西宮市議会議員 ≪無所属・34才≫

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接骨院・鍼灸院等における健康保険利用の適正化

【2024年9月定例会 一般質問①】

今回テーマに掲げた接骨院・鍼灸院等については、複数の呼称が定着しておりますが、この度は「柔道整復師法」に基づく接骨院・整骨院等をまとめて接骨院、「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」に基づく鍼灸院・指圧院等をまとめて鍼灸院と申し上げます。

本年3月時点で、市内には接骨院・鍼灸院が計487施設存在しています。接骨院で健康保険が適用されるのは、骨折、脱臼、打撲及び捻挫に限定されており、骨折・脱臼については緊急の場合を除き医師の同意を得ることが必要とされています。鍼灸院では神経痛、リウマチといった医師による適当な治療手段のない特定の慢性疾病のみが支給対象とされています。しかし、実際にはこれら以外の症状にも健康保険を適用しているケースが少なくないものと思われます。本市の国民健康保険において、接骨院に対する給付は年間約2.2億円、鍼灸院に対する給付は約5,000万円にのぼっており、厳しい財政状況もふまえると不要な支出は許されません。また、法を遵守している接骨院・鍼灸院との公平性の観点からも、厳格な対応が必要です。

まず、広告規制について確認します。《資料1》をご確認ください。接骨院・鍼灸院の外観である看板や壁面、のぼり等に記載できる項目は、それぞれの法律で明確に規定されています。健康保険について認められているのは、医療保険療養費支給申請ができる旨のみで、なおかつ医師の同意が必要な旨を明示する場合に限られていますが、多くの接骨院・鍼灸院が単に「健康保険取扱」等と記載しています。中には、健康保険が適用できることをセールスポイントかのように大きく打ち出したり、保険診療の価格を掲載したり、悪質なケースも存在します。その他にも、医療行為と紛らわしい単語の使用や、部位・症状の表示など、法に違反している事案は枚挙にいとまがありません。

そこで私は本年8月上旬、学生スタッフとともに、市内の接骨院・鍼灸院の約2割にあたる100施設を現地調査し、広告規制への違反状況を調べました。その結果、何らかの違反が確認された施設は82件にのぼりました。接骨院・鍼灸院の広告規制は「守っていない施設がある」のではなく「守っている施設の方が珍しい」のが現状と言えます。今回問題視している健康保険の取扱については、半数にあたる50施設が該当し、価格を表示している施設は4つでした。そして、健康保険が適用できる旨や交通事故への対応を、大きくアピールする施設も複数存在しています。なお、資料には施設を特定できる内容の掲載を控えておりますが、今後の指導の参考としていただくため、当局には写真付きで情報提供していることを申し添えておきます。

市は施設の新規開設時に現地で検査を行い、違反項目がないかを確認しているとのことですが、その後で看板やサインを設置する施設があるためか、残念ながら十分な効果をあげているとは言えない状況です。開設後に現地を定期的に確認することもできておらず、情報提供があった場合に指導を行う程度にとどまっています。また、注意喚起の通知も2015年を最後に行われていないと聞いています。すぐに全ての施設を現地確認することは困難でも、一部の施設に指導が入ったという情報は他の施設に対する抑止力になりますし、特に悪質な施設に対しては早急に指導を行うべきです。法では罰金も規定されており、指導に従わない場合にはこうした強権的な対応も視野に入れる必要があります。

次に、施術内容の点検について申し上げます。接骨院においては、健康保険の対象とならない慢性の疾患にまで、適用していると疑われる事例が存在します。慢性であることを隠すかのように数ヶ月ごとに部位を変えて施術する。慢性の痛みであるにもかかわらず、急性の怪我として取り扱う。実際の施術箇所より多くの部位数を申請する。こうしたケースが後を絶たないと聞いています。また、鍼灸院についても医師の同意を適正に得ていない、往療料を不正受給するといった事例が全国的に発生しています。接骨院・鍼灸院は保険医療機関ではないため、療養費支給申請書に利用者が署名することで、施術所の窓口で健康保険が適用されるのと同様の仕組みとなっていますが、その書面に施術所が虚偽の情報を記載しているなら、利用者に不正の片棒を担がせているとも言えます。

