用途について住民の声を聞きながら、複合的に検討を行うべきです。
「4」神園町宅地は、待機児童の多い甲陽園・神原小学校区の境界付近に位置します。近接する土地は既に土地開発公社による分譲が進んでおり、この土地もいずれ宅地化が想定されますが、その際には保育施設の整備を並行して検討するべきです。
「5」上田中町宅地は、立地する鳴尾東小学校区の待機児童は少ないものの、近くには待機児童の多い小学校区が複数存在しています。近隣小学校区であっても、自転車や徒歩での送迎は十分に可能なため、有効な候補地と考えます。
市有地での整備はこれまでにも検討され、実現した例も有りますが、このように一つずつの土地を見ていきますと、改めて全ての市有地について検証していく必要性を痛感します。
①待機児童解消における送迎保育事業の有効性について、「高須の森保育園」の実績をふまえ、市の見解をお聞かせください。効果が認められるのであれば、市街地から離れた大規模な市有地を活用して整備を進めるべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
平成31年4月に開設した高須の森保育園での送迎保育ステーション事業では、初年度のため4,5歳児ではまだ空きがあるものの、3歳児の定員はほぼ埋まっていることから、令和3年4月には全年齢で定員を充足すると見込んでいること、運用上の大きな問題も今のところ生じていないことから、一定効果があるものと考えております。一方で、保護者が送迎を行う通常の保育所と異なり、ステーション側や送迎バス内にも追加で保育士の配置が必要となります。保育士の確保が大きな課題となっている現状では、受け入れ側の保育所とステーションを同時に整備する手法を多用することは難しいと考えますが、実施に向けて適当な物件を探しつつ、検討を進めてまいります。
②上大市5丁目に存在する複数の市有地について総合的な検討を行い、保育施設の整備を行うべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
ご提案いただいた中でも鯨池浄水場近隣の整形地については、土地の規模や接道状況等から保育所整備に適した土地であると考えますが、所管局である上下水道局が鯨池浄水場の再整備を今後行う中で、工事期間中は整形地も含め工事に使用することから、当面の活用は困難であると考えます。今後、再整備工事終了後の利活用について、こども支援局を含む庁内で再度検討を行ってまいります。
③一定以上の規模を有し、用途の定まっていない市有地については、保育施設の整備候補地として改めて検討を行うべきと考えますか、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
保育施設の整備促進には市有地の活用が大きな効果があるものと考えております。保育所等整備用地として利活用の可否を検討する場合、その地域に保育需要があることに加え、子供の送り迎え時に近隣への影響を抑えられるよう、接道状況を含め、駐車・駐輪場を確保できること等が重要な条件となります。また、土地が市街化調整区域に存在する場合は、建築物の新築等が厳しく制限されているなど、土地条件による障壁が存在する場合もあります。しかしながら、すべての条件を満たす土地だけに限定せず、様々な工夫や対策を講じ、今後も活用可能な市有地の掘り起こしに努めてまいります。
■再質問
保育施設の整備については、送迎保育事業や市有地活用の有効性をお認め頂きました。私からもできる限り具体的な実例をお示ししたつもりです。そこで、市長に再質問いたします。市長は選挙公約に「待機児童ゼロ」を掲げられておりますが、現時点で解消のめどは立っていません。その中で、今回のご答弁では、こうした新しい取り組みについての有効性をお認め頂きました。改めて、保育所待機児童解消に向けた市長の取り組み方針をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
ご指摘の通り、送迎保育事業や市有地活用は有効な手法と考えております。今回は多様な観点で様々な市有地について詳しくお示し頂いて、私も改めて活用方法について、しっかりしていかなければいけないと思ったところです。また質問中の「そもそも、2024年度に待機児童を解消しても、いま問題に直面している皆さんに手を差し伸べることはできません」というのはまさにその通りであり、今のままの取組みでいいとは全く思っておりませんし、今回頂いた様々なアイディアを含めて、全力で取り組んでいきたいと思っております。今日までも、いろいろなことをやってきているというところですが、現状届いていないというのも事実です。一刻も早い待機児童解消に向けて取り組んでいきたいと考えております。
■意見・要望
まだまだ不足しているという中で、一刻も早い解消、という市長ご自身の力強いお言葉を頂戴しました。今回頂いたご答弁の中で「すべての条件を満たす土地だけに限定せず」という表現が気に入っておりまして、全ての条件を満たす土地であれば、もう既に保育所を作っていらっしゃると思うんです。これまで様々な取組みを行ってきたというのは市長の仰る通りと思いますので、今回挙げた市有地も、何らかのネックやハードルが存在するだろうと思いながらの提案でありました。そうしたところを超えていくには、やはり市長のリーダーシップで進めていただくしかないと思いますので、再質問という形で市長の取り組み方針をお聞かせいただきました。
上大市5丁目の市有地、中でも鯨池浄水場前の整形地については、保育所用地としての適性をお認めいただきました。上下水道局が防災活用計画等で既に方針を示している中でも「子ども支援局を含む庁内で再度検討を行ってまいります」とご答弁いただけたことは、どうしても縦割りになりがちな市役所組織の中で、局を超えたご回答を頂戴したという点において、一定前向きに受け止めています。一方で、利活用を鯨池浄水場の再整備工事終了後、と限定されたことには異論があります。この一帯は従前より利活用が議論されてきた土地であり、待機児童の深刻さを鑑みれば、すでに対策は遅きに失した感があります。再整備工事の完了は約10年後であり、その間にも、保育所に子どもを預けられずに困るご家庭が、たくさん発生するんです。本当に、浄水場の再整備が終わるまで、保育所をつくることはできないのか。並行して進めることはできないのか。1年でも、前倒しすることはできないのか。あらゆる可能性を検証いただきますよう、強く、要望します。
公共サイン適正化の取組みについて
【2020年3月定例会 一般質問③】
市は、行政が設置する看板類について一定の基準を設け、公共サインの適正化を進めるとしています。「情報を分かりやすく伝える」「景観に調和するデザインを目指す」といった趣旨に異論はありませんが、実際の取り組みを進める中では様々な弊害が発生しています。
まず、ホームページ・市政ニュース等において「本来、道路や公園、広場などの公共空間は、市の施策や啓発活動を宣伝する場ではありません。」と断言していることに、強い違和感を覚えます。≪資料3-①≫この理念は、誰が、どのように決めたものなのでしょうか。「看板を設置することでの効果は期待できません」「不要な看板を撤去することとします」とありますが、どんな看板にも設置の目的や経緯がある以上、不要と決めつけることはできないはずです。看板の設置や撤去は地域住民にとって重大な関心事であるにも関わらず、今回の方針は議会での議論を経ることもなく、唐突に示されました。都市景観・屋外広告物審議会の審議を経たというものの、地域に与える影響については、具体的な議論が行われていません。そもそも設置や撤去の可否は地域にとっての必要性を含めて個別に判断すべきものです。景観行政の観点のみで、画一的な対応を行おうとする姿勢には大きな問題があります。
