Policy
政策ライブラリー
学校給食におけるアレルギー対応の強化
【2024年3月定例会 一般質問①】
食物アレルギーは、原因となる食物を摂取することにより、かゆみや発疹といった反応を引き起こすことで、呼吸器などの重篤な症状であるアナフィラキシーは、生命を脅かす場合もあります。アレルギーを有する方やそのご家族にとって、アレルギーと向き合うことはとても重要で、デリケートな課題です。特に、学校給食におけるアレルギー対応については、非常に高い関心が寄せられており、今回は当事者の方から頂いたご意見をきっかけに、一般質問で取り上げることとしました。
給食でのアレルギー対応には、大きく2つの方向性があります。一つは、そもそもアレルギーを引き起こす食材、いわゆるアレルゲンを、献立の中でできる限り使用しないことです。この考え方について、本市では8大アレルゲンを使わない「米粉カレー」が導入されるなど取り組みが重ねられており、来年度の前半には献立の見直しが行われる予定と聞いています。一方で、全てのアレルゲンを献立から省くことは現実的でなく、食育の観点や、子ども自身が食べられない食材を把握する機会を持つことの重要性に鑑み、一定のアレルゲンは今後も献立の中に含まれるものと考えます。そこで重要になるのが、もう一つの方向性である除去食対応、調理工程の中で特定の食材を取り除く手法です。この対応について、残念ながら本市の取組は十分と言えないのが現状です。
≪資料1≫をご確認ください。現在、本市で除去食対応が行われているのは卵のみです。これは、阪神間7市1町で比較しても、非常に限定的であることが明らかです。もちろん、そもそも献立で使う頻度が少なければ、除去食対応を行う必要性が低くなるわけですから、この食材数のみをもって一概に取り組みが不十分ということは出来ません。しかしながら、本市と同じ自校調理方式である宝塚市でも、複数の食材が対象となっており、本市でも除去食対応とする食材を増やすべきと考えます。
同じく、≪資料1≫をご確認ください。本市で除去食対応を卵のみとした経緯を確認してみると、2017年度に全校の基準が統一される前は、多くの学校で卵以外の除去食対応を行っていたことが判明しました。安全性や効率性の観点から、取り扱いを統一する意義は一定理解しますが、それまで卵以外の除去食対応を行っていた学校では、明らかに対応のレベルが下がったと言えます。去年までエビを抜いてくれていたのに、今年から抜いてもらえなくなった。そんな変更は、当事者の方々にとって大きなお困りごとであり、議会でも篠原議員が熱心に問題提起されるなど、大きな議論を呼びました。私は、この時に全校で同じ取り扱いとするのではなく、「最低限の基準として全校で卵の除去食対応は行う、その上で、可能な学校では一定の基準のもとに他の食材の除去食対応も行う」とするのが、ベストな選択だったと思います。サービス水準を統一する際に、低い方の水準にそろえようという発想は望ましくありません。例えば、育成センターは従来、3年生までを対象としていましたが、可能な学校から4年生の受入を始め、毎年実施校が拡大しています。この運用により、すでに多くの4年生や保護者の方が、安心して放課後の時間を過ごせるというメリットを享受しています。ここでは「まだ4年生を受け入れられない学校があるから、可能な学校でも3年生までしか受け入れない」という判断にはなっていないわけです。除去食対応を卵のみに統一した当時の決定は、これと同じような構図に感じてしまいます。
命にかかわるアレルギー対応は、もちろん、安全性が最優先されるべきです。誤配や混入のリスクを避けることは重要であり、「全ての学校で、全てのアレルゲンを除去食対応せよ」と申し上げているわけではありません。まずは、統一基準の底上げ、つまり全校で除去食対応する食材数を増やしたうえで、可能な学校では、その他の食材についてもできる限り除去食対応を進めるべきだと考えます。以上を踏まえ、2点質問します。
①全校で共通した除去食対応の基準について、卵以外の食材も加えるべきと考えますが、市の見解をお聞かせ下さい。
○答弁要旨○
除去食対応につきましては、各市の調理方式、食物アレルギー対応の必要な児童生徒数、施設整備面などの条件が同じでないことから、一概に比較することは困難ですが、本市では、学校給食審議会の答申を受け、安全性が最優先されることを前提にリスクマネジメントの観点からもシンプルな対応が重要と考えており、各学校及び調理場の施設設備や人員体制を鑑み、その範囲は、卵(うずら卵含む、マヨネーズ)としております。
また、本市の食物アレルギー対応は、施設設備等の課題や除去食対応のリスクを踏まえた上で、国の対応指針に基づき完全除去対応を基本としています。その中で、主な食物アレルギーの原因となる食材を使用している献立については、食育などの観点から必要と考えられる提供の機会を確保しつつ、他の食材へ変更することや、献立そのものを廃止することで、食物アレルギーを有する児童生徒の食べることができる献立回数を増やすことに重点を置き、取り組んでおります。
その結果、現在の献立において直ちに除去食対応できる献立はほとんどなく、さらに除去食の種類を増やす場合には、既存の献立に対して調理作業工程から見直し、ひとつひとつ安全性を検証する必要があります。
加えて、除去食の種類が増えることで、保護者や教職員等は今より多くの対応が求められることから、事故発生の危険性が高くなることや食物アレルギーのチェックの負担が増加することが懸念されます。
しかしながら、議員ご指摘のとおり、除去食対応は食物アレルギーを有する児童生徒も同じ献立を食べることができるため、食物アレルギー対応を推進する有効な方法のひとつです。そのため、食物アレルギー対応を推進するための、あらゆる方法の可能性を排除することなく、それぞれの特性を比較した上で、学校や調理場の能力や環境において最も安全で効果的な対応を検討してまいります。
②各校において、調理室の構造や人員体制などを精査し、全校共通の食材以外についても除去食対応の可否を検証するべきと考えますが、市の見解をお聞かせ下さい。
○答弁要旨○
以前の除去食対応については、学校間での格差のほか、児童生徒数の増減による食数変動等に伴い、除去食対応の範囲が変わるなど、保護者への不公平感や不信感に繋がっておりました。この状況を是正するために、安全性が最優先にされることを前提として、学校給食審議会において相当の期間を費やして協議し、全校統一とした経緯がございます。
現在の食物アレルギー対応については、除去食の種類だけでなく、調理作業工程や、保護者と学校が確認するアレルギーチェック表の様式、確認方法を全校統一とし、個々のプロセスにおける留意事項を具体的に明示することで、事故防止に努めているところです。
一方、各学校の除去食対応が異なる場合、教職員や調理員は異動のたびに新たな対応や調理の手順が求められることになります。
また、保護者と学校がアレルギーチェックを行う際に使用する「アレルギー献立チェック表」には、除去食対応が可能である献立に対して注意が表示されますが、システム上、学校ごとに除去食の種類を変えることができないため、手入力による対応が求められます。
このような複雑な対応や手作業によって、保護者等の負担が増えるほか、人為的なミスが事故の原因となる恐れがあります。
さらに、除去食の対応は、食物アレルギーを有する児童生徒の状況や学校及び調理場の施設設備等を鑑み、学校長が判断することになりますが、状況は常に変化していくものです。各校が個別に実施する除去食対応やその変化に対して、教育委員会が常時正確に把握し続けることは困難であり、教育委員会が管理できないことによって、適切な指導や環境の整備を行うことができず、危険な除去食対応が行われることが懸念されます。
このように、学校ごとに除去食対応を変えることによって、事故の危険性が高くなることが考えられるため、実施は困難であると考えておりますが、1人でも多くの児童生徒が給食を食べることができるよう、引き続き、主なアレルゲンを使用しない献立や除去食対応など、検討を進めてまいります。
■意見・要望
アレルギー対応における除去食の有効性はお認めいただきましたが、学校ごとに対応を変えることは困難とのことでした。各校での個別対応ができないということであれば、やはり全校統一の基準を底上げする必要があるのではないでしょうか。基本的には献立の見直しによって対応していくという教育委員会の考えも一定は理解しておりますが、除去食対応を行っていないために、エビやイカがメニューに出る度、代替食としてお弁当を作っている保護者の方々がいらっしゃいます。仕事をしながら子育てしている保護者が多い現在、日々の負担を軽減する施策は重要度を増しています。実際に、今回の質問は、保護者の方からの切実なお声を受けて取り上げたものであることを、改めて申し上げておきます。安全性にはもちろん配慮しながら、可能な限り、アレルギー対応を強化していただくよう要望して、次の質問に移ります。
私立幼稚園の人材確保に対する支援
【2024年3月定例会 一般質問②】
こども達を育み、一人ひとりが豊かな人生を歩んでいくために、質の高い幼児教育はとても重要です。長年にわたり、本市でその役割の多くを担ってきたのが私立幼稚園です。近年では少子化や共働き世帯の増加により、保育所の需要が高まり続けていますが、それは決して、幼稚園の存在意義を失わせるものではありません。2022年に策定された「西宮市幼児教育・保育ビジョン」では、公私幼保といった設置主体・施設種別の枠を超えて、質の高い幼児教育・保育を実現していくための方向性が示されています。