こうした不正を発見するため、市は接骨院に係る療養費支給申請書の点検業務を外部委託しており、一定の条件で抽出した申請に対して文書照会を行っています。文書の発送については年間800件分の予算を確保していますが、昨年度の送付件数は725件にとどまっており、そのうち196件は返信がありませんでした。送付件数の増加と、未返信者への督促に取り組むべきです。現在の抽出条件は厚生労働省が定める基準例に則り「3部位以上の多部位負傷、3か月を超える長期継続、1か月10回以上の頻回傾向」となっていますが、この条件の妥当性についても改めて検証するべきです。

私は、不適正な申請を発見する最も効果的な手法は、違反広告を行っている施術所の療養費支給申請書を重点的に調査することだと考えます。健康保険が適用される旨を大きくアピールしている施術所では、本来適用できない症状についても支給申請している可能性が高いと思われます。事実、こうした問題意識に基づいて、2020年までは違反広告の情報を点検に役立てていたとのことですが、広告規制を所管する保健所が新型コロナの対応に追われていたこともあり、今では実施されていません。また、当時も、先に述べた多部位・長期・頻回の申請のうち、文書照会先を絞り込む段階で参考としていたにすぎません。悪質な場合、こうした条件に合致しないように申請することも考えられるため、特定の施術所については、条件を満たしていない申請に対しても、照会を行うべきです。以上を踏まえ、2点質問します。

①市内の接骨院・鍼灸院に対し、広告規制への違反状況を調査し、是正が必要な事案については厳しく指導するべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。

〇答弁要旨〇

本市では接骨院・鍼灸院(以下、「施術所」と申します。)の新規開設時と、市民等から情報提供があった場合に、現地調査を実施し、必要に応じて指導を行っております。今回、議員から情報提供いただきました違反広告を行っている施術所のうち、悪質性の高い施術所につきましては、現在、現地確認のうえ指導を行っているところです。また併せて、市内全ての施術所に対して、適正な広告を行う旨の注意喚起の通知文を送付する予定でございます。広告の違反状況調査につきましては、現在、コロナ禍の令和2年度から令和4年度にかけて実施できていなかった新規開設時の診療所・施術所などの立ち入り検査に注力しているところであり、これらの新規開設時の立ち入り検査を優先的に実施する必要があることから、これらの立ち入り検査が終わり次第、改めて市内の施術所の広告の違反状況の調査を行い、必要に応じて指導を行ってまいります。また、指導を行った施術所に対しては、その後の是正状況を確認のうえ、是正が確認できない場合は再度指導を行うなど、施術所における違反広告の改善に向けて取り組んでまいります。

②健康保険の不適正な適用を防止するため、療養費支給申請書の点検を強化するべきと考えますが、市の見解をお聞かせください

〇答弁要旨〇

本市では、適正な療養費の支給を行うため、柔道整復師の施術に係る療養費支給申請書等の点検業務を、専門的なノウハウを有する事業者への委託により実施しております。この点検業務の中では、厚生労働省が例示する選定対象基準である「3部位以上の負傷、3カ月を超える施術、施術回数が月に10 回から15 回以上が継続するものの、いずれか、または全てに該当するもの」のうち厳格な方の基準に基づいて、施術を受けた被保険者に対し、施術にかかる文書照会を実施しております。またこの中で、コロナ禍前までは保健所からの違反広告情報を点検に活用しておりました。しかしながら、ご指摘のとおり予算を確保している照会予定件数を下回る照会に止まっておりますほか、照会に対する返信も十分とは言えない状況であり、保健所との情報連携も、コロナ禍に伴い中断しているのが現状です。今後も療養費支給の適正化を図るため、十分ではなかった文書照会を見直し、照会を受けた被保険者が返信し易くなるよう、これまでよりも余裕を持った返信期間を設けることに加えて、未返信者への督促にも取り組んでまいります。また、保健所からの違反広告情報の活用につきましても、連絡体制が整い次第、再開してまいりたいと考えております。

■意見・要望

「違反広告への指導」は非常に前向きなご答弁でした。私から情報提供した施術所については、お伝えしたのが8月中旬であったにもかかわらず、既に現地確認・指導を始めていただいているとのこと、迅速なご対応に感謝いたします。あわせて、市内全ての施術所に対する注意喚起の通知文送付、広告の違反状況の調査と指導、指導を行った施術所に対する是正状況の確認および再指導と、改善に向けて取り組む内容を明確に示していただきました。是非、ご答弁の通り進めていただければと思います。