次に、こうした方針を具体化した「公共サインデザインマニュアル」の内容にも疑義があります。≪資料3-②≫この中で「道徳を説く啓発サインは効果が不明」とし、「今後は設置しない」と定めるばかりでなく、既存のサインについても撤去を進めようとしていることに、私は反対します。代表的なものに、学校に掲示されている「あいさつ運動」等の横断幕・看板がありますが、これらを撤去するとの方針が打ち出されたことで、現在、各地域には波紋が広がっています。都市デザイン課は、都市景観条例第3条第3項「市は、都市景観形成に先導的な役割を果たすべき」との規定から、「民間の屋外広告を規制するには、まず行政自身が襟を正すべき」との立場を取りますが、あいさつ運動の横断幕を撤去したからといって、民間事業者が派手なサインを取りやめるとは思えません。各校の掲示物には保護者や先生方、そして地域の方々の「こうした大人に育ってほしい」という想いが込められています。それらを撤去することは、皆さんの想いを踏みにじる行為であり、市が掲げる「シチズンシップ」「参画と協働」といった姿とは、明確に逆行するものです。そもそもこうした啓発は「横断幕の設置により挨拶をする子供が何割増えた」といった、定量的な評価に馴染むものではありません。≪資料3-③≫私が市内すべての公立校を現地調査したところ、全73校中60校以上に何かしらの掲示が設置されていましたが、これらを一律に撤去することが市の役割なのでしょうか。この現状について、市長をはじめとする当局の見解を確認したいと思います。
次に、公共サイン適正化を進めようとするあまりに、本当に必要なサインまで制限されていることも問題です。例えば、「飛び出し注意」「スピード落とせ」といった看板は、交通安全対策に一定の効果を持つものと考えられますが、こうした看板の設置要望が認められにくくなっていると聞きます。他にも、地域の具体的な課題の解消を目的としたサインについて、景観を理由に掲出を否定されたという事例も耳にしています。こうした状況について、都市デザイン課からは「至る所に看板があると、かえって一つずつの効果が下がる」「看板があっても、悪意を持った行為は止められない」といった説明を受けます。しかし、例えば「痴漢に注意」という看板は、痴漢行為そのものを制止できなくても、通行人がその道を避けて通る、といった効果につながる可能性が十分有ります。大切なのは、全てを一括りにして「効果がない」「景観を阻害する」と判断するのではなく、各地域の実情に応じて対応することです。
また、デザイン性を重視するがゆえに、設置目的を果たせていないサインが存在しています。≪資料3-④≫これらの看板はデザインマニュアルの「標準デザイン」に準拠しています。例えば「飛び出し注意!」は、車の運転者に注意を喚起する看板ですが、グレーの背景に白文字では電柱と同化してしまい、見にくい状態となっています。これでは運転者の注意を惹きにくく、サイン本来の役割を果たせていません。具体的な行動を促すためのサイン、中でも生命・安全に関わるサインについては、デザイン性より視認性を重視するべきと考えます。
①地域の課題解消等に必要なサインについては、新規設置を認めるべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
本市では、平成30年1月に公共サイン適正化の取組みのための「公共サインデザインマニュアル」を策定したところですが、マニュアルの施行に際して、取り組みの趣旨やサインの掲出方法、不要な看板の撤去時期などについて、市の説明が不足していた点もあり、市民の理解と協力が十分に得られていないことから、今後、市民の皆さんのご意見を丁寧にお聞きし、理解を得ながら取り組みを進めてまいりたいと考えております。危険箇所への対応や施設利用に必要な注意喚起、利用ルールなどのサインの新規掲出については、一律に制限しているものではなく、景観にも一定配慮した上で、必要な箇所への設置を行っているところです。今後も地域ごとの特性や課題に配慮しつつ、必要なサインについて、掲出を進めてまいります。
②注意喚起や禁止事項を示す重要なサインについては、公共サインデザインマニュアルの「標準デザイン」を見直し視認性を向上すべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
現行の標準デザインでは、設置箇所の状況や道路線形などにより、視認性や訴求性が不足しているケースもあることから、現在、デザインの改良について検討しているところです。今後も必要に応じて、標準デザインの見直し等を行うことで、より効果的なサインの掲出となるよう取り組んでまいります。
③公共サインの適正化を進めるうえで、公共空間における啓発サインの掲出を一律に否定する姿勢には問題があり、方針を改めるべきと考えますが、市の見解お聞かせください。
④公共サインデザインマニュアルから「道徳啓発は今後設置しない」「道徳を説く啓発サインは効果が不明」「設置しないもの:道徳啓発及び周知の事実」の文言を削除し、既存啓発サインの撤去を中止すべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
公共施設におけるサインの設置は、施設利用に必要な案内誘導や利用方法の周知、安全確保のための注意喚起を優先して行うことが必要と考えているところです。ご指摘の、学校における啓発サインについては、市といたしまして、啓発活動そのものは必要と考えております。その一方でサインの掲出方法の観点からは、長期間、同一のサインを使用する方法以外に、掲示板へのポスター掲出などにより、時節毎にデザインに変化を持たせ、訴求性を高める方法なども効果的ではないかと考えております。このため、今後、学校や地域の皆さんの活動の展望も伺いながら、広報の方法をともに考えるなど、十分に理解を得たうえで取組みを進めるとともに、道徳やマナーを啓発する看板についてのホームページ上の説明文についても、公共サイン適正化の趣旨や方策が、より伝わりやすい記載となるよう、内容の見直しを行います。また、マニュアルの基準については、地域ごとの課題に応じた弾力的な運用を行いつつ、サインを取り巻く現状や取り組みの成果・課題を分析した上で、改正の必要性について検討してまいります。
■意見・要望
「地域ごとの特性や課題に配慮しつつ、必要なサインの掲出を進めていく。」「必要に応じて、標準デザインの見直し等を行う」、マニュアルに関しても「弾力的な運用を行う」「改正の必要性について検討していく」とのご答弁でした。まちの景観は大切ですが、市の取組みは全て、地域不在であってはならない。私が申し上げたかったのは、その一点に尽きます。その想いに沿ったご答弁を頂きましたので、是非その通りご対応を進めていただきますよう要望します。
西宮観光協会の業務執行について
【2020年3月定例会 一般質問④】