しかしながら、私立幼稚園は今、人材確保という課題に直面しています。少子化等の影響から、幼稚園教諭や保育士の免許を取得できる学校を卒業する生徒の数は、減少傾向にあります。また、免許を取得しても、学校の教員や民間企業に進む場合があり、養成校の学生がみな幼稚園教諭や保育士になるわけではありません。そして、クラス担任を受け持つ責任の重さ等から、幼稚園ではなく保育所を志望する傾向が高まっているとも聞いています。雇用形態、年代、勤務時間など、苦慮されている点は園によって異なりますが、多くの園がギリギリの人員体制で運営を続けており、今後の見通しも極めて不透明です。
≪資料2≫をご確認ください。現在、本市においては、私立保育所等に対して人材確保の支援が行われています。西宮市保育士就職支援センター「ここにし」の運営をはじめ、就職フェアを西宮市私立保育協会と市が共催、保育士自身のこどもを保育所等へ預ける場合に入所選考時の得点を加算、宿舎借り上げ・奨学金返済支援・就職一時金といった経済的支援の実施等、これまでに時間をかけながらメニューが充実してきました。一方、これらの施策は私立幼稚園を対象としていません。保育所待機児童対策として進められてきた経緯があるとはいえ、私立幼稚園も預かり保育の実施などを通じて、待機児童の解消に貢献してきました。また、冒頭でビジョンの存在に触れた通り、幼稚園に通うこどもも、保育所に通うこどもも、同じように大切にされるべきであり、そこで働く方々への支援に差が生じることは説明がつきません。ただでさえ採用環境が悪化している中、私立幼稚園は、市の施策によって私立保育所との条件差を広げられ、非常に厳しい状況に置かれています。
まず、市は私立幼稚園の採用に関する情報の周知・広報に協力するべきです。現在、私立幼稚園の就職フェアは私立幼稚園連合会が単独で開催していますが、行政が関わることによる安心感や、西宮市で働くことの魅力を訴求する観点から、市との共催が望ましいと考えます。そして、主催者に名を連ねるかどうかを別にしても、開催の告知には公共施設の掲示板や市の各種媒体を活用する必要があります。また、各園が募集しているのは新卒の常勤職員だけではありません。様々な職員が必要とされる中、各園ホームページへの掲載やハローワークへの求人申込だけでは、十分な応募を得られないと聞いています。市のホームページから採用情報へリンクする、市政ニュース・公式LINE・SNSで紹介するなど、多様な手法を用いることが重要です。
次に、保育所入所選考時の加点について、保育所等で勤務する保育士と条件を揃えるべきです。現在、市内の保育所で勤務する保育士が、自身のこどもを市内の保育所に預ける場合は、入所選考で55点の加点を受けられます。この措置により、保育士の場合はほぼ確実に希望の園に子どもを預けることができ、スムーズな就職や復職を可能としています。しかしながら、幼稚園にはこの措置がなく、実際にご自身のお子さんを預けることができずに、就職・復職を見送ったケースもあると聞いています。その方の就職・復職によって、市全体でより多くのお子さんを預かれるようになるわけですから、お子さんを優先的に預かるこの施策は有意義であると考えます。
最後に、各種の経済的支援についても、幼稚園教諭に対して実施するべきです。本市の保育士に対して実施されているメニューは、家賃の4分の3を支援する「宿舎借り上げ支援事業」、就職1年目・3年目・5年目に10万円が支給される「就職応援一時金事業」、そして奨学金の返済額を補助する「奨学金返済支援事業」です。そもそも、行政が直接的な経済支援を行うことの是非については議論がありますが、保育所においてはこれらのメニューが自治体間競争の様相を呈しており、本市も近隣市と近い水準の支援がようやく実現したところです。特に若手の先生方にとって、家賃を4分の3も支援してくれる制度は非常に魅力的で、保育所への就職を大きく後押ししていると考えられます。東京都足立区では、幼稚園教諭もこれらの支援策を受けられる制度設計としておりますし、近隣では神戸市が、長時間預かりを実施する園に限定されてはいるものの、一部の支援メニューを幼稚園にも導入しています。これらの支援策は、保育所との比較だけでなく、他自体との比較という観点からも導入を検討すべきと考えます。
以上を踏まえ、4点質問します。
①本市の子育て・教育環境において、私立幼稚園の役割は重要と考えますが、市長のご認識をお聞かせください。
○答弁要旨○
幼稚園・保育所は、公立・私立ともに、本市における子育て・教育環境において重要な役割を果たしているものと考えております。また、本市の幼稚園在園児数の約9割は私立幼稚園に通園するなど、私立幼稚園につきましては、長年、本市の幼児教育・保育を支えてきた存在であると認識しております。こうした中で、本市の幼児教育・保育の方向性を示す「西宮市幼児教育・保育ビジョン」を公立・私立、幼稚園・保育所の各団体とともに策定したほか、令和5年3月に策定した「西宮市幼児教育・保育のあり方」では、今後の幼児教育・保育施策を推進するため、公立、私立の連携・協力を図りながら、本市の幼児教育・保育の質の向上を目指す方針を掲げているところでございます。
②私立幼稚園の人材確保に対する支援として、市として就職フェアの共催をはじめ、採用に関する情報の周知・広報に協力するべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
○答弁要旨○
幼稚園教諭の採用に関する情報の周知・広報についてでございますが、これにつきましては、現に市が有している市政ニュースなどの広報媒体を用いることで、新たな財政出動を伴うことなく、就職フェアをはじめとした広報に一定の協力ができるのではないかと考えております。広報媒体の活用にも一定のルールはございますが、今後、関係団体に幼稚園教諭の確保を取り巻く実情を伺いながら、市が有する広報媒体を用いた効果的な支援の手法について検討してまいります。
③私立幼稚園で勤務する幼稚園教諭を、保育所入所選考時の加点措置の対象に加えるべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
○答弁要旨○
本来、事業の実施に必要な人員については、各法人において確保いただくものですが、法令上、保育の実施義務は市町村にあり、保育所の入所要件を満たす全ての希望者に入所いただける体制を整備することが市町村の責務とされております。そこで、本市では、重要行政課題の一つでもある待機児童の解消を図るため、特に重点的に保育士確保に向けた各種対策を講じているところでございます。
ご質問にある保育士加点につきましては、幼稚園教諭のお子様をはじめ、一人でも多くの子どもを市内の認可保育施設で受け入れるためには、そこに勤務している又は勤務予定の保育士や保育教諭に限定して加点することがより効果的との考えに基づき、待機児童対策における保育士確保策の一環として特例的に実施しているものです。一方で、保育所等の入所選考時に用いる指数について、職種によって加点することは本来望ましいものではなく、将来的に待機児童という喫緊の課題が解消した場合には、加点の取扱いについても改めて検討すべきものと考えております。こうしたことから、幼稚園教諭を含め、職種による加点の対象を拡大する見通しは持っておりません。
④私立幼稚園で勤務する幼稚園教諭に対しても、保育士と同様の各種経済的支援を実施するべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
○答弁要旨○
これらの取組につきましても、喫緊の課題である待機児童対策の一環として取り組んでいるものでございます。議員ご案内のとおり、保育士確保事業の一部について、幼稚園教諭もその対象に含めている自治体があることは承知しておりますが、先に申し上げましたとおり、法令上、保育の実施義務は市町村にあることや財政的な観点から、本市では、待機児童対策の主たる部分を担っている保育士に限定して実施せざるを得ず、その対象を拡大することは困難と考えております。
■意見・要望
冒頭、市長より、私立幼稚園の重要性を述べていただきました。そうであるなら、どうかその想いを、具体的な施策で示していただきたい。私が訴えたいのは、この一言に尽きます。
今回、保育所等で働く保育士の場合と同様に、幼稚園教諭の採用においてもお願いしたい措置として、「周知・広報への協力」「保育所入所選考時の加点措置」「経済的支援」の3点を取り上げました。残念ながら、このうち前向きなご回答を頂けたのは、周知・広報の部分のみでしたが、だからこそ、せめて、この周知・広報への協力については、ご答弁にありました通り、「関係団体に実情を伺いながら、市が有する広報媒体を用いた効果的な支援」を必ず行ってください。よろしくお願いします。
入所選考時の加点措置については、幼稚園教諭を保育士にそろえるというより、むしろ保育士についても、今後は加点措置を取りやめる可能性があるのかなと受け止めました。職種による公平性の観点から、市の見解についても一定理解するところではありますが、待機児童の状況を注視しながら、慎重に判断していただくよう要望しておきます。
経済的支援については、保育士に限定して実施せざるを得ないという答弁で、その背景にあるのは財源の問題だととらえています。保育士の宿舎借り上げについては、国が3分の2を負担しており、市単独で実施するのは難しいのかもしれません。しかし、市の負担分に相当する金額や、その他のメニューについては、幼稚園教諭に対して実施することも可能と考えます。例に挙げた東京都足立区は、昨年、教育こども常任委員会で管外視察に訪れた自治体ですが、区役所のご担当者様は「保育士さんに実施しているんだから、幼稚園の先生にも実施するのが当然」といった趣旨のご発言を、ごく自然にされておりました。ぜひ、この感覚を本市でも持っていただきたいと思います。