「施術内容の点検」についても、現在の取り組みに不十分な箇所があることをお認めになったうえで、文章照会ならびに返送件数の増加、保健所との情報連携を進めるとお約束いただきました。ご答弁に沿った取り組みを、今すぐにでも始めてください。

療養費支給申請について、市の立場はあくまで国民健康保険の保険者であり、施術所に対して指導を行う権限はありませんが、悪質な施術所に対しては是正を促したり、所轄官庁である近畿厚生局に情報提供したりといった対策も検討していただきたいと思います。また、鍼灸院についても現状を分析の上、必要に応じて接骨院と同様の文書照会を導入してください。

広告規制の規定を守り、健康保険を適正に適用している施術所が不利益を被らない、公正で公平な環境を実現するよう要望します。

中途採用の活性化

【2024年9月定例会 一般質問②】

本件は、これまでにも複数の議員が取り上げてこられたテーマです。直近の6月議会では、技術職の採用に関して川村議員・わたなべ議員が、会計年度任用職員の正規職員登用に関して坂本議員が触れられており、問題意識は共通する部分が多くございます。そのうえで、今回は西宮市役所の中途採用全般について、私なりの観点を加えながら、取り上げることとしました。その点、ご理解いただきますようお願い申し上げて、質問に入ります。

近年、労働や雇用に対する価値観は、大きく変容しています。終身雇用という言葉に代表されるように、かつての日本では、一つの企業・組織に長く勤めることが一般的でした。しかし、近年では転職がごく当たり前の選択肢となっており、若い世代でその傾向はより顕著です。私は現在34才、大学を卒業して13年目ですが、同世代の多くがすでに転職や転職活動を経験しています。企業・組織の生産性を向上するために雇用の流動化は重要とされており、人口減少に伴う働き手不足も大きな課題となっています。こうした社会全体の流れは、西宮市役所の採用にも大きな影響を与えるものと考えます。

《資料2》をご確認ください。約10年前、本市職員の中途退職者数は年間15名前後でしたが、2022年度・2023年度はいずれも30名を超えています。一度採用した方が長く勤められるように、働きやすい環境を作っていくことはもちろん重要ですが、現在の労働・雇用環境を鑑みれば、今後も一定数の中途退職者が発生することを前提に、採用に取り組む必要があります。また、同じく《資料2》に示した通り、2024年度の職員採用数は財政構造改善の影響を受け、前年度の3分の1程度である22名にまで絞られました。本来、採用数は長期的な計画に基づいて決定するべきであり、今回の急激な採用抑制は、あまりに短絡的な取り組みと言わざるを得ません。とはいえ、人件費の縮減が財政構造改善の大きな柱であり、現実的には退職不補充が中心的な取り組みとなる以上、今後数年間に関しては、同様の採用抑制が続くものと思われます。結果として、ここ数年間で採用される職員は、そもそもの人数が少ないうえに、その中には中途退職する方もいるでしょうから、何年か先に、各部署で実務の中核を担う30歳前後の職員が、極めて少なくなることが懸念されます。そして、その世代が管理職になっていく時期には、組織全体のマネジメントが機能不全にも陥りかねません。この構造を解消するためには、適時、必要な人材を、中途採用で獲得できる仕組みを構築するべきです。

そこで、中途採用を活性化するための取り組みについて、3つの具体策を提案します。1つ目は、採用上限年齢の引き上げです。《資料2》に示した通り、本市の採用年齢の上限は事務職が28歳、技術職が32歳ですが、これは阪神間の自治体と比較しても低い設定です。民間企業等で一定のキャリアを積んだ優秀な人材を獲得するため、上限年齢を早急に引き上げるべきです。2つ目は、ジョブ・リターン制度やアルムナイ制度と呼ばれる、中途退職者を改めて採用する制度の導入です。中途退職者は、本市で勤務した経験から即戦力として活躍することが期待され、東京都、神戸市、寝屋川市などではこうした制度が既に存在します。3つ目が、特定の職務に対する人材の獲得です。例えばDXの分野では、外部からのデジタル人材確保を総務省が推奨しており、近隣では神戸市が「デジタル化専門官」を、尼崎市が「デジタル政策監」をそれぞれ民間から登用しています。こうした専門分野に特化した採用は、設計や業務改善等、複数の職務での活用が期待できますし、組織のマネジメント経験を有する人材として管理職採用という手法も考えられます。以上をふまえ、3点質問します。