西宮観光協会は、本市の観光振興に関する事業を展開する団体であり、市役所本庁舎8階・都市ブランド発信課内に事務局が設けられています。2018年度の決算では、歳入約4,470万円のうち市補助金が約3,820万円、市委託料が90万円であり、外部団体でありながら実質的には税金を原資に運営されています。2019年9月議会において川村議員が指摘されている通り、観光協会の業務には市職員が相当程度関わっており、市からの人員的な支援も受けているのが現状です。市は観光協会に対して、一定以上の管理監督を行うべき立場であることから、今回は協会の業務執行に関する問題を取り上げます。
観光協会の主要な事業に「まちたびにしのみや」があります。≪資料4-①≫当事業は毎年10月から翌年3月まで実施され、市内の事業者・団体との協働によって各種体験・散策等のプログラムが提供されています。観光協会は事業全体の企画・取りまとめ、パンフレット・ホームページの制作等を担っており、例年、10月の事業開始に向けて業務を進める流れとなります。しかし、昨年の「まちたびにしのみや2019」の準備においては、大幅なスケジュール遅延が見られました。当初、市政ニュースへの掲載は8/25、パンフレットの配架は8月下旬、プログラムの申込受付は9/1を予定していました。これが、実際には配架が9月中旬、申込受付が9/17までずれこんでいます。市政ニュースへは予定通り8/25に掲載したため、まだパンフレットすらできていない状況でありながら、各事業者・団体への問い合わせが多く発生しました。また、10月初旬に実施されるプログラムについては、直前まで申込を受付できない状態が続きました。参加事業者・団体はパンフレット掲載に必要な情報を6月末頃までには提供しており、観光協会が制作を行う期間は十分にあったはずです。こうした進行の遅れは今回に限ったことではなく、参加事業者・団体からも不満の声が上がっています。
私はそんな状況が発生する要因に、観光協会職員の働き方があると考えています。観光協会には週5日勤務の嘱託職員が2名在籍しています。観光協会は就業規則において、協会の許可を受けた場合に限って職員の兼業を認めており、2019年度には3件の兼業申請が行われています。しかし、週5日・フルタイムで勤務する職員が、他の業務を勤務時間外に請け負い、本業である観光協会の業務に支障を来さないと言い切れるでしょうか。≪資料4-②≫今年度に兼業申請のあった3件については、10月初旬までを納期とするパンフレット・ポスターの制作や、8月~9月頃の映像データ撮影・編集業務が含まれ、「まちたびにしのみや」の準備期間と重なります。今回のスケジュール遅延と、職員が他の業務に従事していることは、一定の関連があると考えざるを得ません。また、この映像データ業務について、都市ブランド発信課からは「8月~9月頃に業務を担っていた」との説明を受けましたが、申請書が提出されているのは10月1日付です。適切な時期に、正確な内容にて申請が行われているのか、疑念を抱くところです。他にも、2017年度に就業規則が整備される以前から兼業が行われていた記録があり、長年にわたって職員の兼業が常態化している様子も見て取れます。協会が職員に兼業を認めるという方針の妥当性について、検証すべき段階に来ていると考えます。
もちろん、規則に基づき、適正に兼業の許可を受けている場合であっても、勤務時間内については観光協会の業務に専念する義務が有ります。≪資料4-③≫兼業申請にあたっては、「観光協会所定労働時間内は、観光協会業務に専念し、業務に支障をきたすことや、貴協会の信用を損なうことのないよう誓約いたします。」という文言が有ります。この誓約は就業規則の規定に基づくものであり、違反した場合には当然、処分の対象になるものと考えられます。しかし、実態としては、観光協会の勤務時間中に、兼業先の業務に従事している状況が散見されています。中でも兼業先の関係者に対して観光協会の電話番号を伝え、業務時間内に兼業関連の電話を行っていることは、私からのヒアリングに対して当局が認めた通り、明白な事実です。業務への専念義務に違反している現状は早急に是正し、市は補助金を支出している団体として、毅然とした対応をとるべきと考えます。
①「まちたびにしのみや」の準備スケジュールが遅延し、関係者にご迷惑をおかけしたことの背景には、観光協会職員の兼業実態があると考えますが、市の見解をお聞かせください
〇答弁要旨〇
観光協会の職員が兼業する際には、就業規則第73条に基づき、兼業許可申請書の提出を求めておりますが、2019年度に兼業を許可した業務のうち一部は、まちたびにしのみやの準備期間と重なる時期の業務があったと聞いております。まちたびにしのみやのスケジュールが遅延したことにつきましては、一部事業者において企画内容の提出が遅れたことや、編集業務やデザイン業務に時間を要したこと、観光協会での進捗管理が不十分であったことなど様々な要因がありますが、兼業の影響が全くなかったとは言い切れない面もあると考えております。スケジュールが遅延したことにより、ご迷惑をおかけした関係者の皆さまには深くお詫び申し上げます。
②観光協会職員の兼業について、手続の適正さを検証するとともに、兼業を認めるという方針自体についても見直すべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
副業や兼業に関する方針としては、平成30年1月に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定しています。ガイドラインでは、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であり、企業秘密が漏洩する場合、企業の名誉・信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合、競業により企業の利益を害する場合などを除いて各企業は兼業を制限できないとする裁判例をふまえ、原則、兼業を認める方向とすることが適当であるとしています。このことから、観光協会では今後も兼業を認める方針ですが、観光協会本来の業務に影響を及ぼすことのないよう、職務専念義務を徹底することや、就業規則に規定されている手続を適正に行うこと、業務の内容を精査するとともに本人の肉体的・精神的負担を勘案したうえで兼業を許可するなど、適切な運用に努めてまいります。
③観光協会職員について、勤務時間内は協会の業務に専念する義務があるにもかかわらず、兼業先の業務に従事しているとみられる現状について、現状を是正するとともに然るべき対応をとるべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
今回のスケジュール遅延において、兼業の影響が全くなかったとは言い切れない面もあることから、勤務時間中に兼業関連の電話連絡を受けることのないよう市から観光協会に対し指導するとともに、観光協会内でも本来業務に影響を及ぼすことのないよう職務専念義務を徹底してまいります。
■再質問
この件についてはご答弁に納得しておりませんので、再質問を交えながら進めます。