こうした経済的支援のメニューは、認定こども園であれば、一定の条件のもとで対象となります。一連の調査や折衝を通じて感じたのは、市としては、各幼稚園に認定こども園へ移行していただきたいのだろうな、ということです。その方向性には一定の妥当性があると思いますが、一方でそれぞれの園からは、面積や定員の関係で、なかなか容易に認定こども園へは移行できないというお声もお聞きしています。それぞれの基準には、国や県が定めているものもありますが、どうか現場の実情に即した対応を取ってくださいますようお願いします。また、認定こども園では、幼稚園に比べて多様な役割の先生が必要であり、人数も大幅に増加します。移行する年に突然、それだけの人数を確保するのは困難で、数年後の移行を見据えて徐々に人員体制を充実させることが一般的です。だからこそ、私立幼稚園の人材確保に対する支援が欠かせないのではないでしょうか。
最後に、人材確保には長期的な視点が重要であることを指摘しておきます。幼児教育・保育の現場で働くことの魅力、あるいは西宮市の幼稚園や保育所の魅力を、早い段階、例えば中高生などの世代に対して訴求していくことも検討してください。すでに現場ではそうした動きも始まりつつあると耳にしておりますので、市としてぜひ後押ししていただければと思います。西宮市の幼児教育、保育の現場が、これからも安心して運営を続けていけるように願いまして、次の質問に移ります。
学校園等文書集配業務の見直し
【2024年3月定例会 一般質問③】
学校園等文書集配業務は「庁内メール便」と呼ばれ、市役所本庁と学校園・支所といった出先機関との間で文書を集配する業務です。現在は、市内を4つのブロックに分けて、2台の車が午前・午後それぞれ運行し、毎日集配が行われています。2023年度の当初予算額は約1,131万円、契約額は約1,096万円にのぼっており、私は集配頻度を毎日から隔日(2日に1回)へ変更することで、委託費を削減するべきと考えています。
そこで、この度、議会事務局や各所管課のご協力を賜りまして、全庁を対象に集配文書の実態調査を行いました。≪資料3≫をご覧ください。「発送」とは本庁等から各出先機関へ送る文書、「収受」とは各出先機関から本庁等へ送る文書を指します。文書の種別ごとに、参考例と件数、頻度を記載しておりますので、イメージしていただければと思います。集配回数を削減する上で重要なのは、それぞれの文書が「毎日集配する必要があるのかどうか」を見極めることです。種別ごとに文書の内容を確認してみると、4番の名簿・リストは、送付状のような役割のものや、頻度の少ないものが多く、集配回数を削減しても影響は限定的です。5番の冊子・チラシ・ポスター類は、件数こそ多いものの、即日届ける必要性は低いと考えられます。6番の各種通知・依頼・案内等は、大半がメール等で代用可能な内容でした。7番・8番も同様に、集配回数を減らすことで業務に支障が生じるものは、あまり見受けられません。集配頻度の削減にあたって主な障壁となるのは、1番の人事関係、2番の財務関係、3番の申請書等の3点です。これらの中で集配頻度の高い文書を中心に、課題と解決策を検証しました。
まず、1の人事関係には、給与明細や年休付与日数通知、出勤簿や休暇申請がありますが、これらは人事給与システムや勤務状況管理システムの機能を拡充することで、紙の取り扱いを無くすことができます。現在のシステムでも一部の機能は導入されていますが、会計年度任用職員は使用することができないため、大量の書類が発生しています。技能労務職についても、出先機関の状況によってシステムを使用できない場合が多く、同様に紙での手続が続けられています。先般示された「財政構造改善基本方針に基づく取組の大枠」では、「会計年度任用職員等の出退勤、休暇、超過勤務処理などの電子化」が掲げられましたが、システム更新によってできる限り多くの対象者と手続を網羅するとともに、出先機関でも使用可能な環境を整備するべきです。
続いて、2の財務関係には、契約関連の書類や、事業者に対する支払処理等があります。現在の財務会計システムでは、契約・支出命令等のデータを入力するものの、そこから帳票を出力し、請求書等を添付して、紙で起案・回覧しているのが現状です。これらの書類は学校園だけでも年間2万件以上にのぼると聞いており、集配文書のうち大きな割合を占めています。こちらも「財政構造改善基本方針に基づく取組の大枠」で「新財務会計システム導入による契約・支出命令等の電子化」が示されましたが、具体的な検討はこれからと聞いています。従来のまま契約関連書類や請求書を紙のまま取り扱うのではなく、全ての処理が電子上で完結するシステムを構築する必要があります。
3の申請書等には、市民向けの手続と、庁内の事務的な手続が含まれますが、ここで処理のスピードが課題となるのは、支所等で受け付ける市民からの申請です。処理や入力が支所で完了しており、原本を本庁に送付しているだけの文書は、毎日集配しなくても問題ありません。原本が本庁に到着してから処理が開始される文書については、到着日が1日ずれることで市民が受ける不利益がどれほど大きいのか、手続ごとに検証するべきです。今でも急ぎの場合はFAXで本庁へ送付するケースがあるとのことですので、PDF等での送付を原則にすることも考えられます。他市で提出された戸籍関連の届出を、本庁から支所に送付して入力している事務のように、業務フローを見直すことで文書の集配自体を廃止できる場合あります。また、どうしても隔日での対応が難しいのであれば、各種手続の締日とされている場合が多い月末だけ、毎日集配するという手法も一案です。以上をふまえ、4点質問します。
①人事関連のシステムを更新するとともに、出先機関で使用可能な環境を整えることで、会計年度任用職員や技能労務職を含む全ての職員が、紙を用いずに人事関係の申請や情報閲覧を行えるようにすべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
○答弁要旨○
人事・給与に関する事務処理は紙に依存している業務が多く、ペーパーレス化が課題のひとつとなっています。現在、令和7年1月の本格稼働を目指し、人事給与システムの更新及び庶務事務システムの新規導入作業を進めており、そのうち、庶務事務システムにおいて、給与等支給明細書や各種届出申請の電子化などを実施し、業務の効率化やペーパーレス化を図ってまいります。また、会計年度任用職員や技能労務職員等についても、すべての職員にパソコンが配備されている状況では無いなど、ハード面での課題はあるものの、議員のご指摘にもあるように、すべての職員について、できるだけ電子化が実現できるよう取り組んでまいります。
②財務会計システムを更新し、契約・支出命令等に伴う手続を全て電子化すべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
○答弁要旨○
財務会計システムの更新につきましては、令和9年度予算編成からの導入を目指して、現在仕様の検討を進めているところでございます。現行の財務会計システムでは、契約や支出命令等の添付書類が多く、全て電子化することが非効率であることや、書類の押印の関係などから、原則紙ベースでの処理となっております。民間では、電子契約や電子請求といった仕組みも導入され始めていることから、次期財務会計システムではこれらに対応したシステム構築を検討しております。一方、電子契約や電子請求にすぐには対応できない相手方が出てくることなどが想定されるため、一定紙での処理が残るものと考えられます。電子化による処理につきましては、作業効率も踏まえたうえで、実務上の運用を検討してまいります。
③支所等で受け付ける市民からの申請について、業務フローを精査し、集配が必要な文書の件数と頻度を減らすべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
○答弁要旨○
支所等では、証明発行業務の他、マイナンバー関連、国民健康保険、医療年金、市税、介護保険、児童手当などの業務の受付窓口をしており、その内、多くの申請書類の送付に庁内メール便を活用しています。支所と文書の受け渡しがある部署のうち、庁内メール便を利用する頻度が多い関係各課に確認した所、市民に大きな影響がなく集配頻度を減らすことができる、または業務フローの見直しや月末の数日間を毎日集配にすることで月内の庁内メール便の集配頻度を減らすことが可能であるとの回答が多くありました。一方、戸籍の届書の中には、集配頻度が減ることにより、市民に対して戸籍証明書の発行が現在よりも遅くなる場合が想定されます。また、こうした課題に対応するため庁内メール便の補完や代替手段をとる際には、個人情報の安全性確保に留意が必要となることや、隔日集配になると1回あたりの庁内メール便の量が増え、庁内メール便の集荷可能な容量を超えることなど、対応が必要な課題があります。今後、市民の方への影響が最小限となるよう配慮をしながら、利用頻度や件数、総量の削減について引き続き検討していきたいと考えています。
④こうしたデジタル化と業務フローの見直しを前提に、学校園等文書集配業務の集配頻度を隔日に変更すべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