本市のニーズに沿った優秀な人材を中途採用で獲得するため、採用上限年齢を引き上げるべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。

〇答弁要旨〇

近頃では、将来の転職を視野に入れ就職活動する学生も珍しくなくなるなど、以前にくらべ、働き方に対する個々の考え方に変化が生じているものと認識しており、本市においても、若年層の職員の中に、転職を理由に退職を申し出るケースが一定数あることから、若い世代において、転職することに対する意識的なハードルが低くなっていることを実感しております。このような状況のなか、議員ご提案のとおり、優秀な人材を中途採用で獲得するために、採用上限年齢を引き上げることは、有効な手段の一つであると考えております。
現在、本市での採用上限年齢につきましては、各職種における職員の年齢構成を踏まえて決定しておりますが、受験者数を十分確保できていない職種もございます。特に、技術職では、令和6年度採用においても、合格者の辞退等により、予定していた採用者数を確保できなかったことを踏まえ、今年度より1次試験における専門試験を廃止し、事務職と同様に全国各地で受験可能となる、テストセンター方式による基礎能力検査に変更したところですが、受験者数を十分確保できているとは言えないことから、更なる対策が必要と考えており、採用上限年齢の引き上げも検討してまいります。
また、その他の職種についても、優秀な人材を中途採用で獲得するためにも、採用上限年齢の引き上げについて引き続き、検討してまいります。

②以前に本市職員として勤務していた人材を採用する制度を導入するべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。

〇答弁要旨〇

議員ご案内のとおり、育児・介護などの理由により退職した職員を再度任用する仕組みについては、神戸市の「キャリアリターン」や、寝屋川市の「再チャレンジ制度」などがございます。一定の経験を有する即戦力を採用できることのほか、やむを得ない事情により退職した場合であっても、再度市職員として採用される可能性を提案することで、市職員のみならず公務員志望者に対しても、ライフスタイルの変化に対応できる働きやすい職場として認識してもらえるなどのメリットがあると考えております。一方、現在本市では、事務事業の見直しや、業務効率化による職員数の削減に取り組んでいるところであり、また、募集する職種や人数のほか、その選考方法や条件などについても整理すべき課題があることから、先行して実施している市の状況も踏まえ、検討してまいります。

③従来の職員採用に加え、特定の職務に対する人材を多様な手法で採用するべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。

〇答弁要旨〇

本市では、現在のところ公募による管理職採用は行っておりませんが、一部職種においては、特定分野における知見や経験を有する外部の人材を受け入れるなど、適正かつ効果的な行政サービスの提供に向けて、様々な手法により有能な人材の確保に努めているところです。このことに加え、特定の課題について、短期的かつ集中的に取り組む必要が生じた場合に、その課題解決に即した専門的な知識や経験、資格を有する人材を「任期付職員」として採用することも効果的な方法の一つであると考えており、必要に応じて「任期付職員」の活用を図ってまいります。

■意見・要望

まず、採用上限年齢の引き上げについて、「優秀な人材を中途採用で獲得するため、採用上限年齢の引き上げについて検討する」とのご答弁を頂きました。前向きな姿勢を高く評価します。取り急ぎは課題が顕在化している技術職について進めるものと受け止めましたが、その他の職種についても、今後の円滑な組織運営のために、早急に検討を進めるよう要望します。

中途退職者を改めて採用する制度については、先行市の状況もふまえて検討するとのことでした。転職が一般的な選択肢となっている現状においては、育児・介護といったやむを得ない事由での離職に限らず、進めるべき取り組みだと考えます。もちろん、継続して勤務している職員とのバランス等は考慮しなければなりませんし、「誰でも戻ってきてください」というわけにはいかないとは思いますが、市役所がイニシアチブを取って、必要な方が再び働ける受け皿は用意しておくべきです。官公庁と民間企業の間で人材の出入りを活性化し、複層的にキャリアを積んでいくあり方は「リボルビングドア方式」と呼ばれ、雇用の流動化と公共・民間双方に対する好影響が期待されています。ぜひ、本市においてもこの考え方を積極的に取り入れていただきたいと思います。