9月1日に申込を開始する、それまでにパンフレットを作る、と言っていたものが、いずれも9月の中旬以降に延びた。その間、観光協会の職員は3件の兼業を行っていた。週2~3日勤務の職員じゃないんですよ。週5日、フルタイムで働く職員ですから、他の仕事をする余裕はそう多くないはずなんです。その中で、兼業先の仕事が忙しい時期に、本業でも進捗の遅れが見られた。この現状をもって「影響が全くなかったとは言い切れない面もあると考えている」というご答弁、苦しい回答だなあと思います。業務時間中に、観光協会の電話で、兼業関係の連絡を取っているという、明らかな問題があるにもかかわらず、今後指導するだけで、これまでの状況に対しては何のお咎めもなし。そんな姿勢で、適切な運用に努めてまいります、と言われても、納得できるわけがありません。
適切に運用できないなら、そもそも兼業を認めるという方針自体を見直すしかないと私は思うんですが、ここで持ち出されたのは「厚生労働省のガイドラインで兼業が促進されている」という理屈でした。そんなに兼業の効果に肯定的なのであれば、産業文化局の市職員にも積極的に兼業へ取り組ませたらいいんじゃないんですか?産業文化局長の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
公務員は地方公務員法の適用を受けますので、基本、兼業はできない。職務専念義務というのがありますので、職員に兼業を勧めることはありません。
地方公務員法で兼業が否定されているということくらい、もちろん分かったうえで聞いてます。とは言え、市でも一定の条件を満たす場合に限り、兼業が認められているということも確認しております。その前提のもとで総務局長にお聞きしたいんですが、市の職員が兼業を行うということについて、仕組みや市の見解・スタンスをお答えいただけますでしょうか。
〇答弁要旨〇
原則は先ほど産業文化局長が申し上げた通りです。市の常勤職員については、地方公務員法の規定によりまして、営利企業等への従事などの兼業が原則として制限されています。ただ、任命権者の許可を得ることにより、一部例外的に兼業も可能ではございます。兼業許可がある場合でも、勤務時間中については、職務専念義務の免除あるいは有給休暇の取得が必要であると解釈しております。
市として、例外的に、という表現もありましたけれども、決して職員の兼業を推奨しているものではない。認める場合であっても、もし業務時間に兼業のことをするのであれば、有給休暇を取ってもらうしかない。当然、業務時間中については職務専念義務がある、ということだと思います。改めて産業文化局長にお聞きしたいんですが、今回のご答弁で、ガイドラインを持ち出してまで兼業の意義をお示しになり、業務時間中の職務専念義務を守らせることもしてこなかったという姿勢は、いま総務局長にお答えいただいた市の兼業に対する姿勢とは明確に逆行するものだと思うんですが、市の方針と観光協会の実態における乖離について、見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
観光協会は地方公務員法の適用を受ける団体ではないという理解をしておりまして、先ほど答弁したガイドラインに沿って、兼業を禁止することは難しいと考えております。そのうえで議員が言われましたように、職務専念義務、当然、時間中には他の業務をしないということは徹底していただかなければなりませんので、その点については誤解を与えることの無いように、強く指導していきたいと考えております。
■意見・要望
簡単に言ってしまえば、「外部団体やから、市の職員とは異なっててもえーねん。」という見解なのかな、と思っています。
私は当初の質疑で、「現状を是正するとともに、しかるべき対応をとるべきと考えるが、どうか」と質問しました。でも、返ってくるのは「現状の是正」だけで、観光協会や当該職員に対して「しかるべき対応」をとる厳しい姿勢は見られません。市と観光協会の関係性が垣間見えるようです。繰り返しになりますけど、いくら観光協会が市の外部だといっても、財源の大半は市からの補助金で、人件費は実質的には税金で賄われているわけです。事務所も市役所内にあり、都市ブランド発信課と同じスペースで仕事をしています。そうした状況をふまえれば、勤務形態は市職員に準じるのが自然ではないか。少なくとも、市職員と大きく乖離している現状は改めるべきではないか。この感覚は多くの方と共有できるものと思います。
観光協会については、本件のみならず多くの懸念を抱えています。
まず、今回の論点でもある、市と外部団体との関わり方・位置づけが大きな課題です。一連の折衝を通じて感じたのは、観光協会の業務執行については「外部団体だから」という理論で詳細な情報提供を断られる。そのことが不適正な働き方の温床となっている。この現状が、市長の目指す「OPEN」な市役所であるとは、到底思えません。
また、観光協会をはじめ、補助金支出団体の人件費水準についても、整理が必要です。私は、兼業規定と同様に、基本的には市職員の規定をベースとすることが妥当であると考えます。そうしなければ、外部団体を作って職員を雇用する、そこに市の業務を発注するという形で、実質的な公務員に対し、高額な人件費を投じることが可能になってしまいます。
さらに、当会派が指摘してきた通り、以前に西宮北口駅構内の観光ブース「にしのみ屋」で発生した不明金については、今でも明確な説明がなされていないばかりか、無関係な理由を並べ立てて閉店し、事態の幕引きを図った姿勢には強い不信感を持ち続けています。そんな経緯のある観光協会に、自浄作用は期待できません。
観光協会の財源確保についても、指摘をしておきます。補助金頼りから脱却するためには、会費収入を増加させる取り組みが最優先です。まちたびに参画すれば一定の宣伝効果を得られるにもかかわらず、中には観光協会に加入していない事業者も存在するのが現状です。まずはこうした事業者に観光協会への加入を促すとともに、会費設定を見直すことも必要ではないでしょうか。そうした努力を行うことなく、市の他部署から積極的に業務を受注することで、自主財源を確保しようとする姿勢には問題があると考えます。
こうした諸問題を含めて、観光協会については今後の状況を注視するとともに、引き続き会派として厳しい指摘・追及を行ってまいります。
市営住宅の施設マネジメントについて
【2019年9月定例会 一般質問①】
私はこの度、20代で議会に送り込んでいただきました。私たちの世代だからこそ、訴えるべきこと。それは、今この瞬間だけでなく、何十年先の西宮も見据えて、政策を推進することです。私自身ずっとこの街で暮らしていきたいと思っておりますし、これから先もずっと、西宮が多くの方にとって住みたい街であり続けてほしいと心から願っています。住みたい街を実現するには、人口が減っても、税収が減っても、高齢化が進んでも、確実に行政サービスを維持・向上していくことが必要です。そのためには財政基盤を確立し、堅実に、持続可能な行政運営を行わなければなりません。行政改革こそが今の西宮に必要な取り組みであり、中でも今後の財政を大きく圧迫する公共施設の維持・更新は、避けては通れない課題です。そうした想いから、私はこの初めての一般質問のテーマに、公共施設のマネジメント、中でも大きな割合を占める市営住宅について取り上げることといたしました。