○答弁要旨○
業務のデジタル化と業務フローの見直しが実現し、市役所本庁だけでなく出先機関でも導入したシステムが利用できる環境が整った際には、ペーパーレス化が大幅に進み文書総量の削減につながります。学校園等文書集配業務の集配頻度を減らすことによって費用の削減効果が見込まれるため、前向きに取り組みたいと考えております。
■意見・要望
最後に頂戴した教育委員会からのご答弁は、非常に前向きな内容でした。だからこそ、その前提となるデジタル化と業務フローの見直しが重要です。
人事関連については、すべての職員についてできるだけ電子化が実現できるよう取り組む、財務関連については、電子契約や電子請求などに対応したシステム構築を検討している、ということで、方向性は共有できたものと受け止めています。ただ、人事の面でも「できるだけ」、財務の面でも「一定紙での処理が残るものと考えられる」といった表現がありまして、ポイントはまさにこの部分だと思っています。紙の取り扱いは極めて限定的な例外とし、基本的には全ての手続が電子上で完結する状態を、ぜひ目指してください。今回は文書集配業務見直しの一環として取り上げましたが、人事・財務関連システムの更新は、事務の効率化や不正の防止といった観点からも極めて重要です。一定の投資を伴っても、それをペイすることは十分に可能と考えられますので、検討や構築を進めていただくよう要望します。
申請関連についても、答弁の内容を高く評価します。支所等で取り扱う申請等は多岐にわたりますが、その多くが「市民に大きな影響がなく集配頻度を減らすことができる」「業務フローの見直しなどで集配頻度を減らすことが可能」と判明したことは大きな前進であり、前向きに検証いただいたことを心から感謝します。最もハードルが高いのは戸籍関連の事務ということでしたが、こちらについても利用頻度や件数、総量の削減について引き続き検討していただけるとのことですので、大きな期待を持って、今後の展開を見守りたいと思います。
厳しい財政状況の中、歳出減の取り組みは重要度を増しています。本件は、年間約1,100万円の業務であり、集配頻度を半分に出来れば、委託費用もそれに伴って大きく削減できます。学校園等文書集配業務の見直しを強力に進めていただくよう要望して、次の質問に移ります。
集会施設のあり方
【2024年3月定例会 一般質問④】
本市では今後、人口減少や少子高齢化の進行により財政状況の悪化が見込まれること、公共施設の維持・管理や更新に要する費用が多額にのぼることを背景に、2017年3月に西宮市公共施設総合管理計画が策定されました。そこでは建築系公共施設の延床面積を2032年度までに10%以上、2062年度までに20%以上、いずれも2009年度比で縮減する目標が掲げられました。2023年3月の中間見直しによって、2032年度の目標は3.26%に下方修正されましたが、依然として2062年度の目標は20%であり、施設総量削減の大幅なスピードアップが求められています。建築系公共施設のうち大きな割合を占めるのは市営住宅と学校ですが、他の施設種別においても削減の取り組みは同様に重要です。そこで、今回は集会施設のあり方について取り上げます。
とはいえ、私は決して、集会施設の存在を否定的にとらえてはいません。自分自身も地域活動に携わる中で、地域への強い想いを持って活動している方々に多く出会いましたし、そうした活動には地域の集会施設が欠かせないことを実感しています。また、市民が使用する施設を削減するより前に、市役所等の庁舎面積こそ削減しなければならないとも思っています。公共施設マネジメントを進める中で、集会施設をいかに時代に即した、持続可能な形へと変容させていくべきか。これが、私の問題意識です。
≪資料4≫をご確認ください。2015年、西宮市公共施設適正配置審議会から「西宮市の公民館、市民館及び共同利用施設の適正配置について」の答申が行われ、市は2017年に「地域における施設の総合的有効活用方針」を発表しました。ここでは主に公民館・市民館・共同利用施設について今後の方針が掲げられ、同一建物内に存在する施設の統合や共同利用施設を市民館へ用途変更することが示されましたが、それから7年が経過した今も、一部の項目を除いて具体的な取り組みは行われていません。そもそも、この方針の内容自体、ほぼ全ての施設が存続とされており、施設総量の削減としては不十分です。特に、大阪国際空港の航空機騒音対策として建設された共同利用施設は、すでに騒音対策区域から除外されており、多くの施設が築50年を迎えようとしています。用途変更や有料化といった小手先の対策ではなく、廃止・統合も含めた抜本的なあり方の検討が必要です。
また、これらの答申ならびに方針は、主に公民館・市民館・共同利用施設の3種別を対象としていますが、集会機能を有する施設は他にも多く存在しています。同じく≪資料4≫ページをご覧ください。市立ホール・体育館の会議室、市民会館、男女共同参画センター、大学交流センター、市民交流センター、勤労会館、広田山荘、芦乃湯会館等は、それぞれの政策目的を背景に設置されたとはいえ、実態としてはその多くが集会施設の一つとして使用されています。集会施設の適正配置や廃止・集約を進めるなら、これらの施設も含めて検討しなければ不十分です。集会施設の種別が多岐にわたり、所管課も複数にまたがる現状は、例えば新型コロナの流行時、緊急事態宣言等に伴う開館の判断や周知のタイミングがずれるなど、利用者目線での分かりにくさにもつながっています。2017年の方針は、市民局、政策局、産業文化局及び教育委員会の関係部署により構成された「地域における施設の総合的有効活用方針策定会議」において策定されましたが、この会議体はすでに機能しておらず、その名の通り方針を策定するためだけの組織でした。方針を策定することがゴールではなく、その方針に基づいた実際の取組を進めることこそが重要であり、そのためには進捗管理も含めた一元的な対応が欠かせません。先日の総務常任委員会における所管事務報告「財政構造改善基本方針に基づく取組の大枠について」では、施設の管理運営(ハード)と事業(ソフト)を分離し、施設の管理運営を一体的に行う方針が示されました。この考え方は評価できますが、検討の対象は「アクタ、プレラ、甲東、フレンテ、塩瀬、山口、市民交流センター」に限定されており、私の求める「集会機能を有する全ての施設」には遠く及びません。また、公民館・市民館・共同利用施設の再編も掲げられましたが、先に述べた2015年の答申からこれまで具体的な進展がないことを鑑みると、実効性には疑問がありますし、こちらについても対象とする施設を広げる必要があります。そして、単に管理運営を一体化したり、施設を再編したりするだけでは大きな財政効果は得られず、統合や廃止によって施設総量を削減することこそが重要です。
最後に、今後の方向性について申し述べます。ここまで申し上げてきた適正配置や集約を進めても、集会施設はそれぞれの地域に設置することが前提となるため、施設数を極端に縮減することは困難です。ここでいう「それぞれの地域」とは、答申においても「小学校区を単位とする」考え方が示されています。一方で、学校においては長寿命化の方針により当面は既存の校舎を利用するにもかかわらず、今後、児童数の減少により、学校で必要とされる校舎や敷地の面積は減少することが予想されます。そこで私は、学校施設もしくは敷地内に、地域の集会機能を集約していくことを提案します。手法としては、空き教室を地域集会施設として運用したり、市民館を学校敷地内に移設したり、様々なケースが考えられます。そのうえで既存の集会施設を廃止し、跡地を売却すれば財源の確保にもつながります。こうした考え方は、学校施設の複合化や多機能化として注目を集めており、全国でも多くの事例があります。例えば愛知県豊橋市では、「校区市民館」との呼称で各小学校区に集会施設が整備されており、その多くは学校敷地内に立地しています。奈良県天理市ではつい先日、公民館などの機能を取り込み複合施設化を進める「みんなの学校プロジェクト」が発表されました。本市では、2019年に「学校施設の有効活用基本方針」が策定されていますが、現在までに集会機能としての地域利用は実現していません。市全体で今後、公共施設を効率よく運営していくには、この学校施設の複合化が鍵を握っており、早急に具体的な検討を行うべきと考えます。
以上をふまえ、3点質問します。
①「地域における施設の総合的有効活用方針」で示された取り組みを早急に進めるとともに、共同利用施設については抜本的な検討が必要と考えますが、財政構造改善の取り組みもふまえ市の見解をお聞かせください。
○答弁要旨○
「地域における施設の総合的有効活用方針」でお示しした方針のうち、「建替えの際のスケールダウン」につきましては、方針をお示しした後に建替えを行った地区市民館で実施しましたが、その後の建替えが進んでいないことなどから、方針の実現に至っていない施設があります。共同利用施設につきましては地区市民館と同様の施設に転換する方針を示していましたが、施設使用料の有料化と、それに伴い地域が指定管理業務を地区市民館と同様に担えるかといった課題があり、具体的な検討は進んでいないのが現状です。市民集会施設に関しては、地域力の向上のために施設を存続するという方針としておりますが、一方で、厳しい財政状況や、全市的な施設面積の縮減方針があり、共同利用施設が既に航空機騒音対策の役割を終えたことも踏まえ、あり方については引き続き検討が必要だと考えております。市民集会施設につきましては、財政構造改善の取組の中で地域力の向上やコミュニティ拠点施設としての一体的な利活用に関して検討することとしており、行政経営改革本部の専門部会である地域経営推進部会において、地域コミュニティのあり方とあわせて、適正配置や施設面積の縮減、受益者負担の適正化について検討してまいります。