特定の職務に対する人材の獲得についても、必要に応じて「任期付職員」の活用を図っていく考えをお示しいただきました。今回の質問では、想定される職務として、DX・設計・業務改善を挙げましたが、他にも専門的な知識・技能を要する分野は多くあるものと思われます。庁内での人材育成も含め、スペシャリストをどう確保するかという観点が重要です。

本年度は企業版ふるさと納税(人材派遣型)を活用した民間人材の任用も行われており、非常に有意義な取り組みだととらえていますが、従事される業務は市制施行100周年記念事業だとお聞きしております。それを一概に否定するわけではありませんが、民間のノウハウを最大限に活かすには、業務改善や効率化といった分野で知見をいただいた方が、より効果的だったかもしれません。ただ民間の方に来ていただくというだけで終わらず、行政運営の質を向上するための本格的な取り組みとして、これらの施策を進めていただくよう要望します。

組織の要が「人」であることは、言うまでもありません。少子化や人口減少が進む中、これまで通り、新卒をはじめとする若年層の職員を多く採用し、時間をかけて育成することは困難になると予想されます。事実、技術職など一部の分野では、すでにそうした課題と直面しています。だからこそ、単に人材の「数」を確保するだけでなく、「質」を高めていくことの重要性が高まっており、中途採用の活性化は大きな意味を持ちます。西宮市役所の将来を見据え、採用のあり方を時代の変化に合わせて変革していくよう強くお願いします。

市民調査・アンケートのあり方

【2024年9月定例会 一般質問③】

行政が施策を推進する上で、市民の声を反映することは非常に重要です。本市には、市民の意向を確認する手段として、毎年行われる市民意識調査と、総合計画策定・見直しにあたって5年ごとに行われる調査がありますが、私はこれらが十分に機能していないのでは、という問題意識を抱いています。市民の声を聞く機会としては、他にも市政モニター制度や市政報告・広聴会、過去の一時期に行われた転出者アンケートなどがありますが、今回の質問では主にこの市民意識調査と総合計画策定・見直し時のアンケートを中心に取り上げます。

《資料3》をご確認ください。過去3年間の市民意識調査の調査項目は記載の通りで、市民相談課が庁内から希望を募り、毎年3~4個のテーマが選定されます。調査には年間160~200万円程度の費用が投じられ、市民相談課の職員にとって大きな職務の一つとなっていますが、果たして、それらに見合うだけの成果を得られているのでしょうか。

例えば、2023年度の「防災まちづくりについて」は立地適正化計画の策定に生かすためとされており、私は今年度の都市計画審議会で当該計画の見直し過程について報告を受けていますが、調査結果をふまえて計画が見直された箇所は見当たりません。2022年度の「西宮に対する思いについて」は、意図が不明瞭で抽象的な質問が多いことに加え、「各広報媒体の利用率や認知率を踏まえ、時代の変化に合わせた各広報媒体の適切な在り方を検討していく。」と報告されているにもかかわらず、調査前と比べて、各媒体の活用状況に大きな変化はありません。これでは、何のために調査を行ったのか説明がつきません。

また、必要な設問とそうでない設問が混在しているテーマもあります。例えば、2022年度の「119 番通報、救急車の利用について」において「急な病気やケガをしたときの相談あるいは連絡先で知っているものはありますか。」という設問は、調査の結果、認知度が低かった連絡先の周知を強化する、といった具体的な施策につながりますが、「119番通報はどのような時に利用するものだと思いますか」という設問は、実際に通報があった件数を市はすでに把握しており、改めて意識調査で確認する必要性は低いと考えられます。2021年度の「新型コロナウイルス感染症の市民生活への影響について」では、「今後も感染症による日常生活への影響が続いた場合に、重点的に実施してほしい施策はありますか。」という市の施策の参考になりうる設問がある一方で、「感染症が収束した後、何がしたいですか。」という設問については、「離れた家族に会いたい」「旅行をしたい」との回答があったところで、市に行える、あるいは行うべき施策は無いのが実情です。