本市では、2015年3月時点で677施設・約161万㎡の建築系公共施設を保有し、その約4割が市営住宅です。今後の更新・改修に必要な費用はインフラ系公共施設を含めて50年間で約1兆2,700億円、単純平均で年間約254億円と試算され、財源確保が難しいことは明らかです。そのため市は建築系公共施設の延床面積について、2032年度までに10%以上、2062年度までに20%以上、2009年度比で縮減するとの方針を打ち出しています。しかし本年3月議会における当会派の代表質問に対し、市は「2017年度末の施設総量は床面積で約1万8,500㎡、割合にして約1.16%の増となっている」「2032年度までの中期目標である10%以上の縮減目標の達成は厳しい状況となっている」と答弁しました。方針と逆行する状況を平然と答弁する市の姿勢に、私は唖然としています。この問題への取り組みの甘さを、市は強く認識するべきです。
2012年、市は「市営住宅整備・管理計画」を策定し、2021年度末の目標管理戸数を「概ね8,600戸」と定めました。2011年3月時点でのストック数は9,609戸であり、約10年間で1,000戸程度を縮減する計画でしたが、URへの返還期間を迎える災害公営住宅447戸を含むため、実質的には約550戸の縮減計画です。しかし、計画の進捗は大きく遅れ、2017年の中間改定時には2021年度末の目標管理戸数を当初より400戸も多い「概ね9,000戸」へ下方修正しています。その大きな要因は、「整備・管理計画」とリンクする「第1次建替計画」が当初の想定通り進捗しなかったことです。当計画は11団地を廃止して3団地に集約し、433戸を縮減するものでしたが、4団地が廃止から建替えに方針転換される等、変更や遅延を余儀なくされました。結果的に当計画による効果は約10年間でわずか289戸の縮減にとどまっています。今後の「第2次建替計画」では2030年度末の目標管理戸数が8,300戸とされていますが、これは約10年間で781戸の縮減となり、過去10年の経緯を踏まえれば、実現は極めて困難です。
建替計画が遅延する大きな要因は、入居者との協議です。住み慣れた家でそのまま暮らしたい。馴染んでいる地域でそのまま生きていきたい。入居者の方々がそういった想いを持つことは当然ですが、その中でも建替・移転の必要性をご説明し、ご納得いただかなければなりません。職員の皆様は現場で粘り強く折衝を続けてこられ、頭が下がる思いでございますが、この入居者協議をスムーズに進めることこそ、計画実現に欠かせない要素です。重要なのは、ただ新しい団地への入居を勧めるだけでなく、入居者の立場に立つ視点です。例えば、同一地域内での転居を強く希望される場合には、民間の賃貸物件を一室単位で借上公営住宅として提供する。これまで暮らしてきた団地でのコミュニティを維持できるよう、希望者は同一号棟に住み替えできるよう配慮する。移転後の暮らしをよりイメージできるよう、説明資料等の改善を行う。こうした工夫やノウハウの蓄積を進めるべきではないでしょうか。また、芦屋市の集約建替では、集約先の新設団地に医療機関や公共施設が存在する安心感が、移転の後押しになった面もあるようです。他の市営住宅とのバランス等に配慮する必要は有りますが、集約先を「移りたくなる」団地にするという発想も大切と考えます。
次に、今後の計画について申し上げます。「第2次建替計画」では対象団地を築年数ベースで判定しているため、上ヶ原七番町、神原9~15号棟等、対象団地の近くに立地しながら、現行の計画に含まれていない団地が複数存在します。近接した地域にも関わらず、建替後の新しい建物に入居できる団地とそうでない団地が存在してしまうことは、団地の集約による縮減効果を押し下げるとともに、地域コミュニティの観点からも望ましくありません。また「第2次建替計画」だけで戸数縮減を図ることは難しく、並行して新たな施策を進める必要があります。第3次以降の建替計画策定を急ぐとともに、今後の対象団地には県営住宅と近接して整備されているエリアも存在するため、県との連携も重要です。
最後に、将来的な方向性について申し上げます。市は長期的に管理戸数7,000戸を目指すとしていますが、現在の「新しい団地を整備し、古くなった団地から移っていただく」というスキームのみでこの水準を達成するには、非常に長い期間を要します。また、戸数を削減しても1住戸あたりの面積は増加していることや、他の公共施設が増加傾向にあることをふまえれば、7,000戸にとどまらず、より多くの削減が必要であるはずです。全市的に空家が増加しており、住宅ストックはむしろ飽和状態にあることを鑑みれば、住宅確保要配慮者を公営住宅のみで受け入れるという発想はナンセンスです。民間の賃貸用住宅と住宅確保要配慮者とのマッチングを進める等、複合的な住宅セーフティーネットの構築が必要です。
以上を踏まえ、6点質問します。
①今後、厳しい財政状況が見込まれる中、建築系公共施設の施設総量縮減を進めるべきであり、中でも市営住宅の縮減は重要と考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
本市は阪神・淡路大震災ののち、約2700戸の災害公営住宅等を建設したことなどにより、中核市平均の約2倍の市営住宅を保有しております。住宅セーフティネットとしての役割を果たすためには一定の戸数の市営住宅が必要ですが、今後、市の公共施設の維持管理や更新による財政負担はますます増えることが予想されていることから、施設総量で特に大きな割合を占める市営住宅の管理戸数の縮減は重要であると考えております。
②今後の「第2次建替計画」は「第1次建替計画」以上に難易度の高い計画ですが、目標を達成するための具体的な方策をお聞かせください。
③廃止・建替に伴う入居者との協議・移転交渉をスムーズに進めるための具体的な方策をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
建替及び統廃合事業は入居者の移転を伴うことから、第2次建替計画の管理戸数の縮減目標を達成するためには、入居者の移転をスムーズに行うことが最も重要であると考えております。そのための方策として、入居者の意向等を踏まえて既存住宅の一般公募を停止することにより、移転先の候補となる空家を確保してまいります。また、移転交渉において、事業や移転に関する説明会を出来るだけ早い時期に余裕をもって行うことや、1軒1軒を個別に訪問し意向や要望を丁寧にお聴きすること、また、移転先周辺の医療機関や商業施設等、生活に関する情報を提供することにより、不安感の解消や移転後の生活への期待感を高めること等に努めてまいります。
④近接地域に複数の団地が存在する場合、計画策定時の基準である築年数のみにとらわれず、積極的に「第2次建替計画」へ含むべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
第2次建替計画においては、住棟の安全性を最も重視していることから、築年数を重要な要素としております。ただし、築年数が浅いものや耐震性に問題のないものもまとめて建て替えることで、土地の有効利用や住宅の効率的な集約を図ることとしているものもございます。今後も引き続き、一体的なまちづくりや効果的な建替等、様々な視点から建替計画を策定してまいります。
⑤現時点で計画の存在しない市営住宅についても早期に建替計画を策定するとともに、県との協議も開始すべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