②集会施設の集約・廃止による適正配置について、集会機能を有する施設を全て網羅したうえで所管部署を超えて一元的に対応し、施設総量を削減するべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
○答弁要旨○
集会機能を有する施設については、地域における市民集会施設のほか、大学交流センターや消費生活センターなど、それぞれの施策目的を持って配置された施設もございます。本庁舎周辺に所在する市民会館や勤労会館は、本庁舎周辺公共施設の再整備の中で施設の統合を進める方針としており、公民館、地区市民館、共同利用施設といった市民集会施設につきましては、財政構造改善の取組みの中でコミュニティ施設として一元的な管理運営を目指すこととしております。また、西宮北口周辺に所在する生涯学習関連をはじめとした施設については、体制を整備した上で一体的な管理に取り組んでまいります。なお、各取組を進めるにあたり、市民集会施設以外で集会機能を有している施設の状況も踏まえながら、行政経営改革、財政構造改善の観点からも効率的かつ効果的な配置となるよう検討してまいります。施設総量の縮減については、財政構造改善の取組において、事業の見直し、施設の統廃合による総量縮減を取組内容としてあげておりますので、各取組内容における施設総量の縮減効果を検証しながら、更なる総量縮減につながるよう取組みを進めてまいります。
③学校施設もしくは敷地内に集会施設を集約していく方策について、具体的な検討を始めるべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
○答弁要旨○
学校施設の改築や長寿命化改修を実施する際には、「西宮市学校施設の有効活用基本方針」に基づき施設の複合化などを検討しております。留守家庭児童育成センターや子育て支援施設については、これまでも学校施設や敷地内に設置してまいりましたが、市民集会施設を校内に設置するためには、不特定の利用者に対する防犯面等の観点からあらかじめ管理区分を明確にしておくことなど課題を整理し、解決を図る必要があります。また、建築資材や人件費の高騰などによって、学校施設の長寿命化改修や改築等に要する事業費については、平成31年2月に策定した「西宮市学校施設長寿命化計画」における当初の想定よりも、大幅に経費がかさむ見込みです。現在、計画の見直しを進めておりますが、これまでの長寿命化改修に加えて、劣化状況に合わせた中規模改修を導入することにより、安全性を確保しながら、効率的・効果的に施設整備を進めたいと考えております。一方、児童生徒数は減少傾向にあるため、学校施設の適正配置や近隣の公共施設との複合化などによる有効活用が、今後、さらに重要になると認識しております。よって、学校施設の改築もしくは長寿命化改修に取り組む際には、設計に着手する前の基本構想の段階で、関係部局と緊密に連携しながら学校施設の有効活用を検討することとし、その際には、子育て関連施設などに加え、地域コミュニティにおける役割に配慮しながら市民集会施設も含めた複合化などの検討を進めてまいりたいと考えております。
■意見・要望
ご答弁ありがとうございました。まず、共同利用施設について、方針を示しながらも具体的な検討が進んでこなかったことを、お認めになる答弁でした。明らかとなっている課題から目をそらし、先送りしてきたことを深く反省してください。今回、財政構造改善の一環として突如示されたような印象を受けますが、答申からの9年間で着実に取り組みを重ねていれば、混乱を招くことも無かったはずです。
とはいえ、私は先ほども述べた通り、策定済の「地域における施設の総合的有効活用方針」に沿うことが、必ずしも正しいわけではないと考えています。共同利用施設を地区市民館に用途変更するとされていますが、市民館はすでに各地域において管理人の担い手不足に悩まされており、管理運営委員会を指定管理者とする現在の枠組みは、持続することが難しくなっています。また、有料化についても、公益的な活動に対する減免等の措置は必要ですし、適正な受益者負担は求められるものの、財政的な効果が大きいのは、施設の集約・廃止による、維持管理費用や更新費用の削減です。2点目の質問にも共通しますが、一連の取り組みについては、公共施設マネジメント、施設総量削減の観点が非常に弱いと言わざるを得ません。本庁舎周辺や西宮北口周辺をピックアップした答弁でしたが、一元的な対応は、特定の地域ではなく、全市的に進めなければならない課題です。今度こそ、問題を先送りせず、抜本的に集会施設のあり方を見直すよう、強く要望しておきます。
こうした状況の中、公共施設を適正に配置するために最も有効な手段が、学校敷地への集約、学校施設の複合化だと私は確信しています。学校は地域コミュニティの基本となる単位であり、また、容易に統廃合するような施設ではありません。規模の大きさ、地域の愛着を鑑みれば、学校へあらゆる機能を集約していくという発想は、自然なことだと考えています。ご答弁は「学校施設の適正配置や近隣の公共施設との複合化などによる有効活用が、今後、さらに重要になると認識している」「基本構想の段階で、関係部局と緊密に連携しながら学校施設の有効活用を検討する」「地域コミュニティにおける役割に配慮しながら市民集会施設も含めた複合化などの検討を進める」というもので、現時点で頂戴できるご答弁としては、最大限、前向きな内容だと評価しています。これをご答弁のみで終わらせることなく、どうか、具体的に、実際の取り組みにつなげていただくよう要望します。
市当局に十分ご認識いただきたいのは、市が保有している土地や建物は、教育委員会のものでも、市民局のものでも、産業文化局のものでも無いということです。それらは全て、西宮市の土地であり、西宮市の建物です。公共施設の配置については、所管部署の枠を超えて、全庁的な観点で検討し、市全体として最適な結論を導いていただくようお願いしまして、次の質問に移ります。
市営住宅における駐車場使用の適正化
【2024年3月定例会 一般質問⑤】
≪資料5≫をご覧ください。西宮北口駅の南西側に位置する市営両度町住宅には、全84区画の駐車場が設けられています。当該駐車場を使用できるのは入居者および半径2㎞以内に居住もしくは勤務している者で、市に申請を行い、許可決定を受けて使用しています。当然、1つの区画に対して駐車する車は1種類のはずですが、私が調査した昨年10月以降、日によって違う車が停められている区画を8つ発見しています。また、同じ車が、日によって別の区画に停められているケースも見られ、不可解な状況と言わざるを得ません。なお、ここでは駐車を確認した具体的な日付や区画番号を詳らかには致しませんが、市当局にはこれらの情報を全て提供していることを申し添えておきます。
さて、こうした現状について、市当局を通じて駐車場の管理運営委員会にヒアリングしたところ、これらの区画は来客用駐車場であるとの回答を得ました。当該住宅は1998年に竣工しましたが、外部からの不正駐車が目立つようになり、2008年にロボットゲートを取り付けました。管理運営委員会の説明では、その際に、住宅への来訪者が敷地内に駐車できなくなることから、当時駐車場管理を担っていた西宮市都市整備公社との約束で、5台分を来客用の区画として定め、許可証を提示するなど一定のルールのもとで来客用駐車場として運用するようになったとのことです。今回私が疑念を抱いた8区画は、この5区画と、介護・工事車両等が一次使用する3区画の合計であるということです。また、年末年始等の来訪者が多い時期には、この一次使用区画も来客用駐車場として運用しているようです。
しかしながら、市の要綱等に基づけば、市営住宅駐車場を来客用駐車場として使用することは認められていません。管理運営委員会が主張する「2008年に都市整備公社が来客用駐車場としての使用を認めた」という経緯も、市が保管する公式な文書では確認できませんでした。当時どのような取り決めがなされていたのか、今となっては事実関係を知ることが困難ですし、責任の所在についても判然としません。ただ間違いなく言えるのは、15年間にもわたり、市の規定に基づかない形で、市の財産である市営住宅駐車場の一部が無償で使用されていた。そして、それは極めて不適切な状態であるということです。また、許可証を掲示するというルールについても、私の見る限りでは守られていませんでした。
私がこの状態を問題視しているのは、規定に違反している・使用料を徴収していない・他の住宅との公平性を欠く、といった観点にとどまりません。曖昧なルールや不透明な運用が、来客用や空き区画を常態的に使用する、といった不適正な駐車場使用につながることを強く危惧しています。管理運営委員会が入居者に配布している文書はご提供いただけなかったので、どのような案内を行っているのかは分かりませんが、仮に来客用駐車場として運用するのであれば、使用ルールを明文化して公開し、どの区画が来客用であるかを明示し、許可証の掲示を徹底するなど、公正な運用が求められます。こうした問題は他の住宅でも発生している可能性があり、全市的な実態調査と、問題ある運用が判明した場合には是正が必要です。
以上をふまえ、3点質問します。