調査の実施にあたっては、大学教授に指導助言業務を委託し、設問の検討段階から助言を受けていますが、こうした課題が発生しています。適切な質問作成や、一定の分析を行う機能・ノウハウについては、本来、市役所内部で有しておくことが望ましく、委託の必要性を改めて検討するべきです。また、計画策定や施策の検討にあたって、各担当課が個別に市民へアンケートを行っているケースも多くあります。本市で実施されているアンケートの実態を把握し、市民意識調査ありきではなく、市役所全体で効果的・効率的な手法を検証するべきです。市民意識調査として実施する場合でも、3~4個のテーマを取り上げる現在の方式にこだわる必要はありません。例えば、具体的な問題意識があり、施策を決定する材料にしたいという項目を全庁的に募集し、施策分野の枠を超えて質問を羅列するという手法なら、より多くの部署・施策に有益な結果を提供できるようにも思います。市民意識調査は、記録を確認できる限りでも40年以上、同じような形式で続けられてきました。漫然と従来の調査を続けるのではなく、改めて、調査の必要性、目的、手法等について検証し、他の調査との統合・再編等を含めて、あり方を抜本的に見直すべきと考えます。

改めて《資料3》をご確認ください。もう一つの大きな調査である総合計画策定時・見直しのアンケートは、個別の施策について問うのではなく、市の施策全般について幅広く市民の意識を確認するもので、1回あたりの実施費用は約360~370万円です。

策定時に問うたまちの将来像や西宮の良さといった項目は、総合計画の中で示される主要課題等に活かされるものと考えますが、それらの間に明確な整合性は確認できません。また、アンケート結果を実際の施策に結び付けるという観点からは、4次総期間や5次総見直し時に取得した、施策に対する満足度・期待度を問う設問こそが重要だと考えます。これらを、施策に優先順位をつけて取捨選択するための判断材料や、予算編成の根拠資料としなければなりません。期待度が高く満足度が低い施策はテコ入れするべきですし、期待度の低い施策は縮小していくという発想が必要です。

そのような活用を検討した際に、現在の施策の括り方は、大きすぎるように思います。「子供・子育て支援」「高齢者福祉」といった単位で期待度・満足度を問うても、個別の施策の是非は判断できません。細分化すると設問数が多くなってしまいますが、それなら「特に関心の強い施策分野についてのみ回答いただく」もしくは「一つの施策分野の中で取組項目の優先順位をつけていただく」といった手法はいかがでしょうか。また、より直接的に意思決定の材料とするなら、例えば「4,800万円(市民一人あたり100円)の財源があるとします。この金額でできる施策にはA、B、Cがあるとしたら、どれを実施してほしいですか。」といった聞き方も有り得ると思います。

民間企業の市場調査で、満足度と並んで重視されるのが、競合との比較です。自治体にとって最も分かりやすい競合は近隣の自治体ですが、施策ごとの期待値・満足度を比較できれば、他市より満足度が劣る施策に予算を集中して投下する、他市より期待値・満足度ともに高い施策を積極的にPRするなど、強み・弱みに基づいた戦略的な取り組みが可能となります。本市に住むことを検討する方が比較対象とする自治体、阪神間7市1町はもちろん、せっかくの中核市連携であるNATSでの検証も視野に入れるべきです。こうした問題意識は本市に限ったことではないはずですので、各市が共通の項目にて調査を実施するなど、協議・検討を行っていただきたいと思います。

いずれの調査においても重要なのは、アンケートは実施すること自体が目的なのではなく、より良い施策を実施するための手段であるという意識です。明確な仮説を設定した上で、それを検証する、そしてエビデンスに基づいた政策推進を実現するのがアンケートの役割だと考えます。以上をふまえ、2点質問します。

①市民意識調査の抜本的な見直しが必要と考えますが、市の見解をお聞かせください。

②施策に優先順位を設定し取捨選択する上で市民の意向は重要であり、各種調査のあり方を政策推進に係る意思決定の判断材料となるものに変更するべきと考えますが、市の見解をお聞かせください。

〇答弁要旨〇

市の施策や事業を進めるうえで、市民ニーズを適切に把握し、反映させていくことは大変重要な取組みであると考えております。このことから、市では、市政に対する市民の意識とその動向を把握し、施策の策定や事業の推進における基礎資料として活用することを目的として、様々な調査を実施しております。

その中でも、市民意識調査につきましては、18歳以上の市民の中から無作為に抽出した3,500人を対象に、庁内から募集したテーマについて質問するもので、質問内容の検討や調査結果の分析については、市だけでなく外部有識者の専門的な知見も取り入れながら、毎年実施しているところです。また、調査結果については、その後の施策推進に活用することとしており、これまでに新型コロナウイルス感染症対策基金の活用方針を決定する際の参考としたほか、地域団体活動の支援に生かされた事例があるなど、貴重な市民の声として活用してまいりました。