市としましては、市営住宅の中でも特に、耐震性に問題のある住棟の建替や廃止に関する計画を早期に策定する必要があると考えており、これらのうち普通市営住宅への対応を第2次建替計画に盛り込むための見直しを現在行っております。また、今後は、その他の普通市営住宅や改良住宅等の建替計画についても順次、検討を進めてまいります。なお、県との協議については、市営住宅と県営住宅が近接する地域もあることから、今後も引き続き、相互の事業推進に資する情報の共有や協議を行ってまいります。
⑥市営住宅のみならず市全体の問題として、住宅確保要配慮者が民間の賃貸住宅にもスムーズに入居できるよう、高齢者向け家賃保証制度の周知・拡充や、市による家賃保証・補助制度等の検討を積極的に進めるべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」に基づく住宅確保要配慮者(以下「要配慮者」と言います。)とは、高齢者のみならず、低額所得者、障害者、子育て世帯、外国人やDV被害者など、さまざまな方を対象としております。議員ご指摘の、要配慮者に対する家賃保証制度については、市独自の制度はないものの、ご相談があれば、国の「家賃債務保証業者登録制度」による事業者の紹介や、「一般社団法人 高齢者住宅財団」が実施している「家賃債務保証制度」の紹介、不動産事業者への家賃保証制度の案内を行っております。また、要配慮者に対する家賃補助制度につきましては、他市の先進事例などを調査しておりますが、対象とする世帯の所得制限や、制度を導入した場合の市の財政負担など、様々な課題があることから、現時点において家賃補助制度を導入する考えはございません。なお、市では、要配慮者が民間賃貸住宅へ円滑に入居できるよう、今年度より、要配慮者からの相談に応じた、情報提供や支援を行うための「西宮市高齢者等すみかえ相談窓口」を設置すると共に、要配慮者であることを理由とした媒介の拒否や、媒介の条件等を不当なものとしない不動産事業者を登録する「西宮市高齢者等すみかえ協力店登録事業」を開始し、支援を行っております。今後も、要配慮者への入居支援について、社会情勢の変化などに対応できる、持続可能な支援方策の研究に努めてまいります。
■意見・要望
公共施設、中でも市営住宅の総量縮減について、「縮減は重要であると考えている」とのご答弁でした。しかし現実には、公共施設等総合管理計画の策定時より総量は増え、市営住宅の縮減も計画通りには進んでいません。このことについて、強く問題意識を持っていただき、公共施設を建替え・新設する場合には最低でも同量の施設を縮減する等、実効性のある対策を取るよう要望します。
第2次建替計画を達成するための具体策、入居者協議をスムーズに進めるための方策についてご答弁頂きました。私は、この部分こそが今後の計画推進の鍵だと考えています。私は昨年まで不動産会社に勤務しておりましたが、住まいに関する選択や決断は人生における大きな出来事であり、接する側の私たちは、その想いに寄り添うことが常に求められました。ただでさえデリケートな、住まいに関する問題の中でも、市営住宅の建て替えに伴う移転は、住み慣れた場所から離れることを余儀なくされるため、前向きな方ばかりではありません。当局にお願いしたいのは、そういった入居者と向き合う現場の方々に、交渉するための材料、武器を与えていただきたいんです。建替に伴う選択肢はこれまでと特に変わらない、しかし過去10年の3倍の戸数を削減せよ。そういった状況になれば現場は疲弊し、たちまち建替計画は立ち行かなくなります。どうか、具体的な方策を取りまとめていただくよう、心から要望いたします。
第2次建替計画に含まれていない団地の取り扱い、今後の建替計画策定、県との協議については、前向きなご答弁を頂きました。是非その通り進めていただくよう要望します。
将来的な方向性については、「要配慮者への入居支援について、社会情勢の変化などに対応できる、持続可能な支援方策の研究に努める」とのご答弁でした。今後の住宅を取り巻く環境として、世帯数が減少していくことから空家が多く発生します。その中で、市がこれまで通り住宅の運営を行い続ける必然性があるのか、私は疑問に思っています。高齢者や障害をお持ちの方など、住まいに困窮している方々の住宅を確保することは必要な政策ですが、それが必ずしも公営住宅である必要は無いはずです。今後に向けて、様々な手法の検討に取り組んでいただくよう要望します。
学校プールの使用中止問題について
【2019年9月定例会 一般質問②】
本年6月、上ヶ原小学校においてプールの水が白く濁り、使用できなくなるという事象が発生しました。当該事象の発生原因について、教育委員会は「プール槽の塗装が経年劣化で粉が吹く状態となり、水中でまき上がった」「粉が非常に細かく、循環ろ過器を稼働しても取り除くことができなかった」と説明しています。同校のプールは1989年施工・築30年ですが、今回のような事象の発生は市内の公立学校園で初めてということです。当該事象の発生後、水泳の授業を中止して原因究明ならびに対応策が検討されましたが、応急措置的な手法では改善を見込めないと判断し、今年度の同校におけるプール使用の再開は見送られました。なお、同校のプールについては次年度の授業実施に向けて、全面改修を行う予定としています。
この状況下において、同校の体育の授業は、大幅なカリキュラムの変更を余儀なくされました。水泳の授業は一般的に年間10~12時間程度ですが、今年の同校では各学年4時間程度、中には2時間しか実施できなかった学年もあるとのことです。学習指導要領では、例えば1・2年生では「水に浮いたりもぐったり、水中で息を吐いたりすること」、3・4年生では「補助具を使ってのキックやストローク、呼吸をしながらの初歩的な泳ぎをすること」、5・6年生では「クロールでは、続けて長く泳ぐこと」といった目指す姿がありますが、通常の半分以下の授業時数で、これらに到達することは困難と考えられます。
自校での実施が不可能なのであれば、授業時数を確保する代替策を講じるべきでした。教育委員会は「近隣校のプールを借用することを検討した」としていますが、「時間割の調整がつかない」「中学校・高校とはプールの水深が異なる」等の理由から実施を見送りました。すぐに他校を借用することは難しくても、2学期も選択肢に含めて調整すれば、実施できる可能性は十分に有ったはずです。学校施設のみならず、温水プールを有する施設等も視野に入れれば、秋以降に校外学習のような形で実施することも検討できるはずです。私は継続してそうした柔軟な対応を求めてまいりましたが、教育委員会からは当初「学校の実情に合わせ、座学等で指導することも認められている」「学習指導要領が求めているのは、一部の領域に偏らず授業時数を配当することであり、時間割の具体的な編成権は各校の校長にある」との回答を受けました。しかし、座学での指導は、例えば寒冷地や小規模校でプールの設置が困難な場合等を想定したもので、全校にプールが設置されている本市でこの理論を持ち出すことには無理があります。また、教育委員会が責任を負うべき施設管理に起因しているにもかかわらず、学校現場に実施判断や保護者対応の負担を強いたことにも問題が有ります。