①両度町住宅の駐車場について、市の規定に基づく運用に改めるよう、是正指導を行うべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
○答弁要旨
市内の市営住宅には、物理的に駐車スペースを設けることができない住宅があることや、また、一時使用駐車場を整備することが不正駐車の温床となり、管理運営委員会の管理負担の増加につながることもあることから、市としてはこれまで市営住宅の入居者用駐車場には一時使用駐車場の整備を行ってきておりません。そのため、入居者用駐車場を来客用駐車場として使用している場合は、規定に基づく運用としては是正指導の対象となります。議員ご指摘の両度町住宅の駐車場については、阪急・西宮北口駅に近いという立地条件もあり、竣工当初より市営住宅入居者以外の方と思われる不正駐車が多くみられました。
市営住宅は、西宮市営住宅条例第30条の規定に基づき、入居者に保管義務があることから、入居者で組織された管理運営委員会により自主管理を行うこととしており、特に空き駐車スペースの多い当該駐車場施設においては管理運営委員会で不正駐車対策を行っていただいた経緯がございます。その一方で、不正駐車対策の一環として、当時駐車場管理を行っていた(財)西宮市都市整備公社がロボットゲートの設置を行いましたが、その際、「管理運営委員会によって適正管理ができるのであれば、来客者用駐車場としての運用を一定認める」とした経緯があることを、市としても今回、議員のご指摘を受けて初めて認識したところでございます。以上のことから、両度町住宅においては、来客者用駐車場として自主管理の範疇で利用されていることから、入居者が契約する駐車場としての是正指導を行う必要がございますが、その反面、是正指導を徹底することにより周辺路上駐車が増える等の懸念もあることから、市としてもその対応に苦慮しているところでございます。
②市営住宅の駐車場について、一次使用等のルールを整理し明文化するべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
○答弁要旨
市営住宅の入居者用駐車場の空き区画を、来客用などのために一時使用駐車場とする場合、本来の目的から逸脱した形での利用となりますが、そのルールについては市として定めておりません。今回ご指摘いただいた、両度町住宅の来客者用駐車場については、地元管理運営委員会で決められたルールに則り管理されおり、住宅内での不正駐車対策に一定の効果がございます。同様に、他の市営住宅に対して市が新たに一時使用駐車場を整備することにより、不正駐車対策や、その一時使用駐車場の使用及び管理を即時かつ適正に行うことは、入居者の協力を得ることや、負担が増えることへの理解がなければ成り立たないものと考えております。以上のことから、両度町住宅のケースなどを参考にしつつ、今後一定の時間をかけて、一時使用駐車場が不正駐車の温床とならないようなルールを定め、明文化することの検討を進めてまいりたいと考えております。
③市営住宅の駐車場について、来客用・一次使用の状況や不適正な運用の有無を、全市的に調査するとともに、必要な対応を取るべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。
○答弁要旨
両度町住宅のケースでは、今回議員からご指摘いただき、お示しいただいた調査結果を基に地元管理運営委員会にもヒアリングを行い、運用実態が判明したものでございます。駐車場管理に関しては、現行の指定管理業務の中で、定期的な巡回を行い現状確認に努めておりますが、不正駐車の多くは夜間に発生している傾向があり、また巡回時にすべての車が契約通り駐車中であることもないため、駐車場の契約状況と駐車実態を確認する作業にも膨大な労力がかかり、苦慮しているのも事実です。しかしながら、議員ご指摘の通り、市として一時使用駐車場のルールを定めるため、まずは現状把握をする必要があると考え、来年度を目途に、各駐車場管理運営委員会に対してアンケート調査を行います。その結果を基に、単に現状把握の調査をするだけではなく、仮に来客用や一時使用としての運用が既にされている場合には、今回の両度町住宅のケースを参考にしながら、是正指導をすると共に、駐車場の適正管理ができる新たな方策を管理運営委員会に提示できるよう検討を重ねてまいります。その際には、高齢化に伴い自主管理が困難となり、共益費一括徴収制度へ移行する住宅が急速に増加している実態があることからも、入居者に過度の負担がかからないよう、民間活力の導入なども含め、今後のルール作りを進めてまいりたいと考えております。
■意見・要望
来客用駐車場として使用されている両度町住宅駐車場の現状は、是正指導の対象となると明言いただきました。これまでの経緯も含めて対応に苦慮しているということですが、実態とルールが乖離している以上、ルールを遵守させるのか、実態に即したルールに変更するのか、いずれかの対応をとらなければなりません。ルールの明文化については、今後一定の時間をかけてとのご答弁でしたが、早急に取り組むよう要望します。それが、適法に事務を執行しなければならない、行政としての責務です。「地元管理運営委員会で決められたルールに則り管理されており」との答弁もありましたが、入居者に対する案内の文書等を開示いただいておりませんので、私はこの内容が正しいのかどうか判断できませんし、先ほども述べた通り、許可証の掲示すら守られていない状況を実際に確認しているんですよ。来客用駐車場の使用が常態化しているようなケースがあっても不思議ではありませんし、そうした疑念を抱かざるを得ない運用こそ、改善するべきだと考えます。
一連の答弁では、不正駐車対策というお言葉が多くありましたが、このご説明には無理があります。ロボットゲートを設置して物理的に入居者以外の進入を防いだことは、おっしゃる通り不正駐車対策ですが、それと来客用駐車場の確保は決してセットではありません。民間のマンション・アパートであれば、来客用駐車場が存在しない住宅の方が多く、来訪者は近隣の時間貸し駐車場などを使用するのが一般的です。なぜ、市営住宅だけは、来客用駐車場を設けなければ、不正駐車対策ができないのでしょうか。高齢者・障害者の入居も多い市営住宅では、確かに介護車両等のニーズは高いでしょうし、そのための一次使用スペースなら私も一定賛同しますが、市営住宅駐車場の中に、来客用駐車場を設けることには反対です。
だからこそ重要なのは、ご答弁にもありましたような民間活力の活用、つまり、空き区画を時間貸し駐車場などとして運用することだと考えています。両度町住宅の場合、全84区画のうち30区画以上が契約されておらず、この空き区画の多さが、そもそも問題の背景にあります。市営住宅駐車場の外部貸しについては、啓誠会の坂本議員が、2022年12月定例会の一般質問で取り上げていらっしゃいまして、そのご主張には私も強く賛同しております。市営住宅駐車場のあり方を抜本的に見直していただくことを要望いたします。
最後に、全市的な調査については前向きな回答を頂きましたが、アンケートの実施だけでは不十分だと思っています。万一、不適正な運用を行っている管理運営委員会があったとして、その場合にアンケートへ正直に回答するかどうかの疑念は拭えません。もちろん、全ての駐車場を四六時中監視することは現実的ではありませんが、申請通りの車が駐車されているのか、抜き打ちで現地を確認する等、調査の実効性を高めてください。そうしたチェックの目が、不適正な駐車に対する抑止力になるはずです。以上、申し上げ、次の質問に移ります。
財政構造改善に対する市長の取り組み姿勢
【2024年3月定例会 一般質問⑥】
≪資料6≫をご覧ください。昨年9月議会において示された2022年度決算では、実質単年度収支が約42億円の赤字となり、本市の危機的な財政状況がついに表面化しました。以前から財政状況の厳しさを指摘し続けてきた私としては、市長をはじめとする市当局がこれまで財政上の課題に正面から向き合わず、このような事態を招いたことを、とても残念に思っています。私たち会派・ぜんしんのみならず、財政改善・行政改革の必要性は複数の議員が訴えてきたところであり、怒りと申しましょうか、あるいは嘆きと申しましょうか、こうした気持ちを共有できる方は、この議場にも多くいらっしゃることと思います。昨年10月以降、当局はこの財政危機が突如発生したかのように、バタバタと対応を打ち出してきました。10月に財政構造改善基本方針、12月に方針に基づく取組、2月には取組の大枠が発表され、歳入増・歳出減によって2029年度に単年度で33億円から40.5億円の改善効果額を生み出すとされています。その内容については、2月13日の総務常任委員会や、先週の代表質問でも多くの問題提起があり、私も効果額の算出根拠や、取り組みの実効性に対しては強い疑問を抱いています。それぞれの施策については、今後も個別に指摘・提言を続けていくこととしまして、今回はその前提となる市長の取り組み姿勢について伺います。