しかしながら、調査結果をより有効なデータとして活用するためには、施策や事業の課題解決に向けて市民意識調査をどのように活用するのかといった、明確なビジョンを持って調査に臨むことが何よりも重要です。このことから、これまでの外部有識者の助言内容等をもとに、市で蓄積してきた質問や回答の設定についてのノウハウを改めて整理し、それを生かしながら調査結果をどのように活用するかなどについて十分に検討を重ねることで、今後、市民意識調査がより有効な形で実施できるよう取り組んでまいります。

一方で、この市民意識調査とは別に、各所管が必要に応じて都度行っているアンケート等各種調査もあります。
これらは事業ごとに、調査対象や実施時期、配布回収方法などが異なるため、ケースバイケースで最適な手法を検討しながら実施しているところです。ここで得られた市民の意見は、各所管の事業実施において活用するほか、政策推進に係る意思決定の判断材料として活用することもございます。

総合計画策定時に実施するアンケートのように、何年かに一度実施するものもありますが、このような市民への調査・アンケートを、市としてより効果的に活用していくため、庁内の各課が独自に実施している調査について状況をあらためて把握したいと考えます。そのうえで、各調査の趣旨が重なるようなものがあれば統合や整理を検討することも含めて、全庁的に効果的・効率的な市民調査の実施ができるよう、取り組んでまいります。

■意見・要望

市民ニーズを把握、反映することや、明確なビジョンを持って調査に臨むことの重要性をお認めいただき、全体を通じて問題意識は共有できたものと考えます。ノウハウの整理、調査結果の活用などについて検討し、より有効な形で実施できるよう取り組む、統合や整理も含めて全庁的に効果的・効率的な調査の実施に取り組む、とのこと、是非ご答弁に沿って具体的な検討を進めていただきたいと思います。

質問の中でも触れましたが、市民意識調査は、何十年も前から、ほぼ同じ形式がずっと続けられています。こちらに現物をお持ちしたんですけれども、議会図書室にあった最も古い市民意識調査で、昭和60年、1985年のものです。この表紙や紙質からも時代の移り変わりを非常に感じるところでございますが、この頃からやり方が変わっていないという状況をまずは受け止めるべきだと思うんですね。やはり一度、抜本的に見直しを行う時期にきてるんではないか、と。そこで留意いただきたいのが、見直しにあたっては従来の調査手法にとらわれずに考えるべき、ということです。民間企業では顧客満足度調査が多く実施され、その手法やノウハウが蓄積されていますし、ISOの要求事項にもなっています。総合計画策定時のアンケートや各所管課が実施する調査も含めて、全庁的に、市民を対象とした意識調査、アンケートのあり方を改めて検証してください。

市民意識調査は、本年度から印刷・製本を取りやめる予定と聞いていますが、他の調査についても、報告の取りまとめ方をあわせて検討するよう要望しておきます。市民に向けて公開する報告は、分かりやすく整理して発信することが重要ですが、市役所内部で使用するものであれば、必要以上に体裁を整えなくても良いのではないでしょうか。計画策定業務の見直しでも申し上げている通り、見栄えの良い報告書を作成することがゴールではなく、職員の皆さんの時間・労力といった貴重なリソースは、調査結果をどう施策へ反映するかという、実効性のある取り組みにこそ充てられるべきです。また、回答方法について、調査の有効性を損なわない範囲で、WEB上での回答などを導入するよう要望します。市政への関心が強くない方から意見をお寄せいただくためにも、回答方法の多角化は有意義な取り組みです。

ライフスタイルや価値観が多様化し、行政ニーズが増大する一方、危機的な財政状況の中にある本市では、全ての施策にお金や人員を際限なく投入することはできません。どの施策に、どれだけの力を入れるべきか、市には厳格な判断が求められます。その根拠は客観的で数値化されたものが望ましく、近年、注目されているEBPM、証拠に基づく政策立案の考え方にも通じます。だからこそ、市民の意識を定量的に把握する調査の重要性は高まっているものと考えます。今回の質問が、その質を向上させていくための第一歩となることを願います。