私は、今回の事態を極めて重く受け止めています。水泳の授業には「水難事故を防止する」という側面も有り、大変重要な機会です。教育委員会は保護者向けの文書にて「各学年ともプールに入っての学習内容が概ね終了できていることを確認できた」と説明していますが、例年の半分以下、また他校に比べて大幅に授業時数を欠く中で、こうした説明を行うことは理解に苦しみます。教育委員会は今回の事態を招いたことを深く反省し、徹底的な原因究明と再発防止策の策定、ならびに市内全校への共有を早急に進めるべきです。
以上を踏まえ、3点質問いたします。
①本年の上ヶ原小学校における水泳の授業時数は、学習指導要領の趣旨に反するとともに、子どもたちの学習機会を奪った点において大きな問題があると考えますが、教育委員会の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
水泳指導について、今回の場合は、1学期において他の学校あるいはプールがある施設を借りることなどの検討を行いましたが、水泳場を確保することはできませんでした。ただ、学習内容の定着のための時間は、必要だと考えておりますことから、2学期以降、体育大会などの行事もある中、水泳を行う時間の確保について、学校として検討していただきました。その結果を受けて、授業時数の確保とともに、児童の負担過重にならない範囲で、10月中頃に、民間プール施設などの休館日を利用して、水泳の授業ができるよう、施設の事業者や学校と、現在、具体的に調整を進めています。
②来年以降、市内全校において同様の事態が発生しないよう、今回の事象について発生要因・点検体制を検証するとともに、再発防止策を策定・共有することが必要と考えます。今後の取り組み内容とスケジュールを具体的にお聞かせください。
〇答弁要旨〇
上ケ原小学校におけるプールの経年劣化による水の白濁を受け、市として、まずは応急措置的な工事対応を検討しましたが、1学期終了までの期間が短いため、1学期中の工事完了が不可能と判断しました。次に、ろ過機の効果を高めるために、凝集剤を使用した上で循環ろ過機を稼働させるといった手立ても講じましたが、水泳授業を開始できるまでの効果は見られませんでした。この事態を受けて、今年度の水泳授業を中止することになりました。老朽化したプール施設については、建築年度に加え、老朽化の具合を加味しながら、年次計画的に改修工事を実施しているところでありますが、今回の事態を受けて、上ケ原小学校については、改修工事のスケジュールを前倒しする予定としております。また、今後の再発防止策としましては、上ケ原小学校と同じ構造を持つプールについても確認が必要となることから、プール施設を使用する前に、プール槽の塗装の状態等を十分確認し、必要に応じて修繕等行った上で、水泳授業に支障のないよう適宜対応してまいります。
③今後、万が一同様の事象が発生した場合には、近隣校や公立学校施設以外のプールを利用して授業を実施するべきと考えます。そうした代替策を事前に協議・確保しておくべきと考えますが、教育委員会の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
教育委員会としましても、今回の件を重く受け止める中で、今後同様の事案が発生した場合には、すぐに近隣の学校や民間のプール施設を利用して、水泳授業の実施に支障がないよう事前に対策を講じておくべきであると考えておりますが、その場合、代替のプール施設の空き状況や移動手段、安全対策など、考慮すべき課題も多くあることから、その対応に苦慮しているところであります。今回発生した上ケ原小学校の事案を受け、さまざまな課題を洗い出し、今後同様の事態が起こった時には、直ちに対応策が講じられるよう、種々検討してまいります。
■意見・要望
まず、学習内容定着のための時間は必要と考えている、とのご答弁でした。現在、民間プール施設との協議を進め、代替策の確保に努めていることは評価しておりますので、これ以上の追及は控えますが、問題発生当初のスタンスや保護者向けの文書説明は、ご答弁の姿勢と大きく異なるものでした。教育委員会は、わずか2時間しか授業を行えていない学年があるにもかかわらず「各学年ともプールに入っての学習内容が概ね終了できている」とし、「今年度の水泳授業を中止する」と言い切りました。このことに、多くの保護者が不信感を抱いたでしょうし、プールを楽しみにしていた子どもたちの気持ちを思うと、残念でなりません。ご答弁通り、代替策の実施を進めていただきますよう強く要望します。
次に、点検体制と再発防止策について、適宜対応していくとのご答弁でした。ご答弁の通り対策を進めていただき、次年度以降、市内全ての学校園において同様の事態を発生させないよう、要望します。
代替策を事前に確保することについて、検討していくとのご答弁でした。近隣校や民間プール施設を利用する場合、施設側との協議だけでなく、時間割の調整や移動手段の確保など、多くの課題が発生します。代替策の実施にはどうしても時間を要するため、万が一の場合に少しでもスムーズに進められるよう、今回の事象を教訓として対策を進めていただきますよう要望します。
選挙事務の適正な執行について
【2019年9月定例会 一般質問③】
私は本年4月の市議会議員選挙において、初めて立候補する立場から「選挙」というものに触れました。その経験から、選挙には準備段階から投開票に至るまで多くの職員が関わり、莫大な時間と費用を投じて実施されていることを実感した次第です。今回の市議選の場合、投開票業務に従事した人数は延べ2,127名、うち市職員が1,041名。選挙全体にかかった経費は約1億6,000万円にのぼります。これだけ大規模に、全庁を挙げて行われる事業だからこそ、適正な執行体制のもとで効率的に実施することが重要です。選管事務局も事務事業評価において「適正な管理執行のため、引き続き投開票事務等について検討する。」と明記しており、問題意識は共有できるものと考えております。
まずは、選挙公報についてです。選挙公報は、各候補者の氏名・写真・政見等を一覧にした新聞形式の媒体で、各候補者は告示日に原稿を提出します。事前の予備審査においてサイズ等のチェックを受けますが、そうした原稿のやりとりは全て紙ベースで行われています。そのため、パソコンを利用して作成した場合でも「一度印刷し、それを原稿用紙に貼って提出する」という手順が発生しています。写真についても同様に、プリントした写真の現物を提出する必要があります。しかし印刷物の制作について、現在ではデータでのやりとりが一般的です。選管事務局がサイズや作成ソフト等の要項を公表し、立候補者がそれに基づいてデータを作成して制作会社に送信すれば、先に述べた手順は不要となります。不備のチェックや修正もデータで行う方が容易であり、候補者・選管事務局・制作会社すべてにとっての負担軽減となるはずです。手書きでの原稿作成を認めるべきという考えも理解はできますが、原稿面全てを手書きで作成している立候補者は、本年の市議選で56名中0名、2015年の市議選で56名中3名にすぎません。本年5月の総務省令において、選挙公報の電子データによる取扱いが可能とされたこともふまえ、今後の選挙ではデータでの作成・提出を原則とするよう方針の転換を図るべきです。