まずは、本市がこれまで行ってきた行政改革分野の取り組みについて、経緯を確認します。阪神・淡路大震災の影響で財政状況が大幅に悪化したことを受け、1996年度に行財政改善実施計画、いわゆる行財がスタートしました。第1次から第3次にわたり2008年度まで続けられた行財では、職員の給与カットを含む人事・組織の見直しや、市民生活に影響を与える施策・事業の廃止など、財源不足を解消するために厳しい取り組みが進められました。並行して実施された行政経営改革基本計画も同じく2008年度に終了し、その後10年間は行政改革に関する体系的な取り組みが存在しませんでしたが、石井市長就任2年目の2019年度に改めて行政経営改革基本方針が策定されました。私はこの年に議員となり、総務常任委員会の副委員長としてこの議論に加わることとなりました。そのとき市長は本会議で「行政経営改革は(略)行政の仕組みそのものの変革、構造改革によって、組織風土や職員の意識・行動の改革も目指したもの」「本市が今後取り組むいわゆる行革の方向性としては、財源の捻出を主な目的とした行財政改革が中心となるのではなく、行政経営改革が主体と考えるのがふさわしい」と述べられており、財源捻出を目的とした行財と、ご自身が掲げた行政経営改革を明確に区別されています。「市民と共に新たな価値を生み出す市役所改革」という目指す姿や「OPEN」「SMART」「RELIABLE」といった横文字の羅列からは、抽象的な印象を拭えませんでしたが、当時の議論でよく用いられた表現をお借りするなら、この取組はダイエットではなく、体質改善であると。数値目標を設定しない取組内容が多いことについても、多くの委員が指摘しましたが、あくまで行財ではなく行政経営改革という位置づけの中で、2020年度からの実行計画がスタートしたのでした。
それから3年半が経過し、持ち上がってきたのが今回の財政構造改善基本方針でした。ここまでの流れを踏まえれば、行政経営改革がうまくいかなかったから、代わりの方針を打ち出したのだと考えるのが自然です。当然、先日の総務常任委員会でも、行政経営改革との違いが問われ、当局は「行政経営改革基本方針は、政策・財務・地域・人材のマネジメントを掲げており、財務に特化せず幅広く取り組んできた。その結果、財務が弱くなっていた部分がある。」「財政に照準を絞って明確な目標を掲げていなかった。」といった趣旨のご答弁をされました。単純化して申し上げると、行政経営改革では財政状況の悪化を食い止められなかった、だから財政を改善するための計画を新たに作った、このように聞こえます。2019年度の総務常任委員会の中で、あれだけ多くの委員が「財源捻出を目的とするべきではないか」「目標を数値化すべきではないか」と申し上げたにもかかわらず、このような結果となったことを重く受け止めていただかなければなりません。改めて、市長にお伺いします。
①今回掲げた財政構造改善の目的・位置づけを、従来の行政改革に関する取り組みとの比較も含めて、お答えください。
さて、本市は類似都市との比較やラスパイレス指数の高さから、人件費水準の高さがかねてより指摘されています。今回の財政構造改善の取り組みにおいて、人件費の抑制は最も主要な論点となります。市長は昨年10月、職員を200人削減し、人件費の抑制によって年間20億円以上の収支改善を図ると発言しました。公式な資料等に記載されていないところを見ると、庁内でオーソライズされた数字ではなかったようですが、その数字を市長が発信することの重みについては十分にご認識いただく必要があります。庁内に大きな不安と混乱をもたらしたこの「200人・20億円発言」については、その実現可能性と費用削減効果に対する疑義を、12月議会で当会派の澁谷議員が厳しく追及しているところですが、今回の大枠では、人件費抑制による目標効果額が2029年度に14億円~17億5000万円と、大きくトーンダウンしていました。この金額には、現在市が採り入れようとしている人事院勧告をふまえた昇給分を含んでいないということですから、年間4億円以上と試算されるその増額を考慮すれば、人件費抑制による効果額はさらに低くなります。
ただでさえ、2029年度の目標効果額に対する違和感があることに加え、記載されている項目の多くは、効果が生じるまでに一定の期間を要します。現在の厳しい財政状況を踏まえれば、歳出の大きな割合を占める人件費において、短期的な効果を生じさせることも重要です。
②大枠で示された「人件費の抑制」については、「給与水準の適正化」「定員管理計画に基づく人員抑制」「会計年度任用職員の活用など担い手の最適化」の3つの項目が掲げられていますが、これらのうち2024年度に具体的な効果額が発生する取り組みについて、その内容と効果額をお聞かせください。
○答弁要旨
まず、財政構造改善の位置付けについてですが、私は市長就任後、適切な市民サービスの持続的な提供と、新たな行政課題への的確な対応が必要と考え、令和元年10月に、「市民と共に新たな価値を生み出す市役所改革」を目指す姿として掲げた行政経営改革基本方針を策定し、改革を進めてまいりました。
この方針を策定した段階において、今後の財政が厳しくなっていくという認識はございましたが、まずは行政経営の仕組みを改革し、より効果的・効率的に市民サービスを提供することが重要と考え、取組を進めてまいりました。このような中、令和4年度決算において、財政基金を21億円取り崩して収支不足を補う状況となり、このままの財政運営を続けると、今後も多額の収支不足が見込まれ、持続可能な運営に支障が生じかねないため、速やかに収支改善に着手する必要があると判断し、財政を圧迫する要因、
つまり財政構造そのものに切り込む取組を進めることといたしました。具体的には、令和6年度から10年度にかけて、単年度で40億円以上の収支改善、令和11年度での収支均衡という明確な目標を定め、一時的な財政対策を行うのではなく、経常的な歳入増、歳出減の取組を進めるものでございます。なお、行政経営の仕組みを改革する行政経営改革と、収支改善を目指す財政構造改善は、掲げる目標は異なるものの、ともに重要な取組であるため、並行して進めてまいります。
つぎに、2024年度における人件費抑制の効果についてですが、令和6年度の人件費抑制の効果額につきましては、今後の取組による効果よりも、これまでに取り組んだ結果としての効果が主な内容となります。具体的には、「財政構造改善基本方針に基づく取組の大枠」の中で、現時点で見込まれる「給与水準の適正化」として掲げたものとして、給料表の見直しの効果においては、令和5年度から導入した新給料表の効果や55歳を超える職員の昇給停止等で約5,000万円、特別職等の給与減額においては、特別職の給料減額及び局長級の給料削減で約1,500万円、超過勤務手当の削減で約3,000万円、各種手当の見直しにおいては、住居手当の見直しにより約9,000万円、これらの取組により、あわせて約1億8,500万円の効果を見込んでおります。また、その他人件費の抑制の取組につきましては、現在、策定中の「定員管理計画」に基づく、職員数の削減を予定しておりますが、「財政構造改善基本方針」の発出後、各職場には、令和6年度に向けた職員数の削減を指示しており、来年度の職員採用を抑制するなどにより、正規職員で20名程度の職員数の削減を図っており、約1億円の効果が見込まれるものと考えています。
■再質問
財政構造改善は、行政経営改革に比べ、よりダイレクトに収支改善を目指すものであるということでした。ご答弁では財政構造改善を「一時的な財政対策を行うのではなく、経常的な歳入増・歳出減の取組」とご説明されてまして、これが行財との違いを意識した表現なのだろうと思うんですが、私は、実質的に今回の財政構造改善は行財的な色合いが極めて強いと受け止めています。名前はなんだっていいんです、別にそこで言葉遊びをするつもりはありませんが、土地を売った収入で、あるいは特別職や幹部職員が給与をカットして、当面を乗り切ろうとしていることは、まさに一時的な財政対策です。
そして私が、今回の取組を行財的だととらえている最も大きな理由は、市民サービスに影響を与えようとしている点です。取組の大枠では、事務事業の見直しで年間4~5億円を捻出するとされていまして、先日の総務常任委員会での答弁によると、これは50数個程度の事業を想定して積み上げた金額だということです。また、「令和6年度 主要な事業等の概要」の中では、取組内容等を見直した主な事業として21事業・約1億3千万円の効果額が示されています。両者に重複する項目もありますが、いずれにしても、すごく大きな数です。これらの中には、米寿のお祝い事業や森林での環境体験教育事業のように、明確に廃止とうたわれているものから、事実上、廃止に近いニュアンスの「見直し」までありますが、これだけ多くの事業が、財政構造改善の取組によって影響を受けようとしていることを指摘しておきます。
さて、私はこの質問を行うにあたり、昨年10月以降の市長の公的な場での発言を改めて確認しました。その中で、市民サービスへの影響については、「大きな市民サービスを毀損することが無いように」あるいは「市民サービスの低下となる事務事業の見直しはできるだけ少なくしたい」とおっしゃっており、一つの考え方として、他市と比較してサービス水準が高いものは見直していくという趣旨のご発言を、複数の場でされています。また、よく「窓口の17時閉庁」を例にお話されているのは、窓口での受付時間は減るけれど、デジタルの推進やコンビニ交付など代替的な手法を提供することで、単に市民サービスを削減するのではなく、時代に沿ってやり方を変えていくんだという考え方です。私なりに整理したものではございますが、こうした市長のお言葉を踏まえて再質問します。
今回、財政構造改善や新年度予算で示した事務事業の見直しは、市民サービスの低下を招くと認識されていますか。ご答弁をお願いします。
○答弁要旨