続いて、投票所についてです。今回の市議選では、投票所が119箇所、期日前投票所が8箇所設けられました。投票所は各投票区に1つずつの配置ですが、投票区の数は1999年以降「118~120」の間で推移しており、場所もほぼ固定化しています。しかし、この20年間で市内の人口分布は大きく変わり、投票所ごとの当日有権者数には大きなばらつきが発生しています。また、1983年には78箇所だったものを断続的に増やしてきたため、投票所までの距離についてエリアごとの不均衡も発生しています。実施費用のうち大きな割合を占めるポスター掲示場の数も投票区の数から決定されるため、投票区の配置を適正化することはコスト面からも意義があります。また、投票区の数に応じた市職員の確保が必要なことから、人員を手配する選管事務局の業務負担や、実質的には「代休を伴わない休日出勤」であるために労務管理上の問題にもつながっています。以上のことから、各地域における投票所の利便性や課題について市民の声を集約したうえで、全市的に投票区の区割りを見直し・再配置に取り組むべきだと考えます。結果として投票所の数が減る可能性もあるため、近年利用者の増えている期日前投票の利便性を向上させる等、代替的な手段の検討も重要です。
さらに、投票所ごとの人員配置にも改善の余地が有ります。資料に示した通り、管理者、庶務係、立会人については配置の法的根拠等が存在しますが、市職員および派遣職員にて延べ1,385名が配置されている「一般」カテゴリについては、見直しが可能と考えます。この方々の業務は選挙人名簿との照合、投票用紙の交付等であり、その業務負担は概ね投票者数に比例します。しかし今回の市議選では、投票者数と人員配置に大きなズレが発生していました。期日前投票についての資料をご覧ください。どの投票所でも、期間序盤は投票者数が少なく、終盤、特に投票日前日に投票者が集中しています。しかし、人員配置は全日程同じであり、序盤の日程においては過剰な配置と言わざるを得ません。今後は投票者数の傾向をふまえた人員配置に改めるべきです。投票日当日については、投票所別の人員バランスに問題が有ります。例えば、23投票区「鷲林寺会館」では、238人の投票者を3人で対応しているのに対し、116投票区:山口センター山口ホールでは、1,904人の投票者を6人で対応しています。人員1人あたりの投票者数は鷲林寺会館で79.3人、山口センター山口ホールで317.3人と約4倍の格差が発生しており、人員1人あたりの投票者数が少ない投票所については人員削減を検討すべきです。また、「一般」カテゴリは投票所で市職員456名・派遣職員等135名、開票所で市職員190名・派遣職員等70名と、市職員の割合が高くなっています。しかし、市職員が当該業務にあたる場合、「国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律」に準拠するため、投票所で28,200円、開票所で6,800円と報酬が高止まりする傾向にあります。報酬の削減が難しいのであれば、派遣職員・アルバイトの割合を増やし、費用の低減を図るべきです。
以上を踏まえ、3点質問します。
①候補者および選管事務局の事務簡素化の一環として、選挙公報原稿はデータでの提出を基本にすべきと考えますが、選挙管理委員会の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
選挙公報の原稿の提出については、現在、紙媒体で行っています。今年5月、公職選挙法が改正され、選挙公報の掲載文を電磁的記録、いわゆるデータにより提出することが可能とされました。本市が選挙公報を作成する次回の選挙では、データでの提出を原則にする方向で検討いたします。
②投票区間の不均衡を是正し、選挙事務を適正に執行するため、全市的な投票区の再配置を進めるべきと考えますが、選挙管理委員会の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
本市では、現在、投票区を119設置しています。全市的な投票区の統廃合については、有権者数だけではなく、それぞれの投票区の利便性や過去からの経緯などをしっかり考慮して実施する必要があります。経費削減や人員確保の問題も含めて、研究していく課題であると認識しています。
③「一般」カテゴリの人員については、投票者数に応じた配置を進めて総数を削減するとともに、市職員以外の人員割合を高めるべきと考えますが、選挙管理委員会の見解をお聞かせください。
〇答弁要旨〇
期日前投票所の投票者数は、期間の前半は少なく、後半は多くなるという傾向がありますので、一般事務従事者数についても前半を削減し、後半を手厚くするとともに総数の削減を検討してまいります。投票日当日の投票所に関しては、一般事務従事者1人あたりの投票者数が少ないことだけで従事者数を削減できるものではありませんが、個々の状況を踏まえ、合理的な配置に努めてまいります。また、市議選の一般事務従事者のうち約23%が派遣職員などであり、経費の節減を図っています。選挙事務は正確に実施し、誤りが許されないものであり、経験を積んだ市職員が一定数必要です。また、市職員が一般事務従事者を経験し、庶務係・投票管理者になることが的確な選挙事務の実施につながるものと考えます。一般事務従事者について市職員以外の人員割合を高めることについては、適正な選挙の管理執行に留意し、今後、研究してまいります。
■意見・要望
選挙公報の原稿について、データでの提出を原則にする方向で検討する、とのご答弁でした。是非、ご答弁の通り進めていただきますよう要望します。
全市的な投票区の再配置については、研究していく課題、とのご答弁でした。投票の利便性が重要であること、これまでの経緯や地域特性に配慮する必要があることは、理解します。一方で、資料の6番に示した通り、投票所が近くにあることは、必ずしも投票行動に直結しないというエビデンスもあります。投票率や利便性を向上するためには、むしろ利用率が大きく増加している期日前投票を充実させるべき、という考え方も有ります。私が今回この点を取り上げたのは、ただ投票所を減らしてコストを削減せよ、と申し上げたいのではなく、選管事務局の負担軽減という目的を強く持っております。川西市では、選管事務局職員が過労で公用車を運転し死亡事故を引き起こすという痛ましい出来事が発生しています。選挙時期の選管事務局職員の労働環境は極めて過酷ですが、中でもポスター掲示場の設置箇所手配や、投票所の人員確保は大きな負担となっています。それらは全て投票区の数から決定されることもふまえて、見直しの必要性を申し上げた次第です。実施費用も業務負担も「民主主義のコスト」なのかもしれませんが、だからと言って青天井であっていいものではありません。例えばお隣の尼崎市では人口規模が本市と同水準ながら、投票区の数は83と本市を大きく下回ります。投票区・投票所の問題を聖域とすることなく、見直しに取り組んでいただきますよう要望します。
投票所の一般事務従事者について、期日前投票所では前半を削減し、後半を手厚くするとともに総数の削減を検討する、投票日当日については個々の状況を踏まえ、合理的な配置に努めるとのご答弁でした。是非、ご答弁の通り進めていただきますよう要望します。
市職員以外の人員割合を高めることについては、適正な選挙の管理執行に留意し、今後研究していくとのご答弁でした。選挙事務は正確性が重要であり、経験を積んだ市職員が一定数必要であることは理解しますが、派遣職員・アルバイト等の積極登用が必ずしも投開票事務の誤りにつながるとは限りません。正確性とのバランスを鑑みながら、執行経費のうち大きな割合を占める人件費の抑制を図っていただきますよう要望します。