イエスかノーかというと、正直イエスというようなものもあろうかと思います。17時閉庁の話は今回の予算の中で、まだ反映される予算ではありませんが、分かりやすいので申し上げます。17時半まで受け付けていたものを17時にするというそのことが市民サービスの低下かと言われたら、イエスだと思います。ただその中でやはり銀行も例えば窓口を要するに集約するとか、DXの中で補完をするとか、そもそも手続に来ていただかなきゃいけないことを減らしていくとか、そういうようなことをしながら、そしてそもそも仕事の総量を減らしていくその中で、イエスかノーかと言われたら、イエスというものもあるかもしれないけれども、一方で基本的なサービスとして市民の皆様方にご理解いただける範囲を維持しながら、そして市民サービスに影響があると言われたら、それはそういうものもあるけれども、一方でそうした構造改善の中で見直させていただくべきものは見直しさせていただくというようなことが、今回の予算でもあるし、今後の財政構造改善だと思っております。
■再質問
正直イエスというものもあるかもしれない、といったご答弁でした。私は、一連の取り組みについて、どれだけもっともらしい言葉で語ろうと、市民サービスの低下につながるのは間違いないととらえています。去年まではもらえていた米寿のお祝いがなくなるんです。森林体験事業がなくなるんです。これを、サービスの低下ではないと言い張ることには無理があります。誤解のないように申し上げておくと、私はなにも、これらのサービスを絶対に今まで通り維持するべきだと主張しているわけではありません。事業の必要性や費用対効果は常に厳しく検証しなければなりませんし、これまでもそうした立場に立って、また、サービスを享受している方からは嫌われるだろうというある種の覚悟を持って、様々な提言を行ってきたつもりです。今ここで明らかにしたいのは、それぞれの事業の是非ではなく、事実として、いま市民サービスが削減されようとしているということです。他市に比べて高い水準のサービスであろうと、それが削減されれば、受け手は「サービスの低下」ととらえますし、本市が事業の新規拡充を控えている中、他の自治体は新年度予算案で様々な新しい施策を打ち出しており、相対的に本市のサービス水準は低下していると言えます。
歳出削減のもう一つの柱は人件費の抑制ですが、先ほどのご答弁で、2024年度に早速効果が出るのは、約2億8500万円であると明らかになりました。超過勤務手当の削減など、本当にそれだけの効果を生むのか不透明な項目もありましたが、それらを含んで、多く見積もっても2億8500万円です。市長は当初、年間20億円を人件費で捻出するとおっしゃっていましたが、現段階で見通せているのは、そのうち2億8500万円に過ぎません。私は、市民サービスを削減するなら、その前に市役所が自らを厳しく律し、徹底的な改革を行うのが当然だと考えます。その中心的な課題が人件費である以上、市職員の待遇を見直さなければ、市民の理解を得られるわけがありません。そこで質問します。
市民に負担を求めるなら、まずは市役所および市職員が相応の負担を負うべきである。この考え方に市長は共感いただけますか。できれば端的にご答弁をお願いします。
○答弁要旨
端的にお答えしたいんですが、端的にお答えできる問題ではございませんので。あの、気持ちとしては理解をいたします。一方で市民に負担を押し付けるというような表現も、市民に負担を押し付けるというよりかは市民に適正なご負担を、今まで頂いていなかった部分をいただくというようなそういうものでもありますし、そして市職員に対して当然市職員でありますけれども彼らの理解を得ながら、一方で確かに市職員そのものが今おっしゃられたようなことに対してですね、あの他市よりもさらに膨らんだようなことがあるんであれば、そこは当然今まで是としたことであっても見直していかなきゃいけないという風には思っております。いずれにいたしましても、必ずしも方向性は遠くはないとは思っておるんですけれども、その前にとなるとですね、要するにその他の取り組みも進みませんから、やはりこう全てを今この機会に同時に進めていきたいという風に思っているところです。
■再質問
気持ちとしては理解できますよと、一定ご共感を示してはいただいたんですけれども、まさに今ご答弁にありましたように、前後なのか同時なのかというところで、やはり私は本来、市役所がまずはやるべきことをやると。こういう姿勢が欠かせないんではないかなと考えておりますので、ここは1つの見解の相違として受け止めておきます。人件費の抑制は、まだほんの一部しか見通しが立っていない。この状況で、本当に市民への負担をどんどん求めていくんですか。私には、その感覚が信じられません。市役所として、できることを限界までやる。これ以上はできないくらい努力して、その上ではじめて市民に負担をお願いできるものだと、私は思います。これを強く申し上げているのは、私たち会派・ぜんしんが、長年にわたり、人件費に関する課題を、数多く、かつ具体的に指摘してきたことが背景にあります。当局は、給料表を見直した、住居手当を削減したと言いますが、給料表にはまだまだ見直すべき点がありますよね?他にも他市より手厚い手当や制度が複数存在しますよね?それらに手を付けない状況で、先に市民サービスの削減を進めることは、市民の代表として、到底、看過できません。
私は、行財の時期を知る複数の職員さんから、こんな話を聞いたことがあります。行財は、ある意味シンプルでやりやすかった。いろんなサービスを削ったから、もちろん市民の方にはたくさん怒られた。でも、自分たちも給料をカットして、市には今こんなにお金が無いんです、理解してください、と言うことができたし、その説明は一定、受け止めていただくことができた。つまり、経営の改革だ、とか、構造の改善だ、とか、抽象的な議論に頼るのではなく、財政状況の厳しさを包み隠さず市民に伝えることが、財政改善に向けた第一歩だということです。残念ながら、私たちが議会で市長の用いる「危機的状況」という言葉の認識を質しても、「危機的状況に陥らないように頑張る」といった趣旨の回答を重ねられ、いまだに、本市の現状が、財政危機だということをお認めになっていません。最後の質問です。
本市の財政状況が極めて厳しく、危機に陥っていることを正面から認め、市民へオープンにするべきと考えますが、市長のお考えをお聞かせください。
○答弁要旨
従来から申し上げているように、西宮市の財政がこのままいくと危機的な状況に陥りかねないという中で、私が今はそうした意味では、基本的なサービスをしっかり維持をしていく、そういう中で、私としてですね、マネージメントをやっていきたいと思っております。その上でもう1つ、ちょっとせっかくなんで言わせていただきますと、やはりあの行財のことでですね、シンプルで分かりやすかったという、その市民の、あの市職員の言葉というのは、それは一面の真理なんだと思います。一方で、やはり今回、市民交流センターと大学交流センターを1つくっつけていこうとかですね、そういうような話ってのは、なかなかこのシンプルにですね、今回はシンプルにその点に関してだけ見ますと見えるかもしれませんけれども、しかし局を超えてその意義を、上下を分離をしてやっていくというようなことは、それはやっぱりことは簡単に、シンプルではないと思うんです。そして行財の時には3年間だけ、例えば今回は管理職ごめんなさい、局長特別職というようなので時限的に給料削減というようなことをお示しはしてはいるところですけれども、その昔の行財は、3年間全ての職員に職責に応じてパーセンテージ、そして3年間した後には元に戻すからということなんですけど、それだとあの結局なんて言うんでしょう、中長期的な財政収支の改善というようなものにはこれはつながらないんだろうな、というのが、これが私が今回思ってるところであります。ですから、あの時間がかかるものもございます。先ほどの集会所の話も、大変いい質疑をいだいたと思っておりますが、そうしたことをですね、シンプルな話でいった方が分かりやすいのは私も分かります。ただシンプルでない課題をしっかりと、しかし時間かけずにですね、頑張ってやっていきたいというのが、今回の1番大きな私の思いでございます。
■意見・要望
危機的状況という言葉の認識については、これまで当会派や、別の会派さんも含めてもう繰り返していますので、これ以上は控えておきますけれども、今「シンプルじゃない問題もある」と、それはおっしゃる通りだと思います。ただシンプルなものまであえて複雑に、問題を語るようなことは避けていただきたい。極めてシンプルな話もこの中には多くありますので、その点は指摘させていただきます。
最後に意見を申し上げます。これまで、行政改革で大きな成果を上げた自治体は、みな「財政が危機的である」ことを内外に示すことからスタートしています。財政非常事態宣言や脱・財政危機宣言を出した自治体もあります。宣言を出せばいいという話ではなく、私が申し上げているのは姿勢の話です。こうした姿勢で今後の取組に向き合うことを強く要望しておきます。いま必要なのは「改善」ではなく、「改革」です。今の取組姿勢を続けた場合、一番苦労するのは、市民に直接対応する部署の職員や、職員団体と交渉にあたる職員です。組織のトップが財政危機を認めていないのに、危機であることを前提とした説明や折衝を求めるのは、あまりに酷だといえるでしょう。
市長が財政危機を認めても、誰も褒めてくれません。なんでこんな事態になったんだと批判されるかもしれません。でも、私は、政治家の評価というものは、今ではなく、後世が決めるものだと思っています。この財政危機を乗り越えた市長として、将来の西宮市民から感謝されることを目指していただきたいと思いますし、私も、僭越ながら、同じ政治家として、そうした想いで、この危機に当局とともに向き合ってまいります。